東京大学庭師倶楽部って何?


     磯崎邦夫デザインロゴ
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主旨

 

 

かつて、東京大学林学科の中で、熱血青年の一人が実践を学ぶ為、作庭の手伝いをさせて欲しいと願い出たのが当倶楽部の始まりである。

従って私たちは特殊法人・学校法人・会社法人・等の法人活動とは一切関係無く、自由な意志や志による団体であり、何色にも染まらず、拘束されない一介の林学者として、純粋なる国家貢献の為の個人であり、この理念の基、有志による集まりから構築された倶楽部である事をご理解頂きたい。

 

現在、当倶楽部は東京大学旧林学科を中心にOBOG・在学生ら、約三十数名の倶楽部員で構成されており、入部資格は東京大学出身又は在学の人間で、作庭現場の激しい激務に耐えた者を対象に、今後我が国の造園学の発展に身を投じていく覚悟がある者が入部して居り、必要に応じて旧友たちで、声を掛け合って交流を続けている。

私たちの最大の目的は国家貢献に有り、近代国家に於ける自然環境と文化環境の共存共栄をテーマに、坪庭の作庭から国立公園内の計画まで造園学を極め、駆使する個人有志の実践的研究機関として、社会にフィードバックさせる事が当倶楽部活動最大の目的であり、これを以って国家の品格の一部と自負し「帝大イズム」における学術的行為が実践的社会貢献へと繋がる事を望んでいる。

従って、営利だけを目的とした社会貢献性の無い企業、国家の品格を著しく損なう行為、国土に対する無意味な破壊行為、物量的供給による一方的な個人要求をする者に対しては、一切協力するつもりはない。

反面、環境活動において道徳や正義を志しながらも弱者的立場の人々には積極的に耳を傾けてゆきたいと考えている。私たちは国民の税金により学問を究めさせて頂いた立場にある者であり、社会への恩返しは当然の理である。

私たちは常に国家の道徳的発展、社会への知的貢献、国土自然の保全活動、地域文化の活性化、個人の安らぎについて、今まで蓄積してきた各自の専門学を駆使し、実践活動を通じ奉仕出来る事を望んでいる。これが私達の言う「帝大イズム」である事をご理解頂きたい。


                      目的

 

              ・・・美しい森林は施業を育む・・・   

              ・・・・・人と自然の関わり・・・・・・

             ・・・・・自然力との共存共栄・・・・・・・


 

                      方針

 

保護と利用

森林を守る為にその大切さを知ることから始まります。森林はレクレーションとして、人々に安らぎや憩を与えてくれます。森林はセラピー機能が有り、人々に心身の予防や回復効果があります。昔、森林と人は助け合い暮らしていました。その知恵は今、環境科学として、地球規模で見直されています。利用する事で保護し、未来に残して行きましょう。

 

 

持続可能な環境計画

森林を守る為に利用する。資源を育て活用する。林業技術を地域資源とする。この行為が、観光や産業などに結び付き、地域の活性化を促します。自然環境や文化を守りながら発展できる計画を構築してください。

 

 

環境教育

 

「保護と利用」「持続可能な環境計画」この二つを実践する事、それが環境教育です。子供は勿論、大人も、独自の科学・芸術・技術を身に付けてゆきます。知的冒険の旅に是非出かけてくださ


技術(landscape・technology)

 

・「大地」「生態系」「文化」の関係を基本とした概念からの科学的考察

環境に関する「ハードとソフト」「自然と人文」「正の数値と負の数値」のバランス的考査

絶対保護区から積極的活用地までを考査するMAB計画手法の展開

遊びをまじめに科学する技術・芸術の心

調査・計画・landscape・Assessmentの一連活動

MACROMESOMICRO3視点・調査と考察

物理・心理・史実の三軸・による環境解析と計画と活動の実施

・landscape design & planning

・環境アセスメント

・人と自然の関わりに関する研究と論文発表

 


 

年表

 

 平成9年

二人の熱き学部生の情熱と、現場経験のある大学院生により活動が開始される。

この時、初代部長により、東京大学庭師倶楽部と命名された。

 

 平成10

 東京大学農学部林学科の学部生、学院生合計10名の組織により、個人宅への庭師活動を行い、計画・設計・作業・メンテナンスを行い、クライアントに自然は生活のプロデューサーとして参加してもらうガーデニング計画を遂行し、組織的活動に入る。

 

 平成11

 ガーデニング計画が功を奏して、参加する事から安らぎを体験し、環境を学ぶ活動を続ける。

 

 平成12

 有志によるOB・OGの参加も増え、組織の輪が広がる。

 

 平成13

 組織の人数も増え、社会人になるものも多く、組織としての確立の為、東京大学農学部創立者の言葉にちなんで、位を25歳までをハナタレ小僧、60歳までを若造、80歳までを中堅、120歳までを長老と定め、役職を研究部員、主任研究部員、顧問研究部員、名誉顧問研究部員とする。

 

 平成14

 活動は小さな街づくりや小さな公園計画など地域に対する造園計画へと広がる。

 

 平成15

 噂を聞きつけた日本のエネルギー供給の会社より、21世紀の環境教育をテーマにコンサルティング及びプロジェクトの三戦が始まる。

 

 平成16

 東京大学庭師倶楽部の最大の目的である国家貢献に就いて賛同できる企業及び芸術家たちとの環境保全のコラボレートによる計画が各地で始まる。

 

 平成17

 更にこの年から、顧問研究部員の40年の経験による指導からランドスケープの構築を行い香川県地域国立公園内に環境コミュニティーの計画と、市町村に対する村おこし共同事業にシンクタンクとして参加する。

 

 平成18

 顧問研究員の行った独自の実践学を学術系体のまとめとして、物理的解析軸・心理的分析軸・造園史的検証軸から成り立つ「環境評価手法」として確立し、造園学の科学的見地から地域に対する応用を行い、実践活動を繰り返す。

 

 平成19

 長野県における村おこし計画に於いて「人文と自然環境資源から見出す持続可能な観光ポテンシャルの発掘計画」を実施してメディアプレスの協力のもと地域フォーラムづくりに参加する。

 又こり時期、森林セラピーを行う医学者、環境活動を報道して行くメディアコミュニティー、シックハウス症候群に対応する家づくりを推進する建築家、地域に対する換気用起用逝くボランティアを行うナチュラリスト、等らと内閣府の公認の元NPO団体を設立し、ランドスケープ部門の専門的シンクタンクとして会員参加している。

 

 平成20

 東京都内における、里山のコミュニティー計画の実行と、住民たちからのアンケート分析によるランドスケープの構築。

 栃木県に於ける、自然環境と共存する産業の村おこし計画について、調査、報告、提案の構築。

 庁関係の団体に対する環境講義開催活動を行いつつ現在にいたる。

魔女と造園学と題した造園科学と社会科学の融合プロジェクトを環境省外郭団体によるとサポートで、ポーランドをフィールドにワルシャワ大学有志らと共同研究と文化交流を深める事で後「白魔女さんの森暮らし教室」を開講,現在に至る。

 

 平成21

 知的冒険の旅による調査結果と研究成果を基にNPO団体ジャパンフォレストフォーラムに地域財産の提供と供給を行い、landscape・環境デザイン・風致計画・環境アセスメントなど、NPO団体を通じ幅広く普及活動を行う。

又、UNESCO認定のジオパークを目前とした糸魚川市に対する調査・計画を1ヵ年行い、環境資源発見からポテンシャルの構築を行い、市に提言する。

 

平成22

魔女と造園学と題した造園科学と社会科学の融合プロジェクトを環境省外郭団体によるとサポートで、ポーランドをフィールドにワルシャワ大学有志らと共同研究と文化交流を深める事で後「白魔女さんの森暮らし教室」を開講,現在に至る。

 

平成23

東日本大震災の発生とともに急遽現地に入りポーランドの学生やNPOジャパンフォレストフォーラムと共に救援活動。

後に東北三県の地域復興計画に携わる。

同時に、環境省外郭団体の協力を得て都内における先住民に学ぶ自然災害と人的災害の回避と復興に関する講演及びンフォーラムを実施。

又、,救援・復旧に続き復興活動にもつなげた事から岩手県住田町と友好関係が結ばれ、森林から東北を元気にするを合言葉に「住田ふるさと夢学校」開講に携わり、現在に至る。

 

平成24

東22日本大震災の救援・復旧・復興活動などで1年予定を延期していた「糸魚川ジオパークカレッジ」の開講がかない造園学を基本とした、人と自然の関わり、空更に発展させた形で、自然力との共存共栄を目指す、ジオパーク学領域創設として目指す市民大学を糸魚川市・東京糸魚川会・NPO団体ジャパンフォレストフォーラム・ジオパーク協議会らの協力体制で開講。現在に至る。

同時に、故・磯崎邦夫先生の遺志を継ぎ東京大学庭師倶楽部糸魚川研究所を設立。現在に至る。

 

平成25

平成24年の活動継続

 

平成26年

糸魚川ジオパークカレッジOB・OGの提案により、学術の先にある実践への研究をテーマに糸魚川ジオパークカレッジ付属研究室開講。現在に至る。

 

平成27

平成26年の活動継続

 

平成28

糸魚川ジオパークカレッジ開講5年目を迎えた事から糸魚川ジオパークカレッジ付属研究室に付け加え、付属アンテナショップ「ジオカフェ」・付属「ジオファーム」・付属「ギムナジューム」を開講。現在に至る。

 

平成29

平成28年の活動継続

 

平成30

現在「付属演習林」計画中

 

平成31

平成30年の活動継続

各大学における造園学+ジオパーク学=実践的環境学の公園開始

 

令和2

ポーランド共和国・岩手県住田町・新潟県糸魚川市、造園学の先にあるネットワーク構築

代表研究員 宮 江介 博士豪習得

 

令和3

糸魚川地やパークカレッジ開校10周年「宮With」から「With宮」へ

地域論文→地域研究→地域商品(物質的・精神的環境の保護と利用を前提とした文化交流と地域産業の活性項目全24種)

 

令和4年

糸魚川市内市立大学設立を目的とした、「造園学」の先にある「ジオパーク学」へのアプローチとして、首都圏大学及び中央ヨーロッパにおける新領域創生学としての学術交流計画の開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


知的冒険の旅博物誌

 

香川県・高知県

長野県・群馬県

東京都・ポーランド

新潟県・岩手県

香川県

飯野山(いいのやま)は、香川県の丸亀市と坂出市の境に位置する山で、古代神、イイヒコが祭られ、土地は民間・林野庁・環境省・神社の管轄。

地域住民による体験型レクレーション施設の構築と里山アミューズメントとしての起動。

 

高知県

標高1,300mに、なだらかな遊歩道を作っていることが最大の特徴で、高山性の植生要素が高く、遊歩道はヒノキのチップを敷き詰めている。

セラピーロードとセラピー基地に隣接する病院・施設・小規模事業主の活性による地域の保護と利用。

 

長野県

長野県岡谷市諏訪市下諏訪町にまたがるで、河川法では天竜川一級河川)水系の一部として扱われ、諏訪4大社で有名な街。

観光資源の発掘と観光ポテンシャルの活性計画。

 

群馬県

群馬県に位置する河川沿いの町で、かつては企業の保養所で栄えたが、現在は衰退し、林業から観光への足がかりを探す。

町内8箇所の木造旧校舎を活用し、その活性による集落の観光ブランド復活。

 

東京都

東京都八王子市にある里山で、新興住宅地やゴミ処理場としてあらされた後に、住民の反対で残った一片。

住民と企業と行政の管理による里山型公園のランドスケープ計画。

 

ポーランド

ポーランドにある、ヨーロッパ最後の原始林で世界遺産にも登録され、森林科学と古代魔女文化が融合するビャウオベイジャの森。

魔女文化と森林科学の融合による環境教育と持続可能な環境計画のプロトモデル構築。

 

新潟県

世界ジオパークに認定された、大地・生態系・文化資源のある地域で、複雑地形が織り成す地域全体の自然と文化が全て公園となっている街。

地域全体をキャンパスとして、そのコアにカレッジを開校する事から文化交流の発信と提供を行う街。

 

岩手県

岩手県気仙郡に在る、林業日本一を目指す集落。地域材と気仙大工との関係で被災直後から仮設の木造住宅に2000人を受け入れる。

被災地を森林から元気にする住田ふるさと夢学校の設立と運営。


主な開講講座

 

ホーランド・ビャウオベイジャの森・白魔女さんの森暮らし教室開講2009~

住田ふるさと夢学校開講2011~

糸魚川ジオパークカレッジ開講2012~


通常運転倶楽部活動

 

各種団体に対する調査計画

学術フォーラム

観光資源・観光ポテンシャル調査発表

自然・人文・環境講演会

造園学教室

子ども環境教室

ランドスケープ計画

大学・大学院講義


最近の論文・研究発表・等

磯崎式3軸環境評価手法


 

環境ポテンシャルを見つけ出すXYZ軸
                ~糸魚川・太古の不思議を環境評価手法で探検する~

『糸魚川地域のジオパーク構想に於ける造園学的環境評価手法の研究』

A study of the environmental evaluation technique of the landscape gardening studies in the geo-park design of the Itoigawa area

*糸魚川市 **東京糸魚川会 ***東京大学庭師倶楽部

キーワード;糸魚川、フォッサマグナ、ジオパーク、翡翠、奴奈川姫・保護と利用、持続可能な環境計画、環境教育、造園学

                                                  

 

1・背景と目的・(予備調査報の概要)

糸魚川地域は一市の中に中部山岳国立公園、上信越高原国立公園の二つの国立公園を持った唯一つの市で、高峯の一滴から海岸迄の流域に人文環境と自然環境の特性が折り重なり、新潟県の最西端に位置し、西に富山県、南は長野県と接し。市内は親不知・子不知県立自然公園、久比岐・白馬山麓県立自然公園を持ち、海岸、山岳、渓谷など変化に富んだ個性豊かな自然に恵まれた、極めて希少価値が高い得意な地域である。又、つづら折りの河川は日本一のヒスイの原産地として全国に知られており、市面積の約93%を山林等が占める一方で、地すべり、風水害、波浪害などの自然災害が発生しやすく、豪雪地帯でも有る。その反面複雑な地形は豊かな自然を恵み、糸魚川の流域はその急峻な自然から生まれた一級河川の姫川を筆頭に、海川、早川、等を代表に大小数十の河川を有している。又、地形全体には、春は染井吉野、山桜等が咲き誇り、独特の山岳風景を創り出しており、更には歴史も古く縄文や古事記の時代より遡る事も出来る。本研究の目的は糸魚川地域全体をFossa Magnaという環境資源から大きなテーマパークとして、海岸線や河川を個別の特色空間と考え、その中の人文資源や自然資源に就いて調査研究を進めて行く事を目的としている。現在、フォッサマグナの地質を持つ糸魚川市は、ジオパークの構築に挑戦している事から、この恵みを自然環境に留まらず、人文環境にも繁栄させ、地域ポテンシャルの構築に寄与したいと考えているが、地域ではその魅力に就いて人との触れ合いを展開できる町づくりの礎となる積極的な行為も進められている。尚、この考え方は糸魚川地域に携わる関係者の共通認識と見られる事から糸魚川全体をジオパークという大きな庭園と考え、その中に、スキー場や奴奈川姫の伝説のような魅力ある要素を取り入れ、更にその先のきめ細かい工夫が全体のネットワーク構築に繋がる為の調査研究方法として、次の事を考えた。先ず、Zoningでは、特有な地形として海、河川等と道路網が複合している事から、これによる分類を行い。次に、それぞれにマクロ、メソ、ミクロの3視点から地域特色を調査して行き。更に磯崎式環境評価手法による物理的解析、心理的分析、造園史実的検証を行い。その結果からの考査研究を進めていった。この中で、大きな全体形をジオパークとしてとらえ、海、河川、森林、町などの個別地域を空間構成要素と考え、その中で固有な(人文環境や自然環境)対象や活動を、人との関わり(造園学的部分)と考え、今回の調査研究が糸魚川地域に対して、人と環境を結び、発展の為に役立つ環境教科書の一部として活用して頂ければ幸と願っている。

 

2・Zoningと考査の視点

先ず、糸魚川地域全体をジオパークの発想に準じ、Fossa Magnaにより形成された一体と考え、その中で、河川や海岸線を主体とした7zoneに分けた。

Zoningの基本的な手法はMAB計画の発想を基本として行ったが、その理由に就いて下記3つの理由があげられる。

・本調査研究に対しては造園学主体とした「保護と利用」「持続可能な環境計画」「環境教育」の基本概念の基に行っている為。

・対象地域は「中部山岳国立公園」「上信越高原国立公園」の二つの国立公園を同時に有する日本で唯一の地域であり、当然国立公園法17条、18条とは同方向における発展と相乗効果を構築する必要が有る為。

・地域の基本形成となるジオパークは自然地形そのものであり、そこから形成される自然環境や人文環境は地域や外部にとって大切な環境potentialとして育まれるものと考えられる為。

以上の発想から全体のFossa Magnaによる地形の恵みをジオパークとして考え。糸魚川地域にある山、川、海、町など特色を分ける為に水域による空間分類を行い。その中の空間分類した各水域に対して点在する文化、自然、風土等の個別な環境Potentialに着目して行った。結果これらが相乗効果を持ち、人と自然の関わりを発展させる事が造園学手法と定義して実際のZoningを下記表-1に記した。

表-1MAB計画を基本とした糸魚川地域のZoning

地域名(ゾーン)

幹線道路及び路線

山岳及び渓谷・海岸

代表的な環境資源

①・糸魚川市内海岸

国道8号線・JR北陸本線、糸魚川駅・等8駅

筒石漁港・磯部の浜港南公園・藤崎海水浴場・等

マリンドーム能生道の駅・白山神社・等

②・能生川流域

県道88号線・等

鉾ヶ岳・等

湯の脇温泉・・シャルマンスキー場・等

③・早川流域

県道270号線・等

空沢山・等

月不見の池・・焼山温泉・等

④・海川流域

県道211号線・等

阿弥陀山・等

海谷三峡パーク・等

⑤・姫川流域

国道148号線・県道222号線・JR大糸線、姫川駅・等

雨飾山・小滝川・根知川・虫川・等

フォッサマグナパーク・糸魚川シーサイドバレースキー場・白馬山麓国民休養地・等

⑥・青海川流域

県道155号線・等

黒姫山・等

橋立ヒスイ峡・等

⑦・境川流域

県道115号線・等

麻尾山・等

上路山村振興センター・等

この結果Fossa Magnaという特異な地形に対して地質学の見地から行われて来たジオパークの発想に於ける24箇所の分類と、その環境Potentialに就いて、造園学の見地から行ったZoningによる7か所の分類を行い、相乗効果から今後の活性化を図った。

 

3・研究の手法

現在、糸魚川市全体に於いて世界ジオパーク登録に向けての取り組みが行われているが、これは決して現在ある文化環境を取り壊し、新しいものを全てに優先する事では無く、今ある環境資源から環境ポテンシャルを繋いで、全体をネットワーク化する構想が良いと考えられる。つまり基本的概念は「保護と利用」「持続可能な環境計画」「環境教育」による、人と自然の関りからの発展と構築であり、その為に地域環境に対する物理的解析軸、心理的分析軸、造園史的検証軸からの3軸手法による調査活動を行う事に重要性を見出している。この3軸手法に就いては磯崎式環境評価手法を用いるが、糸魚川地区に於いて3軸となる細部の内容を下記表に示す。(表-2・3・4・5参照)

表-2・目的軸に対する環境解析手法の方向性

 

物理的解析X軸

心理的分析Y軸

造園史実的検証Z軸

保護と利用

自然環境や人文環境の数値化等

地域で大切なものは何か等の意識分析

環境資源の歴史的構築の検証

持続可能な環境計画

環境ポテンシャルに対する利用尺度の比較等

100年先の構想意識等についての分析

環境ポテンシャルの持続的活用手法の検証

環境教育

地域特性の数値化による科学的理念等

自然、人文、地質額に就いての意識分析

地域特性の学習的側面の検証

表-2に就いては目的である保護と利用、持続可能な環境計画、環境教育に対して物理的解析軸は、自然資源や人文資源に対してその特異性に就いて数値解析を行い価値観の構築を試みる。心理的分析に於いては、地域及び他県の対象者に対し環境資源の価値観などに就いての認識や意識の分析を試みる。造園史実的検証に就いては、環境資源と人の関わりに対して過去の実例から、検証を試みるものとした。

 

表-3・視点軸に対する環境解析手法の方向性

 

物理的解析X軸

心理的分析Y軸

造園史実的検証Z軸

マクロ

望遠視点で見渡す景観としてのパノラマ率、シルエット率、等

Fossa Magna地形全体と人との関わりに就いての定量分析

国立公園や特異地形に対する実例検証

メソ

ヒューマンスケールで考える空間の視点として実際に地域内において、斜度、植生、時間軸等

個別空間としての山、河川、海岸などに対する意識に対するアンケート調査からの定量分析

空間に於ける人文環境や自然環境に対する実例検証

ミクロ

実際の空間内に於いて具体的な対象物に対する五感で感じる尺度の数値化

個別対象と人の五感に対する意識の定量分析

地域特性に関する活用事例及び保護事例の実例検証

 表-3に於いては、マクロとして全体的な望遠的panorama視点を用い、メソとしてHumanScaleの個別空間視点を設定し、ミクロとして、個々の自然や人文資源に対する人の五感による視点を用いた。この結果、X軸に於いては地域全体から個別の対象まで数値的な解析を行った。又Y軸に就いては、地域全体の保全意識から個別の対象に於ける活用意識までの心理的な分析を行う。更にZ軸では、特色ある地域の保全活用に関して我が国における明治以降の造園史実から類似したケースの是非について検証を行う。

 

表-4・環境解析手法の一例

物理解析のX

心理分析のY

造園史実検証のZ

糸魚川地域林内に於ける春の森林風景に対するパステル・ワールドの解析

糸魚川地域に対する意識と知識に対する分析

糸魚川地域の特性と自然の共栄文化に対する発展性の検証

糸魚川地域の水域に対する代表的な河川と海辺に対する水面の色に就いて分類解析

今後の発展に対する保護的重要性と活用的希望地の意識分析

風土や歴史に関する発展軸の検証

 表-4に就いては、上記表-2・3で示した内容に就いて、地域特性から実際の具体例を示している。その実例をあげれば、先に述べた様に糸魚川地域はFossa Magnaの急傾斜な地形から山林が多い代わりに植林に適した地域が少ない為、原生林を多く残しているが、これが幸いして四季折々の山林風景に独特の季節特有な色合いが楽しめるが。これに就いて春における「pastelworld」という独自の地域特性を見出すことができる。又、地域内河川が地形や地質から、それぞれ個別の河川ごとの「色」が特色を醸し出している事にも着目した。更に地形の関係から変化の多い天候が太陽光線と水蒸気を変化させつつ海の色を刻一刻と変化させる事もこの地域の産物と言える。これらの要素から本研究を進める際に四季を通じたビューポイントの定点設定をテーマとした。これは①押上のひすい海岸・②海にむかう新田・③能生白山神社・④弁天岩・⑤シャルマンスキー場 ゲレンデの風景⑥笹倉温泉近くの棚田・⑦羽生の西海小学校・⑧海谷の民家・⑨月不見の対岸の風景・⑩フォッサマグナパーク正面の風景・⑪しろ池の一本の木・⑫シーサイドバレースキー場ゲレンデの風景・⑬市役所正面の森・⑭天津神社本殿・⑮長者ガ原遺跡入口、これら15ヵ所の設定を四季別に後定点撮影を行うものとする。

表-5・ジオパークを題材にした地域を取り巻く取組

農林水産関係の方向性

水産には、強いポテンシャルがあり、同時に農業は地域全体面積の5%弱と少なく、山林の面積は全体の80パーセントと多い。傾斜が厳しい事が糸魚川地域の特徴。この特色を生かす形での応用性を見出すものとして、短いスパンの急流を活かした、「森林の多様化」「海に向かう美しい田園風景」等の発想。

商工観光関係の方向性

今年は、天地人(NHK大河ドラマ)、国体、ジオパークが市としての観光の三本柱になり。さらに民間主催のグランフォンド(自転車のイベント)、クライミングなどのスポーツイベントもあり、フォッサマグナの恵みによる日本最後の急流が注ぐ源流の地域として観光。

文化振興関係の方向性

能生白山祭り、竹のからかい、けんか祭り等、文化財級の祭りが多く、神話や太古の昔から歴史が続いている地域は国内において意外と少ない。更にこれら環境資源希少価値遺産。

地域博物関係の方向性

世界ジオパーク認定にはまだ幾つかの困難な道のりが待っていると考えられるが、一つずつクリアーして地域が認定される事が、国自体の財産になるものと考えられる。

地域出身者の方向性

地域に対する共同調査から歴史遺産・文化的遺産、自然遺産の活性化。

造園学的団体の方向性

フォッサマグナをマクロとし、海岸や河川の流域空間をメソと考え、現地における具体的な活動から人と自然の関わりに対する調査研究の構築。

今まで述べてきた表-2・3・4に就いては造園学的な見地であるが、造園計画の基本は地域主体というスタイルが基本になる。そのため、今後調査、計画、landscapeと進めてゆく際に、地域コミュニティーの形成と活性化が最重要課題とされてくるが、この地域に関しては上記表-5に於いて確認できるが、きわめて活発な活性化が行われているといえる。更なる活性は造園学による調査研究の裏付けと地域コミュニティーの効果的リンクが行われることで、ジオパーク構想は日本国内での大切な財産としてこの糸魚川地域に於いて活性できると考える。

 

4・考察結果と今後の展開

 今回行った春季調査については今後継続して行く夏季、秋季、冬季調査の第一弾として、海岸線や河川と、人文資源や自然資源に就いて、三軸手法を当てて調査を進めている。糸魚川市内には数多くの地質学的に大事な露頭(崖)や地形があり。これは地質学的重要性だけでなく、考古学的・生態学的もしくは文化的な価値もある地域と定義が出来ると考えられる。

日本ではまだユネスコの世界ジオパークに認定された地域はなく、糸魚川市はユネスコに先んじてジオパークという造語を使って来た事も有り、世界ジオパークに認定される事を目標に様々な事業を進めて行く予定の様である。先日、東京大学で世界有数の地形からジオパーク構築に向けた環境ポテンシャルの価値創造フォーラムが開かれており、重要な調査研究対象として考えられている。即ち、糸魚川地域のフォッサマグナという特異な地形は、地域の努力によりジオパークに発展し、世界に通じる国内の環境財産として構築できることが望ましい。更にジオパークに対して造園学の見地を導入することに於いて、地形の恵みから得られた自然環境や人文環境に就いて、人と環境の関わりがより深く構築され、未来に継続されることを熱望する。

 

5・謝辞

本年3月より糸魚川地域の調査研究に入り、Fossa Magnaによる地形の恵みに感心しています。また同時に地域における誠実で真面目な人ポテンシャルの高さには驚いています。地域活動に協力して頂いている糸魚川市役所の米田市長をはじめとする早水様、金子様、織田様、田鹿様、岩崎様らに感謝致します。専門的な知識を提供して頂けるフォッサマグナミュージアムの高橋様、竹之内様、鳥越様らに感謝致します。我々の調査研究を全面的にサポートして頂いている東京糸魚川会の望月様、小林様、高間様、寺崎様らに感謝し、今後の調査研究に益々の努力を致します。

 

参考取材(聞き取り調査) 

・糸魚川市

・東京糸魚川会

・シャルマンスキー場など

・各地元地域の方々

・その他

 

 

『造園学による3軸評価手法が齎す地域環境Communityから外部参加迄のprototype研究』

 

" A prototype study to local environmental Community which three axis technique by the landscape gardening studies brings "

 

*糸魚川市 **東京糸魚川会 ***東京大学庭師倶楽部

 

我が国に於ける近代造園学の歴史は明治期に日本に入って来たドイツの経済学である「森林美学」や、ヨーロッパにおけるアルピニズムの発想から志賀重治により構築された「日本景観論」が基本的な思想となっている部分が多い。

この中で独自の発展経路持つ物として、本多静六をはじめ田村剛、上原啓二らの流れを組む東京大学庭師倶楽部は、磯崎邦夫をはじめとする実践型の造園学を科学的尺度により、調査・計画、landscapeと地域に対して実践を行ってきたが、その中で地域住民を主体としたコミュニティー形成は、特に重要な位置付として認識している。

本研究では造園学による実践として今まで行ってきた3軸による環境評価手法がどの様に形成され、成果を得てきたかに就いて検証の時期が来ていると考え、手法、対象地域、行為、結果、提案、実行のプロセスからプロトモデルの試みを行い、これを論文として下記に示す。

 

キーワード:地域・コミュニティー・ツーリズム・セラピー・レクレーション・持続可能な環境計画・保護と利用・環境教育・共存共栄・造園学・ボーイスカウト・地元青少年・カレッジ・CSR活動

 

 1.背景と目的

造園学による実践型の地域貢献活動として、糸魚川地域(以下地域)を対象に、物理的解析軸、心理的分析軸、史実的検証軸の3軸による環境評価手法を用いて研究を行って来た。

結果、本研究は第一回予備調査で全体の地域環境資源に就いてポテンシャル発掘を前提としたゾーニング調査を行い、第二回春季調査にてマクロ・メソ・ミクロの視点から河川に於ける色の違いや、森林のパステルワールドに就いて触れてきた。

その後、夏季調査、特別調査を経て地域の活発な活動により、基盤を作って頂き、心理解析に対して科学的証明値に達する高品質なアンケートを頂く事が出来た。

これらの活動を踏まえた上で、今回も現地では秋季調査として重点的に人文環境ポテンシャルと自然環境ポテンシャルの現地解析の実施を行い、同時に新たな試みとして「サケの遡上実験」をNPOのメンバーや新潟大学のメンバーと合同調査を行い、市役所の方々や地元魚協の熱いご協力も頂き、河川の原始性から繋がる風致的ポテンシャルの存在を確立して行く実験も叶い、この辺に就いてもクローズアップして触れている。

更にこの活動は、山と海のナチュラリストが集う地域コミュニィティーの現場や、新潟大学やNPOとの、地域小学校に対する環境教室など、東京糸魚川会の主催として築く事が出来たことから、地域に対する具体的な貢献のプロトタイプも、礎として構築できたと考えられる。

又、以前の調査で述べてきた河川それぞれに独特の色合いと音が存在している事と同時に発達した文化空間もそれぞれの地区に存在し、特徴があるという話から今回は更に一歩深く、現在形成されている地域のコミュニティーに対して、その水系をクローズアップした空間解析を行ったケーススタディーの一例も紹介させて頂く。

これは糸魚川市内に流れる主要河川である田海川に対する遡上調査と、源流に生息する岩魚の実態から、遡上するサケの生態まで河口と源流の両面に照準を当て調査した結果もかねて考えている。

本研究では、これら総合的な結果から、造園学の実践型として行う3軸評価手法が地域コミュニティーの形成計画へ発展する経路に就いて明らかにして行きたい。

 

2・環境評価手法とコミュニティー計画の関係

前にも述べているが、環境評価手法とは造園学の実践型に於けるプロトタイプの構築を行う行為であり、この結果各地域別の環境資源を把握し、ポテンシャルを引き出す事で、地域の自然や人文環境に対して地域主体の「保護と利用」「持続可能な神吉洋計画」「環境教育」の構築を行うことを目的としている。 

1)・物理解析となるX軸と糸魚川コミュニティーの関係

海・河川・山岳に於ける地形解析から、糸魚川地域に於いては源流の最初の一滴から、河口に注がれる迄の距離が極めて短く、同時に高低差の激しい事が、解析結果から証明されている。

更にこれらは日本地図を基に示した場合に南北の状況であり、これを東西に充てて計測した場合、その高低差と距離が河川を含む谷合いに於いて激しく入り組む事で、独特の気候風土を作り出している事が発見された。

この物理解析から河川に於ける独特の色合いや、山林に於ける特色有る生態系を育み、結果特有の風土形成が存在する事が解った。

2)・心理分析となるY軸と糸魚川コミュニティーの関係

次にこれら風土形成に対して地域の取り組みや認識に就いての心理的認度に就いて行った、解析結果の定量に就いては単解析及び重解析による分析結果を来春までに発表する予定でいるが、小中学校合わせて既に2000件以上の回収率を上回っている事より、地域の人口に対して5%以上のアンケート回収率を得た事になり、これが何よりも意識の活発性を証明している。

同時に不思議な事であるが、地域住民の意識として「何もない街」と言う表現が目立つが、他県の認識としては「なんでもある街」と逆説の意識が働く。

つまりこれは「東京には、東京タワー、国会議事堂、地下鉄はあるが、原始の河川、氷河期のまま残る森、生態系に富んだ切り立つ山は無い」ということであるが、互いに有る物に日常的な空間意識を持ち、無いものに非日常的な非凡空間意識を持っている事が解るが、歴史的背景と世界規模で客観性を見た場合、ある意味糸魚川の方が上であると評価できる。

3)・史実検証となるZ軸と糸魚川コミュニティーの関係

地域を対象に人と自然の関わりに対して、造園学の観点から述べれば、明治期より130年間、自然環境と人文資源の共存共栄を科学的に行えたものが極めて優れた結果を出している。

逆説として言えば、自然環境に対し人文資源が物量的価値に走り、質量的魅力を忘れた結果は、最悪の事態を形成する傾向が強い。

つまり破壊と箱モノの構築を繰り返した町は、その衰退が目立ち、回復には経済のみが発展して来た年数以上の時間と代償を払う結果となっている。

反面、自然資源に対し人文資源を駆使しコミュニティーの形成に力を注いだ地域は、その後landscapeを行った場合に於いても、その設備は十分に起動し、活用される傾向が強く自然資源も継続して未来に残し、持続可能な環境計画を可能になる傾向が強い。

更にこの持続可能な環境計画を立ち上げるには、経済学の観点に偏らず、環境的な科学的解析から造園手法を打ち出している。

東京都に於ける日比谷公園や、明治神宮がその一例であるが、ここ糸魚川市に於いては、ジオパーク構想に於ける地形や地質を守り公園化する事で保護と利用の概念から、その生態系を利用した産業の発展や地域技術の発展に伴う持続可能な環境計画の構築や、更にはアンケートに対する勤勉さからも読み取れるような、未来に対する人材育成に対して環境教育の姿勢も整っており、ある意味、理想的概念と捉える事が出来、この地域の人ポテンシャルの高さが伺える。

 環境評価手法とコミュニティー計画の特徴

X

特徴ある沿岸、河川、山岳、森林、などに就いての、ジオツーリズムの実施から得られる、観光と環境教育による実践型の交流が期待できる。

Y

歴史、文化、産業、等に対する風土と共存共栄できる技術を提供できるコミュニティー活動が構築できる。

Z

保護と利用の概念から行うジオツーリスズム。持続可能な環境計画の概念から行うコミュニティー。これらの融合として地域全体をキャンパスとして、中心地にカレッジを形成する事で、地域全体を演習地付きの環境大学とする構想が望まれる。

 今回の環境資源解析の結果から云える事は、上記の表に示す発展性が秘められている。

又これらには対象地が物理的地形及び地質の複雑さと、それに準じた生態系の特異性から地域の共存共栄文化として、造園学の観点から自然資源と人文資源が一連性を持って成り立っている。

その為、地質学をはじめとする専門家なども多く、地元ドクトルやマイスターの豊富さも新領域創成意識による起動を可能にしているが、更には眠っている土地や施設に就いて再利用する事から地域全体を街ぐるみのキャンパス構想として観光地と同時にジオカレッジとしての無限の発展性も秘めている事が理解できる。

 

3・環境評価手法と地域コュミニュティーの実例

2章に於いて環境評価手法とコミュニティー計画の関係に就いて述べてきたが、これらの行為に対して具体的な地域活動の実例を持って説明する。

1)・青海漁協

この季節は「サケ祭り」を行っているが河川管理全般を行い、実際に生きたサケの提供や、地元河川に於ける細部の情報提供も行ってくれた。

更には、地元小学校の環境教室にも生きたサケ持参で参加してくれ、命や自然の大切さを語ってくれた。

2)・海彦山彦コミュニティー

対象地は魚付林が多い地域であるが、山人たちが海に対する心遣いをしている。

これに対して漁協のメンバーによる、河川への岩魚放流を自主的に行い、山の環境に対する恩返しをしている。

こうした活動が、山と海のコミュニティーを形成されている事が素晴らしく、彼らのパーティーにも参加させて頂いた。

こうした彼らの願いは「川に水を返してほしい」という提言をしてくれたが、これこそ世界規模の環境提言と判断できる。

4)NPО魚類調査チーム

本計画は地域河川における原始性の証明であるが、その為、源流部分の岩魚に就いての個体分布と、サケの遡上から海・河川・山のメカニズムを検証する為の実験行為を行い、対象河川の環境性に就いて科学的証明を行ってくれた。

3)・新潟大学

河川のメカニズムの証明実験に就いては学術的価値から研究を兼ねた学生ら4名がボランティア参加の元で実体験を行った。

5)・青海小学校

この全ての行為に対して、3年生全体で環境授業の一環として、野外教室を開催してくれ、参加してくれた。

この地元の行為は、未来のレンジャーを育てる、極めて前向きな行為であり、地域環境に対する保護と利用の姿勢を絶賛したい。

本計画の実行に対しては、山と海の共存共栄を前提とした「海彦・山彦、計画」(共存共栄)を前提として、難しい河川の利用などに就いても市役所と教育委員会が積極的な協力をしてくれた。

同時に、地元漁協により、山のコミュニティーに対する交流や、サケの孵化研究機関、等の積極的な協力を得る事が出来た。

その結果NPОによる専門チームの実験に伴い大学機関の研究論文から、地元小学生の環境教室の開催まで行う事が出来た。

この成果に就いて特筆しておくことは、糸魚川を故郷として東京などに在住する東京糸魚川会のメンバーによる積極的な働き掛けがあり実現している。

すなわち、環境解析手法として行う3軸手法が自然資源、人文資源の分野から「人ポテンシャル」の高さを発見し、計画に発展させ実行出来た結果、大きな成果を得た事例となった。

 

3・プロとモデルから学部今後の展開に於ける期待

2章で行った実験結果と第3章で体験したケーススタディーから学んだ事実に就いてまとめると次の内容となる。

    環境資源から環境ポテンシャルを見出す事で、人ポテンシャルの発見につながる。

    人ポテンシャルの活性化が、地域の環境ポテンシャルを高める原動力となる。

    この相互関係がコミュニティーの形成となり、地域環境の保護と利用、持続可能な環境計画、環境教育につながり、特色有る地域色を外部に提供できる。

以下はプロセスに就いて下記の図と、以下1)5)にまとめた。

1)・糸魚川マイスターとは

ドイツ語のマイスターの意味は直訳すれば親方制度である。

実際ドイツに於いてはドクトルと同格の地位にあり、実践と学問が互いに繁栄し合い国力を高めている。

糸魚川マイスターとは造語であるが、地域における農・林・水産・等に携わる経験豊富な実践型スペシャリストを指している。

又、彼らの活動は机上の論ではなく、実践における経験値からの貴重なデータ提供と実演が行える事に高いポテンシャルを秘めている。

その専門分野こそ、地域の環境レンジャーとしての高い期待が持たれる。

2)・糸魚川ドクトルとは

地域における地質や地形に携わる学者らを指している。

又、彼らの活動は机上の論に終わらず、現地に足を運ぶ実践型の学者たちであり、その専門分野こそ、地域の環境レンジャーとしての高い期待が持たれる。

3)・糸魚川キャンパスとは

フォッサマグナの織りなす地形は、特異の生態系を形成し、そこで暮らす人々は独自の文化を形成して来た。

これら全てが自然環境及び人文環境であり、これを持ってジオパークとしている事から、ツーリズム、セラピー、カルチャー、アドベンチャーの分野で発展構築できる大きなキャンパス(自然体験型演習フィールド)として活用してゆきたい。

4)・糸魚川カレッジとは

キャンパス(自然体験型演習フィールド)の存在は、核となるカレッジスタイルの提供からコミュニティーとして更に質の良いビジターの当来とレピーターを増やす事が出来る。

そこでマイスター及びドクトルのポテンシャルをガイドやレンジャーの範囲に留めるだけでは無く、更に飛躍した活躍の場として各専門分野の教授的構想による活躍の場をカレッジに求めたい。

5)・糸魚川ナショナルトラスト発想とは

1)4)迄の形成が出来た上で初めて行う発想では有るが、地域には廃校や廃屋等数多く点在し、資源が眠っている事も事実である。

そこでコミュニティーが起動した際のカレッジ拠点としての活用や、同時に糸魚川に残る貴重な地域や文化遺産に就いても、保護概念として未来に受け継ぎ構築する必要がある。

更には外部の受け入れを兼ねた社会貢献性の高いコミュニティーとして、持続可能な環境計画となる経済的運営計画の構築にあたり、対象地設定やlandscape、の実施も集大成として望まれる。

 

4・ツーリズムに対するコミュニティーのプロトモデル例

第3章で述べた理由から、対象地域の環境資源は環境評価手法により環境ポテンシャルを見出す事から、コミュニティー計画の構築が可能となった。

これに伴い外部からの受け入れ体制に就いて、ツーリズム対する二つの構成要素を考えてみた。

一つはツーリズムに対する可能性であり、「ジオツーリズム」と銘打つ中には、グリーンツーリズム・ブルーツーリズム・エコツーリズム・ワーキングホリデー・セラピーツーリズム、更には造語であるがムーンツーリズム・スピリチュアルツーリズム・ジュラツーリズム・トレジャーツーリズム・アドベンチャーツーリズムなどの発展的な可能性がある。

そしてもう一つは、現在社会的におけるCSR活動は、環境貢献のスタイルとして一角を形成している事実がある。

しかしその殆どは、類似してしまい、言葉だけが先行してしまうありきたりの内容が現状である。

この打開策としてジオツーリズムは、地域としての受け入れ体制から更に先に進んだ、CSR活動に対する新たな受け入れ体制についても可能性を秘めていると考えられる。

例えば糸魚川地域以外にCSR活動を希望する企業があるとする。

つまり、どこかの企業が環境貢献の為に何か投資を行い、活動したいと考えている場合、地域のカレッジ構想によるジオハーク全体のフィールドワークからコミュニティーとしての提供と、受け入れが出来る事になる。

この際に大切な事は、ジオツーリズムに参加して、保護と利用、持続可能な環境計画、環境教育の三つの柱に就いて一定の成果を上げる事が出来る質の良い対象であるが、筆者は地域の青少年と各地のボーイスカウトを筆頭にあげたい。

その理由に就いて先ずボーイスカウトであるが、彼らこそボランティア精神に誇りを持ち、世界的な規模と社会貢献活動の歴史を持つ者であり、これらに準ずる組織の参加が望まれる。

又、残念な事であるが、こうした素晴らしい団体の登録人数は、年々減る一方で、ここの20年の間に半数に減少している。

こうした現状から環境貢献活動に参加する事はボーイスカウトにとっても新たな環境貢献の場に進出し、彼ら本来の価値を伝える事にもなり、同時に地域の青少年を合同チームとして参加させることが、未来の環境レンジャーを作り育てる事にもなる。

こうした両者の新領域創成計画に対して、CSRとして活動をサポートする事が、企業にも世界的な規模で行われている団体の一部や地域密着型の認知をされる事は価値のあるものと考えられる。

左記の図によるフローチャートは、まず保護と利用の概念として地域独自の独立活動から全てのビジター対する受け入れ体制の構築を行い、次に外部のCSR活動に対しても十分な受け入れ体制を提供することが出来ると考えられる。

同時に、対象を地元やボーイスカウトの青少年とした事から、環境教育と冒険ツーリズムの聖地として、地域ブランドの構築が出来る事になり、CSR活動としても協力する企業の独自性や社会貢献性が定着しブランドイメージの確立できる利点がある。

更には、これらの行為が双方にとって品格のある社会貢献行為として、ジオツーリズムの持つ様々な多種多様型ツーリズムの構築からレクレーション性を体験できる事になり、質の良いレピーターと、話題性のある環境貢献を共有できるという共存共栄の発展性も備えている事になる。

 

5・おわりに

今回、秋の活動は東京糸魚川会により東京大学庭師倶楽部、新潟大学、NPO法人JFF(ジャパン フォレスト フォーラム)のメンバーをはじめ、地元の皆様のご協力によって我々の目指す、自然環境の保護と利用・持続可能な環境計画・環境教育活動の全てを集約的に行えた事に感謝している。

水際での戦いともいえるセンサー設置作業、早朝や深夜に及ぶ、鮭の溯上状況の測定など、全てを終えた後は、なぜか爽やかな疲労感と満足感に包まれて帰路に着くことが出来、目的を果せた事に一安心している。

私ども東京大学庭師倶楽部は、言葉での表現よりも、実践を中心に活動している。

従って、ある時は危険な冒険家となり、あるいは細い山道をオフロードバイクで登り、河の源流の一滴にたどり着くまで、徹底的に追求し、調査を行っている。

『糸魚川の河川は清流だよ』と口で言うより、その証明をして、環境教育を実践して、そして、最後に子供たちの楽しいそうな笑顔が私たちの疲れを吹っ飛ばしてくれた。

何よりも、秋期の活動がスムースに行えたのは、ひとえに地元の皆様の地味なご苦労と、ご協力により、完遂することが出来たこと、大変感謝いたしている。

これからも私ども東京糸魚川会と東京大学庭師倶楽部は、じみで奥深い研究活動を行い続ける所存である。

地元の皆様に喜んでいただければ、こんな嬉しいことは他には無い。

まだ冬の調査があるが冬の調査に向けての作戦や、報告書作成など、まだまだこれから幾つもの峠をこえるような気がした、私たちも一層の努力をして行く事を近い、糸魚川駅を後にした。

 

東京大学庭師倶楽部 顧問 磯崎邦夫

 

 

 

磯崎邦夫研究・その後の10年

『糸魚川と私これまでの10年・これからの10年』

~糸魚川ジオパークカレッジ10周年を迎えて~

1・はじめに・出会いから始まる10

春浅き頃、「海辺に近い山々では様々な新芽や草花が独特のpastel world(造語)を創り出し、日本海特有の汽水と蜃気楼の中に幻想的な姿を浮かばせ、全ての川の水には夫々の色が在り、別々の音が聞こえ、個別の香りがする不思議な街」、これが初めて造園学者として糸魚川の大地を見渡した時に体験した世界感であった事を今でも鮮明に記憶している。

この不思議な糸魚川の地に至るまでの経過については大学を卒業後、しばらくして私は17年先輩にあたる故磯崎邦夫先生の助手として、造園学を通じ人と自然の関わりについて、伝え、育み、活性させる目的から、日本の地方都市をはじめ旧東ヨーロッパを廻る知的冒険の旅の終着点であり、同時に新たな出発点と考えている。

私自身大学での専攻は造園学の中の日本庭園の為、卒業後は必然的に首都圏の都市公園や街区公園、或いは個人宅や公的施設のlandscape(景観設計)に携わると勝手に思っていたが、その思い込みが自身の極めて狭く浅い物差しであったことを磯崎先生ら歴代の造園学者に叩き込まれることになる。

磯崎先生とは20世紀の終わり頃より各地をお供して、人と自然の関わりをテーマに市街に留まらず山・川・海なども含みlandscapeを行う形でスケールの大きさを体感させて頂いてきたが、ここ糸魚川地域ではその広さに加えて更に限りない地形・生態系・文化の歴史による深さに正直今でも戸惑っている特殊な地域だと考える。

私は、新潟県魚沼の出身ではあるが、この糸魚川地域についてはそれまで教科書の中でしか知らない街であり、糸魚川地域との御縁を頂いた経緯については大変運命的なものであり、少しばかり神がかった事情がある。

この糸魚川地域との出会いについて少し詳しく書かせて頂くと、我東京大学庭師倶楽部では一般の町おこしに対しては、調査・計画・landscape3年計画で完結させることが計画成功の基本として考えせれており、2007年~2009年の期間において諏訪地域に赴いていた。

この諏訪地域の町おこしを行っている最中、偶然にも東京糸魚川会の小林保廣会長にお声を掛けて頂いた事が運命の始まりである。

当時の私は学問を志す一方、家庭もあり収益を得なくてはいけない事から良き理解者である東京郊外にある企業の行為で都心部の企業プロジェクトに関する環境コンサルの仕事を頂いていた。

そこでは一つのプロジェクトに対して複数名コンサルで結論を出す形式をとっており、当然ながら時間をかけて環境を守り地域を活性させたい私と、地域や環境など関係なく如何に短期間で稼ぐかを求めるコンサル会社との対立が当然のように起こっていた。


ある日の事、小林社長に呼ばれた。

当然企業にとっては気の長い計画を推奨する私の計画が受け入れられずに解雇を覚悟していたが、結果は予想と180度違う内容を告げられた。

小林社長曰く「君は生意気だけれど面白い男だね、諏訪の調査報告は楽しかったよ、今度は糸魚川をやってくれないかね」と穏やかに告げられ、拍子抜けしたことを覚えている。

その後は食事に連れて行って頂き、世間話の際に私は「なぜ地域優先型の私に」と疑問を投げかけた結果、小林社長はニコニコしながら「私、糸魚川の出身」との回答に全てが納得できた。

 

 

更には東京糸魚川会の調査研究対応方の選りすぐりメンバーと糸魚川市市役所まで話は通してくれた事で後に心強い御見方となり大変助かった結果となる。

この一連の流れを見ると、諏訪の建御名方神が糸魚川の母である奴奈川姫に諏訪での活動を見て母の大地に送り込むために、小林社長は縁結びの神様ではなかったのかと思える。

そして同時に宮の親類にあたる画家・宮芳平(18931971)が諏訪の地に温かく迎えられ、同じく親類にあたる歌人・宮柊二(19121986)が糸魚川の地で相馬御風先生(18831950)に大変お世話になった事からも、偶然ではない必然的な運命であったと思える。

このプロジェクトについては、糸魚川市より依頼された資源活性計画を東京糸魚川会が受け、東京大学庭師倶楽部に調査研究部分の委託の後に共同事業を行う最も理想的な構図を構築して戴けた結果として、今の糸魚川ジオパークカレッジがあると感謝している。

当時の主なメンバーは東京糸魚川会から故望月謙治前会長・寺﨑義博糸魚川支部長・髙間紀雄事務局長と、東京大学庭師俱楽部の部員数名で構成され、糸魚川資源の発見とポテンシャルの発掘調査団として2009年・2010年と調査・研究・計画・提言までの一連の仕事が済み、2011年には地域のコアとなるカレッジの開講を目指したが、東日本大震災の発生により1年間の延期を余儀なくされ、2012年に糸魚川ジオパークカレッジの開講となった。

この間の活動について東京方面では高間事務局長がすべての経理事務を担当しつつ仕事や編集から提案の進め方なども酒を御馳走になりながらご教授して戴いた。

又、地元では寺﨑支部長によるフルサポートを頂き、現地活動の全工程にほぼ同行して戴くだけではなく、お酒も鍛えて頂いた事で下戸であった私もいつしか糸魚川のお酒を理解できる様になり、東京や魚沼のお酒をよその酒と感じる今日この頃に少しばかり微笑ましい。

更には、地域ガイドをはじめ全体の研究まで磯崎先生らご一緒に活動して戴き、その後現在に至るまで常勤講師を継続して戴けていることが弾み車となり、現在の糸魚川ジオパークカレッジに至っていると感謝している。

2・知的冒険10年の足跡

2012


糸魚川市より「糸魚川ジオパークカレッジ」と命名を頂き、初年度は東京糸魚川会から寺﨑講師・NPО法人ジャパンフォレストフォーラムから植講師・東京大学庭師倶楽部から宮の三名による常勤講師と、ネットワークにより応援頂いた各非常勤講師の基で、二十数名の受講者が入学してくれたことで「糸魚川二十四の瞳」のような雰囲気の中で初年度のスタートとなった。

但し、この「糸魚川二十四の瞳」が究めて個性的な人材による糸魚川オールスターの様で、こちらも戸惑いながらも初年度ということでいろいろな試みも行った結果、楽しい思い出となり講師という職種に対して貴重な体験もさせて頂けたことは大学で教壇に立つ今も役立っており、二十四の瞳に感謝している。

又、本校の大切な試みとして人ポテンシャルを引き出すことを目的として、理系・文系を超えた新領域創生として受講生全てに糸魚川に関する様々な持論を述べてもらい論文化する目的があり、初回の論文提出後歯車が回り、現在100余りの知的財産を蓄積している。

2013年の博物誌

2年目は少し落ち着き、前年度卒業生らと2期生によりOBOG会も発足した。

又、東日本大震災の救助・復旧・復興についても一段落ついたことから岩手県住田町の「住田ふるさと夢学校」、POLAND共和国の「白魔女さんの森暮らし教室」からも講師を招いて新たな学術交流への試みを行う。

2014年の博物誌

卒業生らによるOBOG会は更に進化を遂げ「糸魚川ジオパーク付属研究室」として、蓄積し始めた論文の実践化を図るための研究が開始。

2015年の博物誌

コアとなる教室から更に広く発信する試みとして、市内を対象に商工会議所・学校に出前教室としてのカリキュラムを開講。(下記資料1参照)

2016年の博物誌

5年目を迎え当初より行ってきた座学と野外のカリキュラムについて修正なども行い、内容も安定したことから市外部への発信を開始。(下記資料2.3参照)

2017年の博物誌

糸魚川ジオパーク付属研究室の軌道安定からネットワーク化させた組織として、将来の大学構築を見据えて、東京大学・筑波大学・ワルシャワ大学・女子美実大学などへの「ジオパーク学」としての講義を開始。

2018年の博物誌

各地への発信と並行した形で、研究論文の先にある実践学と、さらにその先の地域産業への発展も考え、ジオパークカレッジツーリズムに対する招致を開始

2019年の博物誌

美山の森を活用した森林レクレーションの開催や、山から海までを利用した水のふるさと資源の開発、などの研究をより具体性な形として、カタログとして作成し、植講師のプロジェクトとして東京アンテナショップ開設。

2020年の博物誌

昨年企画した研究開発商品のカタログ計画に対する発進や、水のふるさと資源を基にした糸魚川ジオパークカレッジツーリズムの誘致活動を開始

2021年の博物誌

現在10周年に向けた多方向の活動について起動を開始

 

資料-1・糸魚川ジオパークカレッジ付属研究室

 

 

◆糸魚川ジオパークカレッジ

 

◆糸魚川ジオパークカレッジ付属アンテナショップcafe

◆糸魚川ジオパークカレッジ付属farm(平成28年度開園)

ジオパークフォーラムin東大(平成28年度より開催)

糸魚川ジオパークカレッジ付属研究室

 

 

◆ジオパーク学会in糸魚川(平成29年度より開催)

◆糸魚川ジオパークカレッジ付属works(平成27年度より計画)

◆糸魚川ジオパークカレッジ付属演習林(平成30年度より予定)

◆糸魚川ジオパークカレッジ付属ギムナジウム(平成25年度より実験的アプローチ)

・将来学校法人を目指す糸魚川ジオパークを母体として、研究室を中心に平成29年よりすべての活動と計画を持続可能な環境計画の一環としてリンクして行います。

 

 

 

 

 

 

資料-2・糸魚川ジオパークカレッジでの主な年間学習カリキュラム(座学)

講座名

概 要

造園学

ジオパークから保護と活用・持続可能な環境計画等を学習

ジオ検定ジオガイド演習

糸魚川の自然環境・文化環境・歴史などに付いて検定合格やガイドのスキルを学習

ジオパーク学

ジオパークをフィールドとして、自然力との共存共栄を学習

環境社会共存学

ヨーロッパの類似例と相違の比較から人と自然について学習

ジオ資源活用論

糸魚川独自の環境資源を題材に、ポテンシャルの活用学習

ジオパーク解析

人と自然の関わりや、自然力との共存共栄をテーマに実際に行った年間調査の報告と学習

ゼミ

受講者の自由な発想と興味から独自のテーマ探したのちに研究のサポート

論文(演習・制作)

受講者のお好みのテーマで論文制作、指導

※特別講義

野外教室として、ジオツーリズム×5コマ(特別講義予定参照)

 

資料-3・糸魚川ジオパークカレッジでの主な年間学習カリキュラム(野外)

講座名

内容

野外体験教室1

トレジャーツーリズムⅠ・Ⅱ(糸魚川の秘境にヒスイと化石さがしの遠足、糸魚川)

野外体験教室2

トレジャーツーリズムⅠ・Ⅱ(糸魚川の秘境にヒスイと化石さがしの遠足、糸魚川)

野外体験教室3

スピリチュアルツーリズム(魔女文化の自然共存学を題材に、セラピーと森の月光浴を体験)

野外体験事業

美山の森の森林アドベンチャー体験

野外体験教室5

スピリチュアルツーリズム(奴奈川姫と古代都市の体験)

 

3・おわりに・これから始まる10年へ向けて

糸魚川地域について私的見解を述べれば「全ての道の終わりの街であり、そして全ての道の始まりの街である』といえる。

10年の歳月がそよかぜとなり糸魚川の大地・生態系・文化や風土や四季の詰まった街を駆け抜けながら私の耳元に語り掛けている気がする。

当時、米田市長と磯崎先生の対談時、穏やかな時の流れ李中でどちらともなく「将来糸魚川に大学を作りましょう」という話になった。

正直あまりにも軽く仰っていたので私は耳を疑った。

ただ10年たった今、お二人には先見の目があったと実感している。

その理由として、先ず大地と生態系に底知れぬ資源が眠っていることで地域全体が壮大な研究フィールドとなる事は他にはめったにない。

次に人ポテンシャルの高さであるが、造園学を基に呼び起こすことで、ジオパーク学とした独自の学問体系を構築し、実際100あまりの知的財産が蓄積され徐々に産業や文化交流の実践として起動し始めている。

こう考えればなぜ大学を作らないのかが不思議に思えてきた。

大きな大学や、一番の偏差値を目指す必要はない、今ある資源と地元の人材を使いオンリーワンとして糸魚川独自に大学院主体の小規模な大学を構築し他校と提携すればよい。

その為に今までの10年を振り返り、これからの10年を考えれば、地域資源は多々あり、同時に私的な反省も多々あり、今後の課題として正の数値を活性させ、府の数値を改善したく下記に述べる。

先ず正の数値として切実に感じていることは当初計画した地域全体があらゆる学術の宝庫となる実体験型のキャンパスであり、そのコアとして将来の大学を想定したカレッジ構想は正しく、眠れる人ポテンシャルは想像通り高かったことを実感している。

実際この10年間で糸魚川が大きく私自身を進化させてくれたと感じでいる。

その理由については糸魚川地域と糸魚川ジオパークカレッジでの体験を通じ造園学として人と自然の関わりから新たにジオパーク学による、自然力との共存共栄をテーマに文系と理系の枠を超えた新領域創生の学術体系が整いつつあることで、これは現在首都圏を中心に複数の大学で講義をさせてもらい一定の評価もいただけている。

即ち双方のメリットであり、お陰様で大学左遷組にあった私もこの度無事に博士号を授与して戴けたことは専門学の極みに留まらず、糸魚川での研究実績やジオパーク学の講義内容などにおける環境貢献や社会貢献の評価であり、それを後押ししてくれた糸魚川の地と皆様のおかげであり大変感謝している。

但し大学の退官は5年先になってしまい、挙句には「お前のような劣等生には多くの時間と労力と金を掛けたので80歳まで国家貢献を命じる」と言われ、戸惑ったが今考えて見れば学者冥利に尽きる嬉しい言葉であり、奴奈川姫のご加護を承ったと感謝している事から今後は糸魚川名誉居候として地域貢献に寄与したいと考えている。

逆に負の数値として切実に感じている事は、理想の高さや社会貢献性の高さはお金に苦労するという事で、この10年何とかやりくりをしてきたが、正直とてもつらかった。

この問題について磯崎先生の言葉を借りれば「町おこしの鉄則とは、その町の金銭はなるべく使わず、その分町の人々の知恵と力は極力使い、地域外貨を得ることで持続可能な環境計画を達成する」とした教えがある事から糸魚川の企業人から学問の実践化と持続的自力運営について多くを学ぶ必要性を痛感している。

又、上記に記した聖愛の数値については文章の初めに書いた一般的な町おこしは3年計画とした理由には、1年目で我々が地域の人に伝える、2年目で双方協働で出来る様になる、3年目で地域の人が次世代に伝えることで、完成形となるが、ここ糸魚川の資源はあまりにも多く、そして深いことから知識の引き出しを作る事に10年かかってしまった。

この結果、良きにしても悪しきにしても「宮With」の構造が出来上がってしまい、いささか心配である。

もちろん造園学者として生涯をかける価値があると判断しているので今後もこの町の役立つ居候として存在したいが、やはり地元主体でなくては活動の方向性が失われることから地域住民が主人公として今後は「With宮」を目指し推進して戴きたく切実に願っている。

 

 

2021.6.25 東京大学庭師倶楽部 宮 江介

磯崎邦夫研究・今までの10年とこれからの10年

『糸魚川ジオパークカレッジ』という名の知的冒険の旅

糸魚川市 糸魚川ジオパークカレッジ代表 宮 江介

 

新潟県糸魚川市内において「人と自然の関わり」や「自然力との共存共栄」をテーマに『糸魚川ジオパークカレッジ』という市民大学を地域の皆様と開校させて頂き、今季で無事⒒期目を迎えます。

この経緯については、⒛世紀の終わり頃より自然公園の環境保護、都市や過疎地の再生、観光地や名勝の保全等を主体とした「造園学」を基に、東京大学農学部旧林学科の卒業生と在校生らの有志団体「東京大学庭師倶楽部」を設立し、国内から旧東ヨーロッパ迄を対象に、環境調査・環境共存計画・ランドスケープ活動を続けておりました。

右言の活動における基本概念は3年を目途に、最初の1年目に物理・心理・史実からの環境資源調査、次年はその結果から環境資源の保護と活用を前提に地域住民を主人公とした持続可能な実践活動の起動に挑戦し、そして最後の年には地域に根付いた様々な資源から計画をデザインし、100年先をアセスメントする形で、地域は自力による環境保護・文化交流・地域産業の構築と継続を行い、我々が不要になる事を求めます。

ただ、過去には3年計画では治まらなかった実例が3例あり、一つはポーランド共和国ビャウオベイジャの森で暮らす先住民の森文化継承、二つ目は東日本大震災後の復興活動、そして三つめは世界ジオパークの街、糸魚川市です。

この糸魚川地域では翡翠文化による地学や史学以外にも造園学者の想定を遥かに超える多種多様な研究資源が複雑な地形と地質の中に織り込まれた極めて特殊な囲入空間であり、同時に最も本来の日本らしさを凝縮し、伝承している街の一つと考えられ、独特の生態系や、縄文の太古より伝わる自然共存文化が、現代社会に必要不可欠となる環境共存手法の源として眠っており、未来社会に独自の環境学を構築し発信できる地域です。(余談ですが北欧のお伽話に出てくるムーミン谷の地図と糸魚川の大地は極めて類似した世界感があります)

そこで糸魚川地域全体の山・川・海・森・遺跡・町並み・集落・人材等の全てが広範囲に環境を学べる優れたフィールドである事に着目して、地域全体を学術体験のできるキャンパスと考えました。

同時に人々の知恵や伝承は実践から培われた優れた環境学や人文学でありながら、不思議とご本人達が気付いていない事に驚かされ、人ポテンシャルを集結できるコアとなるカレッジの開校を考ました。

そこでは私共の培ってきた造園学を伝える事で、更にその先にある『ジオパーク学』を新領域創生学として「ジオパークの街糸魚川独自の学術体系」の構築と発信から、今後の社会や環境への貢献に繋がる事を夢見て、市立大学設立を最終目標に掲げています。

従って「当カレッジでは卒業論文必修」とした特徴を打ち出し、糸魚川の保護と利用・持続可能な環境計画・環境教育の三本柱を題材に自由な視点と個々の体験から得た博物誌を綴ってもらい、1年間の集大成としてキャリアップを図り卒業して頂きます。

当然、最初は皆さん戸惑い、嫌がりますが、誰にでも自分の世界観はあり、その思想や視点を自由に書いて頂き、論文作成まで応援する事が私の仕事で、造園学はその弾み車の様な役目を果たしています。

この学術論文に仕上げてゆく過程からジオパーク学が構築され、起動しはじめ、現在迄に100件近くの環境論文を発表する事で発信を行い、独自の地域学構築の一辺が叶いはじめたと感じています。

尚、そこで副産物として特筆したい事は、理系の私が苦手とする文系や他の分野についても地域には多くの有識者が点在しており、助けて頂く中で人材発掘も適い、街全体の知的財産構築にも繋がる予想外な幸運に恵まれました。

更に想定を超えた喜びは首都圏の大学でジオパークの講義を通じ、学生さんの反応や発想から逆に多くを学べる事にも驚いており、造園学からジオパーク学への深化が新たな文化交流を起動させ、次の進化を感じている次第です。

 

今回、今迄の⒑年を振り返り、これから先の⒑年について、本書を通じより多くの方に糸魚川ジオパークカレッジを知ってもらい御参加頂ければと願い、本活動のご報告とさせて頂きます。

 

『ポーランドの魔女文化と日本の造園学の知的冒険の旅博物誌』

 

はじめに

ワルシャワ時間2010年4月10日、ポーランド共和国で飛行機事故により、大統領をはじめとする多くの要人が亡くなる大惨事が起こった。

カティンの森事件から70年、大統領をはじめとする多くの要人の方々と、祖国の為カティンの森に命を散らせた英霊達に、日本人として心より、お悔やみを申し上げ、ご冥福を祈る。

 そして親愛なるこの国は、幾度と無く不当な侵略や弾圧に、臆する事無く常に勤勉に、必ず立ち上がった国民性ゆえ、今回の深い悲しみも必ず乗り越えられると信じている。

同時に悲しみの中で、我々日本人の研究にワルシャワ大学の学生さんらは誠心誠意、最善を尽くしてくれた事に熱い感謝の意を申し上げる。

又、岡崎恒夫先生をはじめとする、ヤレック・サドフスキ氏、マルタ・グジブ女史、エミル・トルシュコフスキ氏らの活躍無くしては、本研究の成果を上げる事は決して出来なかった事も実感している。

この国の熱き心に、日本の造園学は人文環境や自然環境に対する保護と利用、持続可能な環境計画、環境教育の概念を伝え、2012年、国内に於ける大きな国際大会や、ヨーロッパ統合の一環となるの導入、又その後の発展に対して、少しでも学術の交流により寄与貢献する事で、実践的展開の礎に成らなくてはいけない事を研究者として痛感している。

どうか本文を読む日本人達よ、ズルイ隣国にウツツを抜かし、軟弱な国家基盤を積み重ねる事に甘んじる事よりも、この素晴らしきポーランド共和国に於ける自然、人文、歴史等の美しい風土を理解して頂き、日本国として様々な応援をして願いたい。

この遠きヨーロッパの一国は、目の色、髪の色、肌の色こそ違えども、騎士道と武士道を以て、最も日本に近い隣国であることを理解して頂きたい。

今回、造園学という懸け橋がポーランド魂と大和魂の融合により、双国の発展と友情を構築させる事を確信している。

もくじ

第1章・日本に於ける魔女の概念と造園学からの視点(史実検証)・・・・・1

 第2章・POLANDに於ける森と魔女文化の博物誌(心理分析)・・・・・・・5

 第3章・POLANDの魔女文化と日本の造園学による可能性(物理解析)・・・・・18 

 

磯崎 邦夫(Kunio-Isozaki)・宮 江介(Kousuke-Miya)・ヤレック サドフスキ(Yarek-Sadowski)・マルタ グジブ(Marta-Grzb)・エミル トルシュコフスキ(Emil-Truszkowski)・宮 亮介(Ryosuke-Miya )・岡崎 恒夫(Tuneo-Okazaki)

 

第一章・日本に於ける魔女の概念と造園学からの視点

第1章の1・本研究の背景と目的

 造園学に於ける一つの考え方として、物理、心理、史実の3軸評価手法を用いて環境資源の計測からpotentialの把握をする手法が有り、これは「保護と利用」「持続可能な環境計画」「環境教育」の概念に於いて活性化を実践する基礎研究の一部として位置付けられる。

この手法は、地域の人文や自然環境資源に対し、調査、計画、ランドスケープ等の基礎的な構築に対する応用性が高い反面、複雑な数式による解析手法を用いる為、専門的知識を要し、一般的には浸透しづらい事実が有る事は否めない。

本来、造園学には「遊びを真面目に科学する」目的もあり、人と自然の関わりによる快適性や、安らぎを提供し、地域の環境保全と安定した経済を両立する事で、未来に継続する目的が有る。

こうした造園学の発展として、各種のツーリズム等に一般の人が参加出来、同時にレクレーション性も有り、更にはアカデミズムや社会貢献的な成果を得られる事から、達成感や満足度を得られ、上質なレピーターの定着が地域発展にも繋がるシステムを机上の論に留まらず、実践学として構築する応用性が必要である。

従って本研究は、誰にでも分り易く親しみ易い実践型ツーリズムの形式として、提供出来る方法に就いて未知のnative-Europeの存在、つまり魔女文化に対して造園学として取り組む事からspiritualtourismの発想は生まれた。

魔女(まじょ、本来の語源は、: Witch: Sorcière: Hexe: Szarownica古英語: Haegtesse・即ち、生と死、自然と人、地上と空、超自然と文明社会、等の境に住む人の意味)に就いては、ヨーロッパ地域に於いて紀元前より人と自然の共存共栄に於ける知識や、行為の先駆者として崇められて来た存在である。

中世に於いては一時期、非人道的な行為により悲しい迫害を受けた歴史も否めないが、現在では薬草医学や森林科学の分野に於ける先駆者として、その存在価値は欧米で高く評価され、名誉回復に努めている事から、魔女達はナチュラリスト、フォレストレンジャー、ハーブセラピスト、等の各方面で環境への期待を込められて活躍をしている。

一方、近年日本では「物量」よりも「精神的な質」に対する価値観を求める様々なツーリズムが盛んに行われている傾向が有る。

日本は歴史・地形・気候・等、に於いて神秘的な地域特性が多く存在して居り、古代より自然と人の生業に神々が宿る場所として崇められてきたスピリチュアルスポットと呼ばれる場所が、人と自然の関わりとして国際的にも注目を集められている。

これら日本の風土に対して魔女文化(spiritualscience)と造園学(forestscience)の融合により、魔女の視点としての森林の多様化による活用から、recreationacademism、を兼ねたtourismとしての実践的な体験を目的に、人と自然の安らぎや、環境保全行為を造園学の見地から確立させて行く事を念頭に置いている。

従って語源として本研究で用いる「魔女」(spiritualnativenaturalistとして、人と自然の関わりに於ける森林科学の実践者)という表現は、日本国内に於いて夢のある存在として定着している表現であり、本文に於いては敢えて用いているが、決してEUROPEの地域、文化、個人に対して悪い意味合いではなく、日本人の概念として尊敬と敬愛の念で用いている言語である事を、御理解い頂きたい。

本研究では、森林の多様化に伴い、「造園学」と「魔女」の融合をテーマにスポットを当てる試みを計画しているが、悪戯に広義となる「魔女裁判」や「宗教感」に就いては極力触れず、魔女の行為のおおよそ90%を占める、ハーブ効果や人と自然との暮らし方にスポットを当て、spiritualforest・scienceを活用する事で、tourismの構築から、recreationを通じ、社会貢献性とacademismの範囲までを実体験できるプログラムを想定して、森林の多様性から「保護と利用」「持続可能な環境計画」「環境教育」の構築を願っている。

この為、敢えて狭義に確立させて行く事で、魔女の住む地域特性としての自然資源と、魔女文化としての人文環境資源を主体とした造園学との新領域創成を題材に、人と自然の関わりや地球規模の環境に就いて多方向へ発展出来る造園学の可能性を見出し、一つの手法として社会貢献の核となる事を目的として研究を進めている。

 

 

キーワード:魔女・魔女文化・白魔女・tourism・森林の多様化・持続可能な環境計画・保護と利用・環境教育・共存共     

栄・造園学・ヨーロッパ文化・日本文化・POLAND

 

第1章の2.研究の目的と手法

現在、日本国に於いてはエコツーリズム・グリーンツーリズム・プルーツーリズム・ワーキングホリデー・オートキャンプ等、数多くのツーリズムが盛んに行われ、その主体は比較的低予算で長期滞在を行い、地域の風土に対する自然環境や人文環境と親しむ傾向が強い。

これらの特徴は、レクレーション活動から実践を通して、人分環境や自然環境の恵みを受け、森林の多様性を学び、地球環境に対する正の数値を構築出来るコミュニティーの形成から、参加者にとって観光による満足度と、地域環境から得る事の出来た知識と、更には間接的、又は直接的な環境貢献活動に携わった達成感を得ることが出来るスタイルが構築されつつある。

このツーリズムスタイルが望まれる理由として一つの例を挙げれば、物質的な豊かさに価値観を求めた20世紀終盤と違い、21世紀は精神的価値観や内面的充実を求めた人々が多いといえる。

又、この価値観や傾向に就いては日本古来の精神的文化要素の回帰傾向が強い事と同時に、ヨーロッパに有る本来のネイテイブな価値観にも大変類似している事が理解出来る。

つまりヨーロッパに古くから生息する「ネイティブ・ヨーロッパ」としての「魔女文化」は、日本における自然地形から生まれた植生と、そこに育まれた文化から成り立つ地域独自の風土を生かした人と自然の共存共栄思想に合致する物と言える。

今回こうした日本に於ける、山、川、海、森、草原、月の文化、等の要素と、ヨーロッパに於ける魔女の森林セラピー等の行為を造園学の基準から融合させる事で、今迄造園学の求めて来た物理解析、心理分析、史実検証による、調査、計画、ランドスケープを構築させて、保護と利用、持続可能な環境計画、環境教育を達成するツーリズムまでを森林の多様化に伴う森林レクレーションの一環として確立したいと考えた。

つまり、本研究の最終的到達点は日本の風土と、未開の魔女文化に於けるヨーロッパ式森林セラピーを、新領域創成として構築させる事から、新たな実践型ツーリズムの確立が出来る事で、全両国の発展と森林の環境保つに繋がると考えている。

その手法としてヨーロッパに於ける代表的な地形から、自然環境や生態系の中で生まれた風土を題材に、土、水、空気、植生、動物、そして月、等をマテリアルに魔女が行う行為から、人と自然との関わりに就いて、調査研究を行い、その効果をレクレーション感覚で実践し、結果を得られれば幸いと考えている。

更に、これらの考え方に対して「自然を守りつつその恵みを受け繁栄し続けたい」「限りある資源を大切にリサイクルしながら心身ともに豊かな暮らしがしたい」「これから先の時代に健やかな社会環境を築き残して行きたい」といった希望も当然のことながら万人のほとんどが持っている事を念頭に置いている。

 

第1章の3・目的と手法に対する造園学の理念

日本の造園学の始まりは、今から約130年前、本多清六により、ドイツの経済学者P・V・ザーリッシュの森林美学(美しい森は施業を育む思想)を日本に発展させた事から始まり、日比谷公園を計画してから100年、造園学は森林科学の一分野として、森林や景勝地の保護と利用を目的として発展して来た。

その流れの中で、先ず我々の行っている造園学に就いて述べれば分類上、環境学が有り、その中に森林科学(林学)が有り、更に深く進んだ部分に人と自然の関わりとして造園学(森林風致計画学等)が位置している。

次に、造園学に於ける対象とは、自然環境と人文環境によるふたつの環境資源の融合する所に有るが、今回はヨーロッパを代表する森林と、その地に根付く魔女文化を対象としている。(表-1)

更に、本研究の視点とは、対象とする森林環境や、文化環境に就いて、マクロ、メソ、ミクロの三視点から、考査を行う。

そして、対象から得た情報を物理的解析、心理的分析、造園史実的検証の3軸解析手法による尺度を用いて考査を行う。

最後に、その成果をまとめる事で、協力国を含み行政や学会への研究報告及び提案発表から、環境的貢献活動の実践計画と成るプロトタイプの形成を行い、プロセスの構築から今後の社会に向けた新たな環境貢献の一環とする。(表-4)

表-1・ゾーニング手法の基本例

種類

範囲指定

自然資源

魔女の森と呼ばれるヨーロッパの原生林。

人文資源

ヨーロッパ地域に於ける魔女文化。

 

表-2・視点についての基準

視点

基準

マクロ

ヨーロッパにおける対象森林の風景・景観・パノラマ・仰伏角・展望・等の考査。

メソ

実際に対象地域に立ち、佇む事の出来るヒューマンスケールとしての空間考査。

ミクロ

現地に於ける食べ物や工芸品から、虫や小鳥等、人の五感で感じる事の出来る対象物の考査。

 

表-3・三軸手法に就いての一覧

手法

X

自然・文化・社会・等、物質に対する客観的な数値で表せる物理的解析手法

Y

自然、文化・社会・等に対して物理的物質以外の存在に対する人の潜在的概念、論理的思考、感覚的意識等、人の感覚による心理的分析手法

Z

本多静六博士から始まる現在までの林学者による造園学と、その実践形態の史実に基づいた合否の検証手法

 

表-4・社会貢献に於ける発表の分類

対象

行為

官庁

森林の多様化等の白書とリンクした実践的行為の位置付けに対する報告書の作成

行政

地域コミュニティーを含め地域環境資源に対して、今後の展開におけるプロロトマニュアルの構築

学会

実践を通じ、得た成果から再び、造園学としての学術観点から論文の一体系の構築

 

第1章の4・魔女(人と自然に関わる実践的な知的自然科学の先駆者)とは

()・概念

日本における一般概念として魔女とは、戦前から有る日本での造語であり、正しい訳とは言えない、正式にはWitch(英)・Sorcière(仏)・Hexe(独)・Szarownica ()Haegtesse(古英語)と呼ばれているもので、正確に語源を直訳すれば「垣根の上に住む人」が正しい。

現在に於いて認識される一般的な魔女の概念に就いて、文献等による200件の検索結果から平均した意見と、造園学に於ける科学的概念とを照らし合わせる事で判断した結果、下記の様な概念が考えられる。

昔から魔女に特別な能力があると信じられてきた理由は、ハーブ(薬草・香草)と深い関わりが有ったからと考えられる。

魔女の原型を辿って行くとヨーロッパの森に住む先住民で、薬草使いの女性に行き着く。

彼女達は魔女暦(月齢による暦)に従って、薬草を採り、森に入り、その薬草を使って、村の人々の苦しみや病を癒してきた為、現在社会では科学的な根拠を示す事が出来る行為も、中世では、あの世とこの世の境目や、目に見えない向こうの世界へ自由に行き来できると信じられていた事が伝説等から想定出来る。

事実、森と暮らし薬草に深い知識を持っていた彼女達は、現代人よりも遙かに五感の発達が鋭く、自然の声に耳を傾け、自然の変化を注意深く観察し、自然の大きな力を感じ取り、自然と共鳴出来る特別なエネルギーを、言い伝えられて来た豊富な知識と合わせて持っていたと考えられるが、科学の未発展な時代にはこれらは「魔法」という概念で片付けられていたと想定される。

又「境目に立つ人」と言う意味は、どちらの世界も理解できる視点を持つ事に成り「造園学」で言う、「人と自然」や「保護と利用」等の二つの世界の共存共栄の実践学と考えられる。

つまりこれらヨーロッパ先住民の持っている、自然を感知する能力、自然状況を診断して双方の恵みを持って共存共栄できる行動力こそが魔女のスピリチュアル・サイエンスとして造園学のフォレスト・サイエンスに必要不可欠な能力条件と考えられる。

下記表は魔女に対して日本の一般的概念と、造園学の解釈に就いての一例を記したものである。(表-5)

 

表-5・魔女の行為と造園学の解釈による一例

魔女の行為

造園学の解釈

秘薬

ハーブ等の薬草に於ける調合薬学。

ホウキ

殺菌や虫除け効果のある自然素材を使った道具。

ヨーロッパ

 

日本に類似した環境条件下にて発祥の為、日本古来の多神教に類似した古代文化。

屋根の上

 

つまり地上と空の垣根、化学が神秘とされた時代の人と天空(自然と人文・科学と迷信)の意味。

占い

自然の摂理から統計学や化学的な傾向の伝達。

若がえり

地域独自の美顔、美白などのハーブエキスセラピーによる行為。

不老長寿

 

体力増強、滋養強壮、予防医学などの森林セラピーの原型や薬草調合効果。

動物の僕

環境に敏感な動物を飼育しセンサーとして情報を集める行為。

アルピニズムに於けるピッケルの意味。

帽子

アルピニズムに於けるアルペンハットの地域変形型。

マント

アルピニズムに於ける防寒着と同議。

悪魔

当時科学で証明できない一部分に就いての解釈。

森の生活

自然科学の宝庫からマテリアルの採集、フィールドとして活用した地域と、その地のロハスな生活。

月夜の行為

季節と月齢による自然科学を用いた独自な暦

(この部分に関してはspiritualな部分が多く、現在科学では解明できていない部分も有る)

ハーブの悪用や過剰な常習者による副作用や体質から起こる症状

呪文

即効効果に対する注意の伝達やハーブ調合に就いての再現性のある伝達方法(まじない)

眠り

快眠の出来るアロマセラピー効果等

リンゴ

薬草の悪用例や、口に苦い良薬の飲ませ方

魔力

自然科学の応用に於ける時代背景的な解釈結果

(極めて発達した五感に対する解釈、及び科学では解明できない第六感の存在)

 

()・本研究の番外として考査する魔女の哲学的概念

次に、造園学的概念から敢えて一歩深く入り、魔女の倫理、哲学、宗教的な一般概念に就いて述べると、下記の様な見解が見られる。

G・ガードナーの著書(村の魔女に就いての論理的尺度を用いた報告書)によれば魔女達の基本理念はいたって単純明快なもので有り、その内容は「まず万物の迷惑にならない事を確かめ、何事も人の役に立て」のみである。

しかしこの単純な思想こそ、造園学に於ける共存共栄の理念や、その他の社会貢献的活動の原点であると考えられる。

G・ガードナーによれば魔女の行いであるWitchcraftは単純に和訳し、魔女術(ウィッチクラフト)と呼ばれる単なる「術」、つまりおまじないや呪術の総称と限定している。

対して、Wicca(キリスト教以前に存在したヨーロッパの多神教と呼ばれる)という思想に於いては、宗教であるとして、Wicca教と訳すのが望ましく、これが魔女の基本哲学の原点と考えられる。

Wicca教自体、オカルト趣味とは異なり、欧米で認められている宗教の一つであり、その信者の魔女はWitchではなくWiccanと呼ばれる。

つまり魔女達は、自然の神々の崇拝者であり、キリスト教以前の神々を崇拝するが、これらは自然科学との融合性も高い。

現代の魔女宗の復興に大きな影響を与えたG・ガードナーが近代西洋儀式魔術の要素を導入したため、儀式魔術と同じ様な物として語られる事が有るが、魔女教は宗教であり魔術とは異なり、むしろシャーマニズム神道と同列に語られるべき物である。

これ自体が日本古来の共存共栄文化に類似しており、造園学に於けるナチュラリズムと共有性を持ち、更にはボランティアの基本概念とも十分に融合出来ると考えられる。

即ち、魔女らは人と自然の共存共栄を助ける「懸け橋」の様な存在であり、地球の温暖化や森林破壊などの環境問題に対し、長い歴史の中で構築した独自の実践的環境技術を持って、現代に対処してくれる貴重な存在であると考えられる。

又、魔女の持つ森と人との共存技術の90%は現代の森林科学(フオレスト・サイエンス)で解明することが出来、残りの10%はスピリチュアル・サイエンスとして残るが、現代科学では未だ解明できない部分に就いても神秘的な部分であり、造園学の観点からはエコツーリズムや森林レクレーションとして大変魅力がある部分として考えられる。

こうした魔女達の歴史的行為は今もヨーロッパの奥地で受け継がれており、森林による恵みを利用した、美容・健康・安らぎ・快適性、保全活動、産業、等に対する価値観に就いて欧米で見直されている為、造園学に於いても活用して行きたいと考えている。

実際こうした現代の魔女に就いて、その実態を客観的な尺度から現わす為、中学校で用いる英語の文法になぞり、下記表に記す。(表-6)

 

表-6・5W4H法による客観的な魔女の評価

WHAT

 

「先ず万物の迷惑に成らないか確かめ、確認できたら如何なる事も進んで人の役に立て」と云う教えが基本

WHEN

 

紀元前より伝わる科学的技法と伝説的文化により現在に伝えられた実在の民

WHERE

 

ヨーロッパ大陸全域の森に生息、その習性はヨーロッパを東西南北と中央に分類して若干の違いがあるが基本的には同類

WHO

 

古より森に住み、自然と共存する知恵を持った、五感の発達した女性

WHY

 

人と自然の境に住み、自然界と人との共存共栄を助ける為、存在し続けた者

HOW

 

シャーマン(古代の呼び方)、魔法(中世までの呼び方)、森林レンジャー・薬草医、ハーブセラピスト・夢の有る存在・怖い存在(現在社会の認識)forest sciencespiritual science、(現在の学術上の考え方)

HOW MUCH

 

基本的に魔女は金銭概念が無く奉仕的だが、、ヨーロッパ各地の経済基準と日本に於ける社会貢献基準の貨幣価値を当てて基準とする。

HOW MANY

 

古代より中世までは何処の森にも多く生息していたが、魔女裁判以来激減し、19世紀にはヨーロッパ全土でも僅か100名程度の有名な魔女の存在記録が伝えられるのみであったが、現在は数も増え始めている

HOW LONG

 

通常15~6歳で五感、経験知、知識、体力など開花し、生涯現役のものが多いと伝えられている

 

()・魔女に就いての造園学的定義

今迄の結果から魔女の実体はヨーロッパの先住民として受け継がれた伝統的な知識と潜在能力を持ったナチュラリストである事は確実であり、風土や国柄、宗教感によっても、それぞれの発展経路は異なる様である。

魔女の定義に就いては社会学、歴史学、宗教学、超自然科学など様々な解釈がされているが、ここでは造園学の概念から森林科学としての尺度を用い、ヨーロッパに於ける先住民の持つ、伝統文化と潜在能力に就いて、人と自然の関わりに対する魔女文化を造園学との新領域創成として、アカデミズムなレクレーション計画を取り入れたツーリズムとしての融合が目的である。

勿論ここで我々が述べている魔女とは、呪術や悪事を働く特殊概念として一般的に言われる「黒魔女」では無く、ハーブセラピーや、森との共存哲学や、人と自然の関わる大切さを伝えてくれる一般的概念としての「白魔女」に限定している。

 

来魔女の大半はこの白魔女であり、これが事実上基本的に社会適合している魔女の姿勢である事は、調査結果から理解できた。

又、魔女の行う一般的行為と、これに伴う造園学の視点からの概念を述べれば、伝説や迷信等のほとんどが、その根拠に就いて、現在では科学的に解明できる自然科学である事が読み取れる。

更には、その経験から蓄積した薬草学を駆使し、自然環境共存型の社会貢献活動を提供している事が理解できる。

即ちヨーロッパの魔女は、その長い歴史の中で自然と共存し、共栄する方法を見つけだし、森と街を行き来しながら地域の暮らしに役立ってきた人達だった。

しかし、未だ自然科学が発展していない中世ヨーロッパに於いては、ある意味でグローバル化が進む事により、本来の歴史や文化により構築された自然科学は解明できない不思議な行為として都合の悪い事であり、魔女達は弾圧をされてしまった。

二十世紀に於いては、この非人道的な行為が世界的に反省され、二十一世紀には自然科学の確立として、環境学や医学の世界で再び魔女(森林セラピスト等)を科学的側面から認知し直している。

今回、森林の多様化に伴い、人と自然の共存共栄を行い、森林や林業における社会貢献として、魔女の歴史的哲学や自然科学、薬学などを用いつつ、造園学を通した形のエコツーリズムとして普及活動を行う環境計画を構築したいと考えている。(表-7)

 

表-7・魔女の特徴

分布

東欧・西欧・南欧・北欧・中欧のいずれかに分布する。

歴史

古代より地域の森に住み都会人に施しする歴史有り。

風土

地形と文化は日本に類似した自然共存型の風土。

Style

フォレストレンジャー・ハーブセラピスト・薬草医・等。

Visual

白面、銀毛、碧眼、等の特徴が多くに見られる傾向。

経済

社会貢献性は高いが経済的な優遇は無い。

国交

大使館や親善大使を通じた、社会貢献や学術的交流。

人格

質素、倹約、質実、剛健、勤勉、清廉潔白、穏か。

科学

日本に於ける森林科学や薬草学に類似した科学技術。

哲学

万物の妨げを避けて、人の役に立つ思想。

能力

自然と共存して、得ることのできる優れた知識と五感を持つ女性。

 

()spiritualscienceforestscienceの新領域創成

今迄述べて来た本研究の背景と目的、研究の目的と手法、に対する造園学の理念、造園学的概念から測る魔女の実体等から、今後のコミュニティー形成として造園学の観点からは七つの定義が望まれる。(表-8)

 

表-8魔女の定義

定義Ⅰ

古くよりヨーロッパ大陸に住む民族である事。

定義Ⅱ

伝説のある地域に住む五感の優れたナチュラリストである事。

定義Ⅲ

魔女のDNAを継承するか、又はその系統の者から一定の技術習得を受けた者で、フィールド経験がある事。

定義Ⅳ

造園学を前提としたエコツーリズムに協力できる人である事。

定義Ⅴ

自国の文化を継承して自己の研究を進める志がある事。

定義Ⅵ

両国間の文化的交流に寄与する志がある事。

定義Ⅶ

SpiritualScienceforestScienceの両立が出来る事。

続いて、造園学的なツーリズムとしての概念から、魔女の活動内容や、受け継がれて来た手法に基づく可能性を考えてみると、下記図に記す8項目が当てはまる。

この結果から魔女学による実践的なツーリズムに於いては、造園学として用いるキーワードの項目が、ヨーロッパの森林に於ける魔女の行為を中心に実践する事で、新領域としての計画化が可能に成る事が理解できる。(図-5)

更に双方の哲学的理念と環境に対する概念の融合に就いては、環境学全般としても魔女の持つポテンシャルは極めて大きく貴重である 

その代表的なものを下記に示す (表-9)

 

表-9・発想と行為に就いての実践的融合予測

造園学の発想

魔女の行為

保護と利用

魔女と共に森を歩きレクレーション的要素から学ぶエコツーリズムや保全活動の実践

持続可能な環境計画

ハーブなどの森林資源から行う「魔女の森ファクトリー」を通じた村おこしの実践活動

環境学習

魔女の森を歩くエコツーリズムを通じた実践型環境教育

Zoning

ヨーロッパと日本の森林文化に於ける理念の考査から融合による合同ランドスケープの実施

マクロ・メソ・ミクロの視点

魔女の五感やヨーロッパ的発想を基本とした美容を含む森林セラピー、環境保全、共存技術の実践調査活動

物理的解析

魔女のspiritual scienceに対する、造園学のforest scienceによる、林内における測定手法や占いの実践行為

心理的分析

ヨーロッパの自然科学や文化や哲学の概念に対する実践活動と共存文化の学習

造園史実的検証

森林美学に対す発展経路の実践確認や人と森に対する共通概念の学術的構築

 

第1章の5・まとめ

本研究の目的は人と自然界との共存共栄に就いて魔女の哲学が如何に森林の多様化に寄与貢献出来るかと言う話である。

同時に日本は複雑な地形と様々な気象変化が織りなす独自の自然形態があり、その地域の共存文化と共に育まれた、スピリチュアルスポットとなる場所が幾つも残り存在している。

この種の環境学には、森林科学分野があり、更にその深い所に造園学といった専門分野が位置付けられている。

そして更にその応用で、森林レクレーションや森林セラピーとしてスピリチュアルツーリズムの構築がある。

この事を考えれば、魔女達の行為は極めて造園学や森林科学に近い位置付けに有り、森の摂理と調和した人々に成る事と、同時に日本にこうした未開の場所や、忘れ去られた環境資源が多い事が理解できた。

この為、最も大切な事は実際に魔女の住む森を探索する事が必要不可欠となる。

当然ヨーロッパに於ける人文環境を肌で感じ、体験した上で、調査研究を行い数値化して行く事も大切で有るが、基本と成る生活フィールドとして、森林の地形、気候、植生、生態系、文化、が有り、初めて文化は発祥するもので、これは日本国内においても同類の発展経路を辿り、風土は構築されている。

従って調査には魔女の発生した森の形態が最も重要な部分と考えられる為、実際にヨーロッパの森に出掛ける事とする。(図-6)

 

 

第2章・POLANDに於ける森と魔女文化の博物誌

第2章の1・背景と目的

前章で述べた内容は全て日本国内に於いての研究である。

造園学が調査・計画・ランドスケープ等、社会貢献として人と自然の関わりに実践を求める学問である以上、科学的な現地検証をヨーロッパのフィールドで行う事は当然である。

その為、筆者らは、魔女文化の本場であるヨーロッパの中からポーランドを選んだ。

その理由に就いて下記に述べる。

・ヨーロッパ最後の原始の森が有る事。

・日本に対して一定の評価や親近感を持ってくれている事。

・精神的価値観や抒情が日本に類似している事。

・古代からの永い歴史文化を持ち、それを大切にしている事

・日本文化に堪能な研究機関と優秀なスタッフがいる事。

・意味のない近代化により国の個性が失われていない事。

・日本人に、あまり知られず、尚且つ愛されている国である事。

以上7項目がポーランドを研究の拠点とした基本的な要素である。

又、今回の現地調査に於ける目的は魔女文化を育む自然環境としての「森」と、人文環境としての「街」と「人」の実態調査から魔女文化の存在を確認する為の「知的冒険の旅博物誌」と銘打っており、当然の事ながら、ホウキに乗り、空を飛ぶ魔女を実際に発見する様なお伽話では無く、森林に於ける共存共栄の実態と、都市に於ける文化形態の実態に就いて、有りのままの調査実証から、造園学者や現地メンバーの体験を心理的な解釈の観点を用い、本章では述べて行く。

この結果、日本の造園学で定義して来た魔女とヨーロッパに於ける魔女文化の実体に対して、類似性と相違点等も明確にして、現代社会に於ける造園学からの視点で魔女の定義を明らかにする事を目的としている。

従って本章では先ず背景と目的を先に述べさせて頂いたが、次に協力してくれた人材の紹介を行い、そして旅に於ける見聞の実態に就いて紹介を行い、最後に博物誌として旅の成果をまとめた。

第2章の2・本研究に於けるPOLANDの人材

 本博物誌に於いて大切な事は、上記写真3名の多大なる活躍がポーランド国内に於ける森林、市街、大学の全てを十二分にサポートしてくれた事である。

ポーランドに於ける上記3名のメンバー全員、ワルシャワ大学日本学科の学生であり、修士課程に進学した優秀な学生であり、同時に、勤勉であり、誠実で有り、且つユーモアも有り、良きガイド、良き通訳、良き共同研究者、そして良き友人であった。

当然、空飛ぶ魔女が実在しているとは両国とも信じていないが、日本の造園学でいうナチュラリストとしての魔女文化に就いて、日本からの3名と合わせ、計6人が終日知的冒険の旅を行ったメンバーであり、同時に学術レベル、人格ともに究めて優秀な人材であった事にポーランドの質と品格の高さを、此処に記す。

第2章の3・POLAND魔女文化の森と街と人の旅博物誌

 メインストリートの間口に対してバックヤードは遙かに長く大きな面積を持っている。

このバックヤードが極めて重要であり、道から庭園、住居、畑、屋敷林、森へと続き、自然との共存から、必然的にこのスタイルと成るが、主な生活や産業を担う為に大きな面積を有している。

かつて日本に於ける埼玉県三好町にもこの様なシステムが有ったが、今は地形が残る程度であり、実際に生きたままシステムが起動しているものは、ここポーランドに来て初めて体験できた。

おもな産業は農業で有り、一部林業や、最近になりアグロツーリズム等を取り入れたシステムも流行っている。

このアグロツーリズムは本来ワルシャワ等の都市部に住む人達への「癒し」を目的としている物であり、ポーランドに於いては一般化している様だが、日本から見れば未知の魔女ツーリズムと言える。

 昨晩、ウオッカという名の魔女が現れ、ポーランド流の歓迎をしてくれた。

無事ポーランド人に成れて嬉しかったが、当然の如くウオッカの魔法に掛かってしまった、魔女への報酬として人魚姫の話を思い出す。

明朝午前9時、魔法にかかった筆者らはフラフラと彼らの後をついて行くが、昼には写真右のトレーラはレストランになり、森の魔女(地元で働く娘さん)が食事を作り、出してくれた。

地元の野菜や肉の入ったスープはとても美味で、美しい魔女が運んできてくれたせいか、一気に二日酔いから解放された魔法のスープだ。

純粋な自然から育った肉や野菜は人に治癒力を与え、キノコ等のエキスが体内の何かを中和してくれ、香辛料などが本来人間の持つ活性力を与えてくれるものと想定できる。

ポーランドではこの地に於いて当たり前の食べ物も、日本に於いては、この様な速攻性として人間を自然治癒させる食べ物は無い、しかもその食材は天然で有る。

筆者ら日本からのスタッフは魔女の魔法で、必然的に選ばれた3人の被験者に成り、魔女スープの存在が証明出来た。

 著者らはワルシャワ大学にも訪問させてもらった。

その目的は、日本の造園学テクノロジーを少しでも理解して頂き、ポーランドの繁栄の一部として、未来を担う学生さん達に少しでもお役にたちたい一心で、話をさせて頂いた。

又同時に、ポーランドの森と街、更には人とも触れ合いたく、無理を言って日本語のアンケートにも協力をしてもらった事を、この場を借りて、お礼を申し上げる。

この大学と学生さんに就いて一言でいえば「実に素晴らし若者」の一言に尽きる。

この部分に就いては、簡単ではあるが順に概要を述べる。

写真6162に就いては、教室全体の授業風景であるが、席が足りないほど学生さんが集まってくれた事に感謝する。

写真636465は、未熟ながら我々日本人が少しでも学生さんのお役にたてればと、日本の文化、そしてその技術としての造園学、更には造園学がヨーロッパに期待している事などに就いて約90分の講義をさせて頂いている風景である。

我々の伝えたかった事は第一に、今後発展を遂げて行くポーランドに対して、自然環境や人文環境の分野に於いて風土や文化を守る為の「保護と利用」の概念。

第二に、発展を遂げる中で、ポーランドの風土と文化のバランスをとりつつ発展する為の「持続可能な環境計画」の概念。

そして第三に、ポーランド国内に於ける次世代の優秀な人材を育て、継続する為の「環境教育」の概念、この3点に就いて造園学を通じ科学的手法として、僅かでもポーランドの礎になれれば良いと願ったからである。

又、その他にも造園学がなぜヨーロッパの、そしてポーランドに夢を抱いたかに就いて、日本の武士道と自然のかかわりが、ポーランドの風土に類似していることなども、出来る限り伝える様に心掛けた。

限られた時間ではあったがヤレック氏が最後にポーランド語で解説をしてくれていた。

ポーランド語の解らない著者たちには細部の内容は理解できないが、彼のサポートで大方の概要は伝えて頂いたと考えている。

更に写真6676に関しては、質疑応答やアンケートに対して真剣に答えてくれている学生さんの姿勢を是非日本に紹介したいと思い撮影させて頂いた。

今回の調査の中ではワルシャワ大学の学生さんに対して研究テーマに対する意識調査を行った。

実際彼らは日本の文化に就いて、ほとんどを理解して居り、アンケートの内容もとても真剣な姿勢で意見を述べてくれた。

この貴重なアンケートの解析に就いては、第2章の4で述べさせてもらう事とする。

この様に誠実で優秀な人材が今後社会に羽ばたく事で、ポーランドの未来が明るい事を確信出来る。

第2章の4・アンケート

アンケートの内容は以下のとおりである。(表-10)

     あなたにとって魔女とは、どの様なイメージですか?

     ポーランドにある森に就いて、どの様な役割があると考えていますか?

     ポーランドと日本で似ている事や、違うと思われる事が有れば教えて下さい?

     東京大学庭師倶楽部の研究する魔女(自然と共存して、知識や実践を基に、科学・芸術・技術などの分野に於いて、社会貢献的な活動につながりそうな人)とは、この国ではどのような人だと思いますか?

     今後、両国の交流と発展に就いて何か御意見があれば聞かせて下さい?

 

表-10アンケート結果の集計

項目

回答(男子女子・両方)

      

年をとったおばあさん・三角形の帽子をかぶっている・大きい鼻がある・黒い服を着ている・黒ネコを飼っている・魔法を使う・ホウキに乗って何処へでも行ける・日本で云う山姥に似ているPOLANDでのイメージは恐ろしい者・歯が無い恐ろしい女性のイメージだが、よく考えると魅力ある女性悪い子供をスープに入れて食べる人の為に魔法を使う良い魔女もいる普通の人より知識が深い生まれた子供は見られただけで病気に成る自然と強い関係がある人自然や薬草の知識がある人民俗の長アキラクロサワのイメージから老女で未来が解る人アメリカ映画のイメージが強い植物の知識を知っていて、いろいろな病気が治せる人不思議な力を持っている人森や村の医者自然の中に育ちその知識を日常生活に生かせる人特別な能力を持った女性魔女は山に住んでいる自然の力をもらい知識を生かせる人・意地悪な女性・魔女は森との関わりよりも宗教との関わりの強い言葉・森の支配者魔女は町外れに住んでいて少し危ない知識が多く、決して悪い人では無いですが、関わるには注意してください

      

木材を得る茸が多い・自然が豊・空気をきれいにする・観光事業が出来る・動物を守る為環境を守る為・自然の中で人が休む為・森が無くなれば環境も存在しない・歴史や文化が違い価値観も思考方法も違いますが、自然を大切にしようという考えは同じです・ポーランドではピクニックに出かけます都市に住んでいる人は動物や植物や昆虫の種類を習いますポーランドはヨーロッパでも森が多く、ヨーロッパの肺と言われています植物の源経済の発展だけではなく自然の保護を忘れてはいけません食物の源森が無ければ人も動物も生きられません森に入ると体と心が休まります都市に住んでする人の為にも必要です大切な役割は癒しの場である事日本の山林に比べポーランドの森は平地に有る分、生活との関わりが昔からあった

      

違いは山と平地似ている所は様々な霊が宿る・日本人の方が自然への関わりが深い・どちらの国も美しい景色・ポーランドには平地の景観に美しさがある・日本は環境を細かく学問にしていて、ポーランドはそういった考えを聞いて勉強に成ります両方の国は家族を大事にするポーランド人は日本人ほど働きたくない日本人に比べアナーキストです日本の文化が珍しい日本で魔女は森を守る人で、ポーランドでは森の怖い人ポーランド人はすぐ怠けるが、日本人は嫌な仕事もがんばってやる日本人は働き者で閉鎖的、ポーランド人は怠け者でオープン違うところが多いのですがお互い愛国者で国を守る為に何でも出来る残念ながら日本人もポーランド人も今は魔法の力を信じていない様です日本には山が多い事狸がいる事考え方山と森のイメージが違います日本人は他人に親切

      

昔居た様ですが今はあまり居ない様です・研究は素晴らしいし良い事ですが、変な人だと思われると残念です・日本との経済力とは差が有りここで言う魔女の様な人を導入できるかが問題です・今のポーランドではそのような人の事をあまり聞きませんが、今後ポピュラーになると思います魔法と関係がある人で、自然の力を信じている人で、その力を使える人たぶん自然医学に関する人です香料植物や「気」の様なエネルギーで人を直す医学を使う人です健康的に生きたい人魔法を信じる人大都市に住みたくない人自然と強い関係がある人田舎に住んでいて薬草や自然の医学を知っているおばあちゃん達自然の知識が深い女性宗教の指導者と科学者に反抗する人優しくて頭を使う人魔女とは昔の知識を使って説明しにくい事を分かっている人特別な目で見えない者の力を分かっている人植物の知識があり病気を治せる人年を取っていて街と自然を理解している人

      

今日の様な講義が又有ると良い・日本の専門家の話を聞くと嬉しいのでもっと機会がほしい大人は魔女を信じていません日本は豊かな国ですからポーランドを応援してくれると嬉しい日本人の留学生がたくさん来てほしいですポーランドの知識を深めてほしいですもう少し武道と造園学のお話が聞きたかった日本の研究を使って生き易い国に出来ると思います自然保護の事など日本に教えてほしい国民全員が役に立つ研究をしていると思い、交流が進めば良いと思います

アンケート成果は、今回の研究や今後の計画に大変参考となる部分であり、①~⑤の回答に就いて造園学者の観点から傾向や内容を基に類似性や相違点を下記に述べる。

先ず①に就いては魔女の持つイメージに就いて自由な形式で聞いているが、宗教感としての概念や、日本と同様にお伽話の魔女のイメージから恐ろしい者として定着している事が解った。

又同時に造園学が求める自然との共存や、その中から蓄積した能力の保持者であるという概念も存在している事が理解できる。

この為、ポーランドに於いて魔女のイメージは日本より幅広く、自由な解釈があり、一定の概念では捉え辛いが、善と悪、醜と美、迷信と科学などが入り混じり、怖いが魅力ある存在という概念にたどり着く。

次に②に於いては、ポーランドの森に就いての特色を聞いているが、驚く事に日本の林学全般を森林との共存共栄文化として、ポーランド人は論理や科学では無く、感性や理念の中に自然な形で正しい知識を持っている事が解った。

つまり日本の様に机上の論理として学ぶものでは無く、実践を通じて得た理念の様な物を強く感じる事が出来る。

更に③ではポーランドと日本の類似点や相違点に就いて自由な尺度からの回答を求めているが、物理的概念に於いて森に対しての定義が、日本の山林主体の概念に対して、平地の森林概念から文化の相違に就いて、客観的に深い理解ができている事に感心した。

同時に真理的概念に於いては、文化の違いを述べた上で、互いの国に無い物を謙虚に認め、有るものを謙遜して伝える姿勢に、日本人と同様の価値観を感じた。

特にこの項目で気になった事は、ポーランド人は個人の意思をしっかり伝えてコミュニケーションが出来、物事に集中して誠心誠意行動する為、物事を時間内に仕上げる能力と、あとは自由に過ごすという国民性から、ある意味日本人より勤勉且つ、おおらかな傾向があり、謙遜の美徳を持っている事から昔の日本人を見ている様である。

そして④の本研究に於ける該当者に対する回答は、様々な形ではあるが、大方造園学の求める魔女の概念を短時間で理解してくれている様で感心した。

主な回答は人と森の関わりに於ける人物を指摘して居り、具体的に森、薬草、経験、能力等の例を上げ、本来の語源の意味や、造園学で唱えようとしている魔女の定義を①の伝説やイメージとは別物として科学的概念から確り捉えている事が理解できた。

最後に成るが⑤では、両国間の振興に就いて尋ねてみたが、こうした学術交流には興味を持って頂いている様で、日本国に対して親近感を持ってくれている事が大変うれしい。

今述べて来た、①~⑤のアンケート結果から、「魔女」という言葉には極めて広い解釈の範囲が有り、国別の文化や宗教感、お伽話の範囲と現実社会での評価等、様々な物があると考えられる。

従って今回「造園学における魔女の定義」として語源を基に明確性を求めた事には一定の価値が認められた。

一つの例として、この国で魔女探しをする場合、「この国の魔女はどの方ですか?」と尋ねてもお伽話や迷信の人と大半が答えると想定される。

しかし、本来の語源と造園学の魔女定義に基づき「この国には森と共存共栄して、人や自然の役に立っている人はいますか?」と尋ねた場合、大半の人は沢山いると答えるであろう。

次に「その中で五感が優れた人は居ますか?」と尋ねれば幾つかの人を紹介してくれるであろう。

 

更に「その中で女性は居ますか?」と聞けば全体数の半数が該当すると考えるであろう。

そこで実際、本人に会って「あなたは魔女さんですか?」と尋ねれば「いいえ違います、私は森や自然と関わり、人の役に立つ仕事をしているだけの一般人です」と回答されるはずである。

つまり魔女という言葉の概念は国々の文化や歴史の中であまりにも広い解釈範囲を持ってしまい、真実としての存在も薄れてしまう傾向にあり、造園学に於ける魔女定義は語源に忠実なもので有るとして、ポーランドに於いて、森林との共存共栄を生業として、人と自然に役立つ事の喜びを持って、五感や身体能力が優れていて、その中の一代表者である女性と、仮に限定して説明すれば「それでしたら私です」と回答を得られると考えられ、理論上科学的に魔女に遭遇することが可能になる。

従ってポーランドの魔女さん自身、自分がポーランドに於いては一般のナチュラリストとして認識している為、日本人の定義を聞き、初めて自覚できる事で有ると考えられる。

余談として、例えばアンケート結果から全ての話を総合して、日本の一般イメージと合わせ結果、共通する魔女さんのイメージば、下記の様なキャラクターが当てはまる事になる。(図-7)

第2章の5・まとめ

この第2章に於いては「POLANDに於ける森と魔女文化の博物誌」と題して、ビャウォヴィエジャの森、ワルシャワの街、ワルシャワ大学の学生さんを対象に、実体験を続けてきたが、ポーランドには人文環境と自然環境の豊かさに共通した大きなポテンシャルが有ると感じた。

これは造園学だけに留まらず、日本の行政や企業も先ずはポーランド人の文化ポテンシャルを学ぶ事が双方発展の為、特に必要と強く感じている。

今回の調査に於いて造園学で定義する魔女文化は、ポーランドに於いて人と自然の関わりとして受け継がれている事と確信した。

又、これらに就いてポーランド人達が、ごく当たり前の日常生活に於けるナチュラリズムの一端としている事も分かり、日本人にとってみれば大変素晴らしい魔女文化である。

そして、ポーランドでは、白魔女を普通のナチュラリスト、黒魔女を一般的な魔女(迷信やお伽話の中に存在する者)と認識する傾向が多い様だった。

この辺に就いては欧米各国や東洋でも様々なイメージへの解釈が有り、時代や御国柄、又は宗教感と言った事から、それぞれのイメージキャラクターが作られているものだと考えられる。

しかし、この魔女という語源をたどれば、屋根の上に住む人、境界線に住む人、等の意味合いに成り、古代より各地に伝わる自然科学を司る森の賢者という事に成る。

何よりも大切な収穫は、ポーランドに於ける森の賢者たちは特に魔女文化の継承者である事を意識していないが、遭遇したその全てが、白魔女の継承者であった事から、ポーランドの魔女文化は他のヨーロッパ諸国に比べ自然との共存に純粋性を持った発展経路を辿って来た事に安堵している。

今回、ワルシャワ大学の学生さん達のお忙しい中、日本の造園学の為に貴重な時間を使ってくれ、又交流のチャンスを与えてくれた岡崎先生に、この場を借りて感謝の意を述べる。

又同時に、このチャンスを実践活動に導いてくれたヤレック氏、マルタ女子、エミル氏、そしてワルシャワ大学の学生さんらに感謝の意を述べたい。

 

第3章・ポーランドの魔女文化と日本の造園学による可能性

 本研究では第1章に於いて、日本に於ける魔女の概念と造園学からの視点を造園史実の考査から検証を行いって来た。

又、第2章では、造園学者の視点に留まらず、広い学術ジャンルとして日本国内からの一般学生の参加や、ワルシャワ大学に於ける大学院生の計6名のチームにより、ポーランドに於ける森と魔女文化の博物誌を自由な解釈で述べて貰い、更にワルシャワ大学の4年生によるアンケートも合わせ、魔女文化に対する心理的な分析を試みた。

そしてこの第3章では、今迄に記して来た第1章と、第2章の結果を踏まえて、ポーランドの魔女文化と日本の造園学による類似性や相違点などを考慮に入れつつ、今後の両国関に於ける人文環境や自然環境に対する発展の可能性に就いて、出来る限りの物理的解析を試み、造園学に於ける魔女の定義と実態を明らかにする事を努めた。

この結果、ポーランド国内の人、街、森に於ける目的に対して一定の成果を見出す事が出来た。

  

 表11・各章に於ける魔女文化の評価尺度軸

手法

X

日本国内での事前研究と、ポーランド現地に於ける調査結果に対する数値的な物理解析手法。(第3章)

Y

現地調査に対する、有りのままの率直な真理経過の分析。(第2章)

Z

日本国内で調べた魔女の概念と日本における造園学の融合による史実検証。(第1章)

 

表-12・ポーランドに於ける研究の視点基準

視点

基準

マクロ

主に森林地形や街に対する全体視点。

メソ

主に森林空間及び市街空間に対するヒューマンスケールとしての視点。

ミクロ

主に現地に於ける食べ物や工芸品から、虫や小鳥迄、人の五感で感じる事の出来る対象物への考査視点

 

表-13・ゾーニング手法の基本例

対象

範囲指定

ビャオブェイジャの森

ワルシャワ市街

ワルシャワ大学の学生さん

 

第3章の1・人(ミクロ)

 さて、造園学に於ける魔女の定義と、実際にポーランドに於いて体験した、魔女文化の定義を調査結果からもう一度考えてみると、下記に示す様になる。(表-14)

 

表-14魔女の定義

造園学に於ける定義

POLANDに於ける現地調査

定義Ⅰ・古くよりヨーロッパ大陸に住む民族である事

結果Ⅰ・遺跡や歴史的建造物を含み、古代及び中世に文化が有り営みが有る事が確認出来た。

定義Ⅱ・伝説のある地域に住む五感の優れたナチュラリストである事

結果Ⅱ・深く複雑な地形と豊富な生態系の有る森の確認と、多くの神話の存在と言い伝え、そしてその地に住む住民の森との共存による生活文化も確認出来た。

定義Ⅲ・魔女のDNAを継承するか、又はその系統の者から一定の技術習得を受けた者で、フィールド経験がある事

結果Ⅲ・老若男女問わず、当たり前の様に自然との共存技術の伝承が行われている。

定義Ⅳ・造園学を前提としたエコツーリズムに協力できる人である事

結果Ⅳ・ワルシャワ大学の知識層に関しては、本計画の意図や造園学の方向性を理解し、今後日本との学術交流の協力を確認出来るが、その他、村や森の住民に関しては第1回目の調査では不明。

定義Ⅴ・自国の文化を継承して自己の研究を進める志がある事

結果Ⅴ・同上

定義Ⅵ・両国間の文化的交流に寄与する志がある事

結果Ⅵ・同上

定義Ⅶ・SpiritualScienceforestScienceの両立が出来る事

結果Ⅶ・同上

ここで大切な事は、日本に於いてスピリチュアルな魔女という概念は、ここポーランドに於いてごく一般的なナチュラリズムである事も多々感じられた。

逆を言えばポーランドの森に暮らすナチュラリスト達は、全て日本に於いて魔女文化の継承者という事に成る。

例を挙げれば、今回のチームリーダーであるヤレック氏は、森の中で全ての情報をインプットして迷う事無く目的地に我々を運び、一般道と同じ速度で林内を歩ける事も、又科学的な側面として5.5の視力やキノコの毒を舌先で判別できる味覚能力等の優れた行為は、日本に於いては正に魔女修行をした森の賢者として認識が出来るが、彼にとっては当たり前の森林生活である。

又、森林官の持つ知識は、ハーブや薬草知識、気象変化、森林の健康度等、電子的センサーを一切使わず、森の中に有る物から判別して行く手法等は日本に於いて魔女データの蓄積と称えられるが、彼にとっては当たり前の日常ガイド活動に付随している。

そして、二日酔いを一瞬に直す魔法のスープを作ってくれた(おそらく野菜や肉は土からの恵みを十分に含んでおり、キノコのエキスによる中和と香辛料の成分による活性と想定される)その調合技術には脱帽する。

これは森に住む娘さん自体が日本人にとって魔女そのものであり、偶然にも被験者となった3人の同意見であるが、彼女自身レストランで働く一般的な娘さんなのであろう。

この地に就いての食文化に於いては、民宿のおばさんにも言える事で、ハーブティーや自然食材を採集し、調理してくれることや、森林の細部にわたる情報を提供し、更に希望者は体験もできるスタイルこそ日本では魔女ツーリズムとして認識されるが、彼女にしてみればアグロツーリズムの一環である。

更に驚く事は動物と話の出来る馬車曳きのおじさんの存在であり、日本ではありえないスピリチュアルな世界が存在した事に日本人は絶賛するであろうが、馬車曳きのおじさんにしてみれば当たり前の日常生活である。

しかしこれらは全て実在するものであり、ポーランドのナチュラリスト達は、日本にとって魔女文化の継承者たちの宝庫である。

つまり造園学という科学の観点からポーランドの森には魔女文化が有り、その継承者たちは今もいると定義できる。

そして同時に、森の住民にとって別に普通の生活範囲である事の発見が驚きである。

即ち日本人にとって魔女の存在は、ポーランド人にとって自然との共存生活の一部として伝承されてきた白魔女の文化としてとらえる事が正しいと考えられる。

この文化の類似性と相違点に関して極端な話をすれば、日本人が魔女と絶賛する人物達を、ポーランド人は「このような人で良いならばどこの森にもいますよ」と当たり前に答えるだろう。

又逆の立場から考えた場合、ポーランド人が「この人は特別優秀なナチュラリストですよ」と紹介されれば、特にすごい魔女に遭遇したことになる。

要はある国の海岸全体がダイヤモンドの粒で出来ていれば、その希少価値に人々は気が付かず、逆にダイヤモンドの無い国にしてみれば、一粒の価値は計り知れない事に成る。

どちらの尺度から見ても、ポーランドは魔女文化大国である事には間違えが無いと考えられる。

更に嬉しい事は、遭遇した魔女文化継承者たち全て良い人達で、日本で言う白魔女だった事は、一重にポーランドという国の人柄という宝だと、認識している。

この白魔女をどのような定義で造園学に於ける科学的な概念として両国にとって社会貢献性や学術的な面から発展できるか、筆者らは次の様に考える。

先ず魔女の本質に就いては両国に於いて共通した価値観が持てると考えられる。

次に言葉に対して認識の尺度が多少違う為、実際魔女と呼ばれた人は、それが日本で人気者であっても、歴史や文化の違いから多少抵抗が有ると考えられる。

従って後は言語上の問題に限定されてくるが、「魔女文化の継承者」=「ポーランドの森に於ける五感の優れた自然科学的知識の豊富な実践の出来るナチュラリスト」としての構図を造園学の観点とポーランドの文化から「白魔女の文化を継承した人」として定義して、定着させる事が大切だと考えている。

 次に日本で言われている魔女のスピリチュアル性に就いて、実際にポーランドの地に立ち、森を体験した経験から、その概要に就いて述べて行く。

各項目の細部の説明に就いては下記表を参照して頂きたい。(表-15)

 

表-15・森に於ける魔女の行為と造園学の解釈

魔女の行為

造園学の解釈

POLANDの森はとても深く、平地ながら多種多様な森林要素を持っている。林床は一週間でその姿を変える豊かな植生からも、秘薬のマテリアルが豊富な事が伺える。ハーブなどの薬草に於ける調合薬学とその活用も、病院設備の少ないこの地では必要なことである。

ホウキ

基本的には白樺の小枝でつくるが、殺菌や虫よけ効果のある自然素材材を使った道具として、地域ごとに必要に応じたマテリアルを混ぜて使ったと想定される。

占い

 

実際に電子機器等の人工物を使わず、自然界の植生などから気象状況や森の健康度を図っている事自体、科学的根拠の有る占いと言える。

食文化

 

実際筆者ら3名は被験者となり二日酔いになってみたが、地元のスープにより一度に回復した。

実際に肉や野菜も無添加の素材と思われるが、キノコやハーブを必要に於いて活用していると考えられる。

不老長寿

 

基本的にポーランド人は美男美女であるが、森の風土と接する事で、脳の活性や体力増強、更には滋養強壮、予防医学などのセラピー効果と、平行バランスが鍛えられ、若々しく立ち姿の美しい人間になれる。

動物の僕

実際ウマと話をする馬車曳きの存在と、森に住む動物の多種から、自然の変化に敏感な動物を環境センサーとして共存していたと考えられる。

湿地帯の多い森林に於いて、安全性確保の為、アルピニズムに於けるピッケルの意味

帽子

アルピニズムに於けるアルペンハットの地域変形型

マント

ポーランドの気候は朝昼夜で変化が激しい為、アルピニズムに於ける防寒着として活用した。

森の生活

森自体質量ともに自然科学の宝庫であり、マテリアルの採集と活用のフィールドとして、ロハスな生活自体を、魔女文化の継承と考えられる。

魔女

ポーランドに於いて森の生活そのものがspiritualforest-scienceであり、その道の名人を森の賢者と称え、その中で最も日本人に人気の有るもが魔女という代表的なキャラクターである。

白魔女

基本的に現在ポーランドの森で生活を営む人のほとんどが善人で有り、白魔女と言える。歴史的背景や現在の森林文化の保存状態から、おそらく太古の昔から同じであると想定している。

黒魔女

中には知識や能力を悪用した実例もあると想定されるが、当時科学で証明できない一部分に就いての解釈として、語られるケースもある。

月夜の行為

先ずポーランド人は夜目が効く、更にヨーロッパは白夜の地域が多い事から森に慣れた者は、引力の変化が起こる満月の晩は森の生命力が増強する時で有り、行動範囲と考えられる。次にこれだけ植生が豊富で変化に富んだ森で有れば、nicheの変化も激しく1年間を12等分としても不便である、そこで森と共存する為には更に細かく24等分とする必要性が有ったと想定される。更に森の奥にあるパワースポットとされたストーンサークルは、Copernicusの広場に有る天体図と大変類似している事から、地上に於ける春夏秋冬の不規則な変化を基準にするより、不変の天体から時間軸を割り出す事や、周期を見るという科学的概念が存在して居り、月を基準とした魔法陣として活用していたものと考えられる。

リンゴ

POLANDのリンゴは安く、美味しく、豊富である。日本には「良薬口に苦し」という言葉が有るが、子供などに薬を飲ませる場合等にも活用したものと考えられる。

魔力

今まで述べて来た森の風土と、そこに暮らす人々の文化。言い伝えから培った経験値を裏付ける科学。五感の極めて優れた人種。これらすべてが日本に於いて太古に失われた本来の人間の備えるべき能力で有り、いつしか魔力と呼ばれる様に成ったと考えられる。

即ち魔女とはポーランドの森林に於けるナチュラリスト達の一つの代表的なキャラクターで有り、その基本は魔女文化とする森林の共存共栄の自然科学の実践行為が基本となり、そのルーツはポーランドの森と人の歴史である事が理解できた。

第3章の2・街(メソ)

 街に於ける魔女の実態を語る前に先ず、ワルシャワの街に就いて簡単に概要を述べる。

ワルシャワはポーランドの首都であり、下記表からも人口の集中した大都市である事がうかがえる。

又に下記図表のクラフクは古都で有り、日本でいえば東京と京都に似ている関係を持っている。

ワルシャワに於いては至る所に公園や文化施設が有り、知的財産の宝庫と言える。

街はワルシャワ大学の有る旧市街を中心にビスワ川に沿って市街地が広がり、やがて郊外に続き、公的な交通手段として路面電車、地下鉄、鉄道、バスなどが利用でき、古き良き時代と近代の利便性が同居する大変美しい街である。

又、生活に対する法律の規制は日本ほど厳しくない分、市民の道徳理念が確りしていて、かつての日本の様で、とても微笑ましい。

下記図の中の小さな青い丸印は筆者らが滞在したホテル、大きな丸印は案内をしてもらったワルシャワの街、その中の小さな丸印は、ワルシャワ大学や旧市街が位置する所で有る。

そして、矢印はビャウォヴィエジャの森に向かう道と、ワルシャワ市街への帰路に就いて記している。(図-10・表-16)

 

表-16POLANDの都市概要

 

都市

人口

1

ワルシャワ (Warszawa)

マゾフシェ県

1 710 055

2

クラクフ (Kraków)

マウォポルスカ県

754 624

3

ウッチ (Łódź)

ウッチ県

747 152

4

ヴロツワフ (Wrocław)

ドルヌィ・シロンスク県

633,000

5

ポズナン (Poznań)

ヴィエルコポルスカ県

556 022

さて、街中で聞く魔女に就いての話であるが、正直な処、良きにつけ、悪しきにつけ、あまり盛んに語られていない実情が有り、拍子抜けしたが、ポーランド人にとって日本人の魔女イズムは、一般的なナチュラリズムとして認識されている訳で、宝庫である以上、特に取り立てて騒ぐ必要も無い事に納得した。

しかしその中でもバスの中からいくつかの看板やお土産物店のキャラクターとして魔女を見つける事が出来たのでその傾向に就いて述べる。

村の魔女は怖い顔で年老いたキャラクターをモチーフにする事に対して、街の魔女は可愛いキャラクターをモチーフにする特徴がうかがえる。

この傾向を考えた場合、近代都市になればなるほど魔女のイメージはダークヒロインから正統派のヒロインに代わる傾向がうかがえる。

その理由に就いては、本来魔女は村の賢者として、地域貢献をしていたが、中世以降から近世までの間に、その科学的根拠が理解されず、結果として「異端成る者」として、ヨーロッパ全域でダークヒロインとして定着していったものと思われる。

しかし近年において型にはまらない国としてのアメリカが、正統派のヒロインとしてリモデルを作り上げ、日本は敗戦後アメリカからの影響文化として、更に発展した夢の有るヒロインと成り、人気を得ているものと想定できる。

そして科学が進み、魔女の行為も本来のナチュラリズムとして環境貢献と成る自然科学的な要素を持った先駆者として、地位を復活させる兆しが世界的に都市部を中心として広がる傾向に有ると言える。

つまり古代に於いて信仰の対象や、森の賢者として人々を助けた魔女も、中世、近世に於いて、まだ科学の発展が乏しい時代では魔女の行為が不思議なものであり、異端とされた時代であったが、近代に於いて科学が発展するにつれ、そのポテンシャルの高さが世界的に再評価されて来たと考えられる。

事実ポーランドの都市部に於いて魔女に可愛いキャラクターが多い事もこうした近代的な情報社会が発展して来ている証拠である。

かの有名なコペルニクスも「地球が丸い」と言った時は数多い批判の対象になったと考えられるが、科学や文化の理解から現在ではポーランドの英雄として旧市街に広場も作られ親しまれている。

又、街の魔女キャラクターに就いても帽子に小さなコインが付いていて、エミル氏の話では、ポーランドでは小さなコインを拾うと幸せになるという風習が有るらしく、街では魔女が幸せキャラクターとしても認知されてきていると考えられる。

こうした魔女文化はポーランドに有る、貴重な自然共存文化の要に成るものであり、ポーランドの素敵な自然との共存共栄文化遺産の一部として是非、世界に伝えてほしい。

ちなみに、ポーランドでも魔女は必ずホウキに乗っているが、ワルシャワ市街の魔女の看板はホウキでは無く、近代的な掃除機の宣伝をする魔女であった。

第3章の3・森(マクロ)

 ポーランドの首都ワルシャワより200mほど北東へ進むとビャウォヴィエジャの森が姿を現す。

その広さは日本の森の比では無い、更に奥深くはベラルーシまで続く森で有る。

日本の森が深い山林に囲まれているのに対して、ポーランドの森は標高100mほどの平坦な土地に何処までも果てしなく続くといった感じがするが、それはマクロ視点の話であり、実際に森林空間に入りメソ視点で観察すると、丘有り、谷あり、水源有りと地形は多種多様で有り、複雑に入り組んでいる。

さらに一歩進み、ミクロ視点を凝らせば、森林に於ける動植物の豊富さが一目で理解できる。

博物館の専門的な説明も3名通訳によれば、この森には代表的な動物のほか、野生のニワトリや、5分間捕食しないだけで死んでしまう小さなネズミも生息しているらしい。

これら全て、森の生態系として特色あるもので、景観の美しさだけでは無く、森林科学の観点からも大変希少なものであり、まして人との関わりが独自の文化を形成している事自体、造園学者としては大変参考に成る話であった。

この森の概要に就いて少し語れば、ポーランドでは最も古い国立公園で1000年前にポーランドとヨーロッパの低地部の大部分を覆っていた巨大な原生林の残された最後の断片である。

公園内の森林構成は、広葉樹種が2/3を占め、針葉樹種が1/3の割合しかないため、現代のヨーロッパの森林とはかなりかけ離れており、非常に豊かな植物世界(1000種以上の維管束植物、200種の蘚苔類、ほぼ300種の地衣類)と動物世界(8500種の昆虫、250種の鳥類、300種の哺乳類)が共存している。

中には、ポーランドの努力によって絶滅を免れたヨーロッパ最大の哺乳類、ジュブル(ヨーロッパバイソン)も生息し、20年以上の繁殖飼育の後、1952年に最初のジュブルが再び森に放たれた。
現在ビャウォヴィエジャ国立公園は、世界生物圏保護区(MAB計画)の地位を与えられ、ポーランドの保全地域の一つとして、ベラルーシの〈ビェラヴィエシュスカヤ原生林〉国立公園とともに、世界に7つ、ヨーロッパに3つある、国境をまたいだユネスコ世界自然・文化遺産の一つを形成している。

下記図表はワルシャワとビャウォヴィエジャの位置関係、及び概要を示している。(図-11・表-17)

 

英名

Belovezhskaya Pushcha / Białowieża Forest

仏名

Fôret Belovezhskaya Pushcha / Forêt de Białowieża

面積

98,108ha

登録区分

自然遺産

登録基準

自然遺産(7)

登録年

1979

拡張年

1992 

IUCN分類

II

備考

 自然環境に準じ地域独自の人文環境が存在

公式サイト

ユネスコ本部(英語)

表-17・ビャウォヴィエジャの概要

 

 日本の造園学という観点で考えた場合、まず先地形が有り、そこに生態系が生れ、そして文化が育まれると考えるが、正にこの森はお手本になる小さな惑星の様な存在であり、この森の惑星に於ける文化の一部として、魔女文化が構築される源を垣間見る事が出来たと言える。

第3章の4・まとめ

 本文もいよいよ終盤を迎えるが、ポーランドの魔女に就いて調査事実から客観的に定義を行いたいと考え、日本に於ける中学英語の教科書に従い5W4H法を用いて、以下表に記す。(表-18)

 

表-18・5W4H法による客観的な魔女の評価

WHAT

 

G・ガードナーの魔女教説明で「先ず万物の迷惑に成らないか確かめ、確認できたら如何なる事も進んで人の役に立て」と云う教えがあり、ポーランドの人の森に対する保護や活用方法は全ての生命に対していたわりの気持ちが有り、文化として類似している事を記す。

WHEN

 

紀元前より伝わる科学的技法は現在の科学と比べて何も損傷が無く、むしろ環境貢献の発信地として絶賛出来るが、同時に一般的日常概念として捉えられており、日本の様な伝説的文化として伝えられた実在の民と絶際されていない。

WHERE

 

POLANDの森に存在する共存文化であり、生態系や風土により、その特色も想定されるが、日本での魔女文化の伝承者という概念から、基本的には同議と考えられる。

WHO

 

古より森に住み、自然と共存する知恵を経験値として歴史の中に積み重ね、決して教科書には出てこない実践活動が出来、更に優れた五感をもった人々で有り、その代表的な一キャラクターとして魔女の存在が有る。

WHY

 

地球に有る自然の摂理として、その中の一種としてヒトが森と共存する為、得る事が出来た自然的な能力や、知力の積み重ねとして出来た文化である。

HOW

 

古代ではシャーマンと崇められ、中世では魔法と呼ばれ、現在においては森林レンジャー・薬草医、ハーブセラピスト・更には、馬車曳き、やレストランや、アグロツーリズムとして働く、夢の有る森の人で、現在社会の認識からナチュラリストとして考えられ、学術上の考え方として、forest sciencespiritual science、が当てはまる存在。

HOW MUCH

 

基本的にポーランド人は金銭概念より奉仕的価値や、精神的価値で人生を測る様であり、

実際世界的希少価値が有っても特にビジネス感覚は強くなく、文化的国家貢献という概念が当てはまると考えられる。

HOW MANY

 

世界中から、原始の森自体が減少している事実から、ポーランドでも実際に森に住み、魔女文化を継承するnaturalistの数も年々減っていると想定され、古代より中世までは何処の森にも多く居た、魔女文化の継承者は環境保全や森林セラピーの観点から今後は貴重な存在として認識される。

HOW LONG

 

通常15~6歳までに、口伝や体験から五感、経験知、知識、体力などを身につけ、その後実践活動として開花し、身につけた能力は生涯現役のものが多いようである。

以上がポーランドに於ける魔女文化に就いての客観的な定義の概念であるが、さらに一歩深く、環境貢献に対する理念を考えてみた場合、下記の事が言える。(表-19)

 

表-19・社会貢献に於ける概念

対象

行為

保護と利用

自然の摂理を理解して共存する哲学こそが環境保全の基本となる。

持続可能な環境計画

アグロツーリズムなどの観光から白樺ジュースや魔女のホウキ産業まで、又森林セラピーやカルチャーに到るまで、森を大切にする利用方法で地域経済の活性も十分可能になる。

環境教育

伝承される手法や実践行為そのものが、小学生の自然教室から大学レベルの研究まで可能。

更にこの魔女文化の継承者に対して、キャラクターとしての特徴は古くから森と暮らす人というキーワードが当てはまるが細部は下記にしるす。(表-20)

 

表-20・魔女(魔女文化)の特徴

分布

POLAND地域の歴史と森の深い所に分布する。

歴史

古代より地域の森に住み人に施しをする歴史有り。

風土

大地の森と共存する文化。

Style

フォレストレンジャー・ハーブセラピスト・薬草医・等、ありとあらゆる森と共存する職種に就き、若い娘から初老の男性まで多種多様。

Visual

基本的に美男美女が多くブルー・ブルーグレー・グリーンの瞳を持つ。

経済

社会貢献性の高い職種であるが経済的な優遇は無い。

国交

基本的に親近感のある国交の深い国であり、魔女研究に就いてはワルシャワ大学に於ける有志スタッフと東京大学庭師倶楽部により文化交流に発展性がある。

人格

質素、倹約、質実、剛健、勤勉、清廉潔白、穏かな人格。

科学

日本に於ける森林科学や薬草学に類似した科学技術。

哲学

万物の妨げを避けて、人の役に立つ思想。

能力

自然と共存する中で得た優れた知識と行動力と五感を持つ人々。

実際、日本に於いて魔女文化の可能性は多種多様で有り、身体に於ける美容や健康のセラピー、心理的な癒しを求める森林セラピー、専門的な森林学や学術体系を究める研究、森林ライフを充実させる為のアドベンチャーツーリズム、ハーブティーや森の恵みによる料理等を楽しむカルチャー、森林保全活動と多種多様に魔女ツーリズムの期待が出来る。

21世紀に入り、地球規模の環境が望まれる今日、ポーランドの魔女文化は現代人の求める最先端環境技術に対して、科学や哲学分野に於いて真の価値を持ち、未知なるポテンシャルを秘めている事が、今回の調査で明らかになった。

第3章の4・おわりに

 今まで述べた内容から、ポーランドに於ける魔女は実在し、日本に於ける概念として、存在の確認が出来た。

しかしポーランドに於いてその文化と継承者の生活は、森に於ける優れた能力を持つ者の日常的な生活で有り、突出して非日常的でない事も特徴である。

又、同時に両国間の歴史に於いて共通するストーンサークルの存在に就いては、パワースポットとして共通の歴史的概念としての認識が有り、日本に於ける「卑弥呼」の様なシャーマニズムとの類似も十分考えられる。

特に自然界と同居する古代人に対して、何かの理由で聖なる場所と定める必要が有り、その配石原則は偶然にも、ワルシャワ市街に造られたコペルニクスの広場に有る天体図と類似し手おり、念のため日本に於ける類似物を探した結果、竜安寺石庭に於ける石組の配置理論を科学的な解析をした数値に当てはまる事が明らかになった。

この事実から両国間には古代、中世、近代まで異なる文化の発展経路が、自然界との共存という観点から類似していた事も想定できる。

 つまり20世紀における経済や科学の急激な発展により、日本に於ける縄文人の文化や、世界各国に住む先住民による自然との共存共栄技術や、優れた5感と、更には第6感の存在に就いても失われてしまった大切な時間軸が、奇跡的にもヨーロッパの一部に於いては古代から伝わる森との共存共栄文化として確りと育まれ、残っている事が理解できる。

この、森との共存共栄文化は魔女文化の存在として否定出来ない事から、現代社会に必要とされる環境貢献技術として、現在もポーランドに於いては魔女文化の継承者が、ごく自然な形で多数存在する事も分かった。

この存在に就いての現状は、個人差や、実社会に於ける潜在能力の必要度により各自違うものであるが、その多くは社会貢献や、日常生活を通じ、何かしら個々の得意とする分野で社会の一員として役立っている。

つまり魔女、或いは魔女文化の継承者は、ポーランドの国内に当たり前に存在し、逆に日本に於いては近代化の中、植芝盛平(合気道の達人)の様な自然の気を取り入れた達人がいなくなっていると言える。

今回日本人に分かりやすい一例として、日本で親しまれるポーランドのスポーツ選手を男女各1名ずつ事例として紹介する。

写真83にある左の選手はAdam Małysz1977123生まれ、ジャンプ選手、ポーランドヴィスワ出身、身長169cm、ワールドカップ優勝回数38回、他の表彰台40回、表彰台獲得数78回の選手である。

写真84に有る右の選手はAgnieszka Bednarek, 1986220 生まれ、バレーボール選手、ポーランドのヴィエルコポルスカ県出身。身長185cm、スパイク最高到達点309cm、ブロック最高到達点292cm(写真-83・84)

 オリンピックという世界的な舞台に対して、この二人のスポーツ選手を考えてみた場合、特に人並み外れた身体数値を持っているという事では無いく、そして国としての総人口も約:37,000,000人と決して分母が大きいわけでもなく、更に国家としてスポーツ選手に対して突出した予算をかけている事もないが、それでも世界に通用する上位ランキングの名選手を輩出できる国力こそ、ポーランドと言う国の国民個人の潜在能力の高さを感じる。

同時にこの両者は共にワルシャワやクラフクの様な街生まれの街育ちというよりも、自然の豊富な地域出身であることがわかる。

又、この様にポーランドには世界的に優れた人間がスポーツだけでは無く、科学、芸術、文化などの各方面に於いても、都市や地方関係なく突出している部分が多々有る事を記しておく。

こうした事からも、国の自然や風土が文化を育み人を育て、その遺伝子や技術が受け継がれ、潜在能力や知識となり、繰り返される事の歴史が途切れなんかったポーランドに於いては、こうした優れた人材が、常に数多く現れるものと考えられる。

どうか親愛なるポーランド人達は、この事を誇りに思ってほしい。

そしてこれらは日本の造園学の観点からも、ポーランドの国における自然界全体の地形があり、生態系が生まれ、文化が育まれ、その中で人が育つという定義から様々な継承のスタイルを持ち、同時に老若男女の継承者が普通に生活している事が分かった。

その中で日本人にとって夢の有る一代表として魔女というキャラクターが、カテゴリーとして有ると考えているが、悪戯にキャラクターを優先させ、発展させるつもりは当研究目的には無い。

その大きな理由は、世界に残された森林共存の稀少文化を世界的な無形希少遺産として保護・保全・発展する概念から守る必要が有り、その上で両国間に於いて有意義な持続可能な環境計画を推進し、結果として次世代の環境教育に繋げる学術性も担わなくてはいけない。

むしろ今後の行為として大切な事は、ポーランドという国の自然環境や人文環境を理解し、その中でポーランドの森林科学を選考して行き、更にその先に有る魔女文化全体から継承し活用させてもらい、両国の発展に寄与貢献する事が、真の造園学の有り方であると考える。

従って「魔女」単体はこうしたナチュラリズムとしての組織形成の中から、代表的な環境親善大使的な役割を担う事が造園学としても望ましいスタイルである。

余談ではあるが、偶然にも本研究に着手する際、学術的概念を大衆的な理解として導く目的の為、悪戯に書いた小説『そして再び魔女はcovzerの森に降りた』は、日本が古き良き時代の有終の美を飾る1970年初頭に筆者をタイムスリップさせ、小学生の目線から魔女を語っているが、偶然理想とした魔女のイメージが、ポーランドの人文環境や自然環境を始め、魔女文化と合致した事をここに特筆したい、機会が有ったら素人小説ではあるが是非参照して頂きたい。

 今回、日本の造園学としては異端な発想であるが、第一章を造園史実から机上の論として構築させ、第二章で実践的な現地調査による体験を求め、率直な心理解析を行った。

そして第三章で双方の理念を客観的な解析とした行為は、同時に究めて献身的な挑戦であり、その手ごたえを確実に感じている事を日本側のスタッフとして自負している。

又同時に、この知的冒険の旅博物誌に就いては、ポーランド側の協力なくしては、成功は無かったと言えるが、仕事の領域を超え、友情として協力をしてくれた岡崎先生、ヤレック氏・マルタ女史、エミル氏、そしてワルシャワ大学の皆様、ポーランド国民の方々、最後に日本環境財団の皆様に、この場を借り謝辞を申し上げる。

 

 2010年4月X日・知的冒険の旅より帰国

 

 

森の賢者「Czarownica」に就いて定義の考察

 

§1・はじめに

 Czarownicaとはポーランド語で魔女と訳されますが、魔女本来の意味は「人と自然や、街と森、を行き来し、自然力を人に伝える賢者」と云う意味です。

従って「Czarownica」=「森の賢者」という解釈が本来正しい解釈です。 

では何故、「森の賢者」が「魔女」に成ったか、その起源を辿ればキリスト教の普及によるもので、当時は自然科学を神秘とした時代の名残の様です。

現在では、ファッションブランドのネーミングから物語のキャラ迄、様々な形で魔女と云う言葉が乱立し、色々な意味に解釈され、夢のある不思議な存在として大衆に認識されてしまっている事から、一つの文化形態として捉えていますが、造園学の観点に於いては本来の意味合いとしてネイティブヨーロッパの自然共存文化と、その手法のあり方として確り捉えて行きたいと考えています。

2011年は森林元年を迎え、地球規模で自然環境と文明の共存が世界的なテーマとして発信していますが、数年前より東京大学庭師倶楽部とワルシャワ大学日本文化科の有志では、自然科学と社会学の観点から本来の意味で有る「森の賢者」として、ポーランドに有るヨーロッパ最後の原生林、ビャウオベイジャの森周辺に伝わる古代からのヨーロッパ先住民の科学と文化をCzarownicaとして科学的実証の基で保全と研究を試みてきました。

我々が推進する造園学の目的とは環境学全般に於ける「森林の多様性」や「遺伝子の多様化」に伴う「人と自然の関わり」や「自然力との共存共栄」に対して、自然科学や社会科学の実践化に有ります。

その為に、私たちを取り巻く地球環境を「自然と人文」「正の数値と負の数値」或いは「ソフトとハード」の両面から物理解析・心理分析・史実解析等を駆使し、調査・計画・ランドスケープ等の工程へ進める事で、地域独自の環境ポテンシャルを保全活用出来、「保護と利用」「持続可能な環境計画」「環境教育」を構築します。

 そこでCzarownicaの持つ文化である「THERAPY」・「AROMA」・「RANGER」等の要素を研究して保全と同時に取り入れる事で、活用から地球規模の環境に寄与貢献したいと考えています。

 

§2・背景と目的

魔女(まじょ、本来の語源は、: Witch: Sorcière: Hexe: Czarownica古英語: Haegtesse・即ち、生と死、自然と人、地上と空、超自然と文明社会、等の境に住む人の意味)に就いては、ヨーロッパ地域に於いて紀元前より人と自然の共存共栄に於ける知識や、自然科学的行為の先駆者として「森の賢者」と云う認識で崇められて来た存在です。 

未だ科学の見発展だった中世に於いては一時期、非人道的な行為により悲しい迫害を受けた歴史も否めませんが、現在では薬草医学や森林科学の分野に於ける先駆者として、その存在価値は欧米で高く評価され、名誉回復に努めている事から、魔女達はナチュラリスト、フォレストレンジャー、ハーブセラピスト、等の各方面で環境への期待を込められて活躍をしています。

一方、近年の日本では「物量」よりも「精神的な質」に対する価値観を求める様々なツーリズムが盛んに行われている傾向が多く見られ、歴史・地形・気候・等、に於いて神秘的な地域特性が多く存在して居り、古代より自然と人の生業に神々が宿る場所として崇められてきたスピリチュアルスポットと呼ばれる場所が大変多く、人と自然の関わりとして国際的にも注目を集められています。

本研究計画は、これら日本の風土に対してCzarownicaの文化(spiritualscience)と造園学(forestscience)の融合により、recreationacademism、を兼ねたtourismとして、森林の多様化による活用から実践的な体験を目的に、人と自然の安らぎや環境保全行為をCzarownicaの手法を用いて造園学の見地から確立させて行く事を念頭に置いています。

又同時に現在では人と自然の関わりや自然力との共存共栄をテーマにした「ジオパーク自然力の家Czarownica」や香水・蠟燭・石鹸等のCzarownicaブランドとしてオーガニックアイテムの開発研究も進めています。

従って語源として本研究で用いるCzarownicaとは森の賢者としてのハーブセラピスト、ナチュラリスト、フォレストレンジャーであり・・・「魔女」≠(spiritualnativenaturalist)×(人と自然の関わりに於ける森林科学の実践者)=「Czarownica」・・・という概念で表現して居りますが、これは日本国内に於いて夢のある存在として定着している表現の活用であり、本文に於いては敢えて用いますが、決してEUROPEの地域、文化、個人に対して悪い意味合いではなく、日本人の概念からポーランド共和国に対する親愛と尊敬と敬愛の念で用いている事を、どうか御理解い願います。

 

§3・森の賢者(魔女・Czarownica)の語源

 魔女と云う言葉の語源に就いて代表的な物を考えてみれば、英語ではWitchドイツ語では、Hexeと云い、Witchの語源は、wise womanから来ているといわれています。 

つまり「賢い女性」という意味ですが、そもそも魔女というのは、薬草の知識に長けた女性のことですから、この語源は当然の事です。

面白いのはHexeの語源の方で、これは「垣根の上に立って、隣を眺める」というような意味がある様ですが、医療の未発展であった中世に於いては、村の魔女と云う呼ばれ方で村の医者や産婆等、生と死の世界を行き来する立場に関わっていた事から「垣根を飛び越える」という飛行のイメージや、「垣根の上に居る」という境界線を跨いだ存在、というようなイメージが発生したようです。

この意味を考えた場合「文明と自然」や「街と森」の両方を行き来できる存在と云う事が解り、この二つの語源からもCzarownica本来の役割に対す目明確性を表している事が理解出来ます。

これらは事実と照らし合わせた魔女のイメージですが、これが飛躍して魔女が飛行する、箒云々の話となり、御伽噺等の所謂伝承の魔女にも発展している様です。

又、「フェイ」という言葉をご存知でしょうか。

これはスコットランドの方では、「フェイに取り憑かれる」等と云う表現に使われ、良く無い事の前兆や、人が何かに憑かれた時等に言われる様です。

この「フェイ/fay」ですが、妖精/フェアリー(Fairy)の語源となったフランスの言葉で、Feeとも記します。

さて、「フェイ」は、フランス妖精を直接指し示す言葉でもあり、モルガン・ル・フェイのフェイと同じでフェイという妖精は、魔法を身につけた親切な女性のことを指します。

現在においてもCzarownicaの教えが『万物の迷惑で無いことを確かめたならば何事も人の役に立て』であることから解ります。

又、アイルランドではイエイツが纏めた民話の中に「悪い魔女の呪いで美味しい牛乳の出なくなった牛が居る農家魔法使いの女性が助ける」という御話があります。『ルト幻想物語 (ちくま文庫)』に収録されている「魔法にかかったバター」の話です。

この話には大きな特徴があり、登場する謎の魔法使いの女性は、ハッキリした名前も持たずに、文中で様々な名前で記述されています。

例えば、鬼婆/ハグとか、魔法使い/チャーマーとか、魔女/ウィッチとかいうふうに、度々記述が変わっています。

どの言い方にせよ、普段、良い意味で使われる言葉ではありませんが、この物語の中では農家の人を助けるのですから、良い人の役割として記録されている事が特徴です。

そうした民話がある事自体、魔女は、「妖精学者」なのではないかという見解も有ります。妖精学者とは造語ですが、妖精に付いての知識や不思議な力を身につけた人の事で、妖精に困っている人を助けるという人で一般概念として、ライトノベル的設定な人物の事です。

日本で言えば「大津の鰐」の様に妖怪を食らう妖怪の様なもので、語源として使われている伝承の魔女は「善人か、悪人か」「フェイとの違いはあるのか」「妖精学者との違いはあるのか」等の疑問も出てきます。

この疑問に答を導いてくれそうな文献から一説を紹介すれば、ドイツ語で魔女を意味する「Hexe」のもう一つの語源の説です。

Hexe」というのは、古代ドイツ語Hagzissaが語源で、Hagは森の意があり、Zissaは、「妖精」を意味する為、魔女を意味する「Hexe」の語源は、「森の妖精」という言葉になります。

古代ドイツでは、魔女と妖精がイコールで結ばれる事から関連的に、アイルランドフランスの魔女も、元は妖精だったと考える事も成り立ちます。

 語源としては、「垣根の上に立っている」ということもあり、アイルランド妖精学者や、フランス妖精フェイなどとの相違点は明確に区別する事が不可能で、その善悪に就いても日本に於ける「侍」に「良い侍」と「悪い侍」が居る事や「農民」に於いても「正直者」と「欲張り者」がいる様に後の社会情勢や、見る者の角度によって変化して行くと考える事が自然です。

同時に侍も、農民も、その役目が明確であり、関連的に考えれば魔女と日本語で表現されている者の本来の語源は「森の賢者」として、人と自然の関わりや自然力との共存共栄を助ける自然科学の先駆者として考えられるべきです。

 

§4・Czarownicaに就いて定義のまとめ

 さて、前項に於いて述べて来た森の賢者達は、嘗てはヨーロッパ全土に分布した先住民で、その自然科学文化は時の権力者や庶民には多大な影響が有ったものと考えられます。

更にその共通的な特徴としては村の薬草医であり、産婆であり、自然環境における科学的知識から農林水産に於ける予測も行っていた事から時には気象学などから軍事にも介入し自然科学と人文社会の垣根を行き来できる賢い女性を「森の賢者」と崇めていたと考えられます

しかしその自然科学と手法があまりにも優れたいた為に科学の進んでいない中世ヨーロッパに於いては「魔女」と云われ、悲しい迫害も受けていた事も事実です。

そして同時にこの時代からお伽噺や迷信も増えています。

こうした中で現在では科学も進み、ヨーロッパに僅かに残った先住民文化として、ナチュラリスト・ハーブセラピスト・フォレストレンジャーなど地球環境と人との共存共栄のエキスパートとして脚光が再び当たり始めています。

下記はいくつかの角度から「森の賢者」に就いて史実から実態を考査したものです。

①:古代信仰から来るものとしての語源

一般に知られている魔女は英語で“WITCH”と呼ばれ、その語源は"WICCA(ウイッカ)”とよばれるキリスト教以前にヨーロッパにあった古代宗教のようで、"WICCA”はケルト信仰も含む広範囲な古代自然信仰です(日本の多神教に近い存在です)

又、魔女witchの語源は中世英語のWiccaで現代英語ではWise Woman / 賢い女性 という意味だとも言われています。

更に魔女(witch)の語源は古英語の「wicce」と「wicca」で古代の多神教の男性信者と女性信者を意味している 様です。

②:単語の意味から関連付けられる語源。

  (ウィッチの語源は、古イギリス語の「賢い女」だという説がありますが、同時に「垣根を飛び越える女」という意味も有り、こちらはドイツ語のハガズーサが語源です。

中世英語のWiccaがもともとの魔女の呼び名で、現代英語に訳すると Wise Woman / 賢い女性「ウィッチ」とは「知ること」を意味する「ウィット」と同じ語源から派生したものであり「賢者」を意味しています。

魔女は英語で"Witch"というが、これはアングロ=サクソン語の「知る」という言葉が語源でもあります。

③.その他世界観による語源解釈の共通点

Hexeという言葉の語源は中世のハガツサで、「垣根を越える、あるいは垣根の上の女」という説が有力ですが、どの国にも独自の呼び名が有りその語源は「自然と暮らす賢者」と云う共通点があります。(下記参照)

ドイツ語 Hexe (ヘクセ)

英語 witch (ウィッチ)
フランス語 sorciere (ソルシエール)  

スペイン語 burja (ブルハ)
ロシア語(ガラ・ベジムイ)*ロシア語の表記ができないので読みだけ。
リトアニア語 ragana (ラガナ) 

 チェコ語 Mala Carodejice (マラー・チャロディニッツェ)
アイスランド語/スェーデン語 Huld (フルド) 

イタリア語 stregone

ポーランド語 Czarownica (チャロベニカ・シャロベニカ・ツァロベニカの中間発音)

④・その他

数世紀前までヨーロッパ人はおとぎ話の魔女(Witch)の実在を信じていました。大きな鍋で薬草を煮、杖に乗り、夜な夜なサバト(集会)に出席する悪魔(Satan)の手下として語られることも有りますが、これは迷信であり、その証拠に「Satan」はもともとヘブライ語ですが、「Witch」はアングロサクソン語の「wicce」からWicce はねじ曲げる、変化させる、魔術を行うという意味のインド=ヨーロッパ語系の言葉。古代スカンジナビア語のvitki (魔法使い)とも関連している事から複数の文化の組み合わせと考える事が自然です。
魔女や魔法使いのルーツを、キリスト教によって排除され歪められたスカンジナビアないしはケルト系の土着の呪術・信仰に求める説は有力です。
しかし魔女に具体的なイメージを与えたのは、中世ヨーロパで「産婆」として活躍した女性たちでした。まだ医者という専門職がなかった時代、彼女らは村人の出産を助けただけでなく、病を治し、心を癒しました。イギリスでは「Midwifery」と名付けられ、フランス(sage femme)やドイツ(weise frau)では「賢い女」と呼ばれました。

つまりこれらが「森の賢者」としての本来の実態です。

 

§5・おわりに

本研究では、森林の多様化に伴い、「造園学」と「魔女」の融合をテーマにスポットを当てる試みを計画していますが、悪戯に広義となる「魔女裁判」や「宗教感」に就いては極力触れず、魔女の行為のおおよそ90%を占める、ハーブ効果や人と自然との暮らし方にスポットを当て、spiritualforestscienceを活用する事で、tourismの構築から、recreationを通じ、社会貢献性とacademismの範囲までを実体験できるプログラムを想定して、森林の多様性から「保護と利用」「持続可能な環境計画」「環境教育」の構築を願っています。

この為、敢えて狭義に確立させて行く事で、魔女の住む地域特性としての自然資源と、魔女文化としての人文環境資源を主体とした造園学との新領域創成を題材に、人と自然の関わりや地球規模の環境に就いて多方向へ発展出来る造園学の可能性を見出し、一つの手法として社会貢献の核となる事を目的として研究を進めている。

1989年まで続いた長い共産圏の支配は、偶然にも現在まで半世紀以上の資本主義による破壊に対し東ヨーロッパにタイムラグを作ってくれました。

これが幸いして戦前の未開文化が現在にも偶然手付かずの状態で残っており、特にポーランドのビャウオベイジャの森はヨーロッパに残された最後の原生林の一片として貴重な先住民文化が生きています。

又ポーランド人は大変な親日家で、ものの見方や考え方、そして価値観など、戦前の日本人と同じです。

 ポーランドの魔女Czarownicaこそ森林の多様化に伴う最も貴重な遺伝子の世界遺産と考えています。

 

2011/7/16

 

東京大学庭師倶楽部・主任研究員 宮 江介

 


 

『森林の多様化に伴うヨーロッパの魔女によるSpiritual Scienceを活用した造園学的Forest Scienceに基づいたエコツーリズムに関する研究』

 

Title・A study about an ecotourism based on forest science of the landscape gardening studies that utilized spiritual science by the uropean witch with the diversification of the forest

 

宮 江介(Kousuke-Miya)・後藤 知朝子(Chisako-Goto)・磯崎 邦夫(Kunio-Isozaki

 

魔女(まじょ、: Witch: Sorcière: Hexe・即ち生と死、自然と人、地上と空、超自然と文明社会、等の境に住む人の意味)については、ヨーロッパ地域において紀元前より人と自然の共存共栄に於ける知識や行為の先駆者として崇められて来た存在である。中世において一時期、非人道的な行為により悲しい迫害を受けた歴史も否めないが、現在では薬草医学や森林科学の分野に於ける先駆者として、その存在価値は欧米で高く評価されている。この結果、魔女たちはナチュラリスト、フォレストレンジャー、ハーブセラピスト、等の各方面で環境への期待を込められ活躍をしている。今回、森林の多様化に伴い、造園学と魔女をテーマにスポットを当てる試みを計画した。本研究では、悪戯に広義になる魔女裁判や宗教感については極力触れず、魔女の行為のおおよそ90%を占める、ハーブ効果や人と自然の暮らし方にスポットを当て、スピリチュアルなフォレストサイエンスを活用することで、エコツーリズムの構築から、レクレーションを通じ、森林の多様化として活用する事で、保護と利用、持続可能な環境計画、環境教育として、あえて狭義に確立させて行く事を目的としている。人と自然の関わりや地球規模の環境に就いて多方向へ発展出来る造園学の可能性を見出し、一つの手法として社会貢献の核となる事を目的として研究を進めている。

 

キーワード:魔女・エコツーリズム・森林の多様化・持続可能な環境計画・保護と利用・環境教育・共存共栄・造園学

 

1.背景と目的

現在、森林は世界的に速い速度で減少しつつあり、それにともなって、CO2の増加、地球の温暖化が指摘されている。

の温暖化防止に対し、京都議定書は極めて優れた方向性を打ち出し、先進7カ国は率先して-5%以上、日本では-6%のCO2削減を行う事を2008念から2012年までの目標として設定した。

又、地球規模の危機に対して森林と直接関わる林業、間接的に関っている森林施業の多くは、地球の環境保護のために、注目を集めている反面、その内容に就いては細部に行き渡った理解は専門的知識を必要としている為難しく、未だ一般的には十分な実行計画が、進んでいない事実も否めない。

一つの例として一般論を述べれば、「地球規模全体の環境はとても大切だ」「人と自然は共存共栄して行かなくてはいけない」と万人の殆どは言ってくれる。

更に、これらの考え方に対して「自然を守りつつその恵みを受け繁栄し続けたい」「限りある資源を大切にリサイクルしながら心身ともに豊かな暮らしがしたい」「これから先の時代に健やかな社会環境を築き残して行きたい」といった希望も当然のことながら万人のほとんどが持っている。

勿論こうした行為に対して地道ながら、弛まない努力をしている者や、独自の思想を打ち出している者も多くいる。

しかし、これら思想や希望に対して、「何時・何処で・誰が・何を・・・・」と、英文法で言う54Hで答えられるものは減少してしまい、具体的な計画や行為まで発展させてゆくと更に減少してしまう事は残念ながら否めない。

そこで、京都議定書の内容を解り易く、白熊やペンギン等を題材に温暖化のキャラとして用いた説明を行い、身近に親しみ安い形で浸透させているのがチームマイナス6%の特徴である。

この結果、複雑な数値などを解りやすく説明して、一般には目的の成果を構築し始めているといっても良いだろう。

チーム-6%の行って来た行為として、生活から出るCO2を減らす手法としての-6%に対して、CO2を吸収してくれる森の方を増やす事や守る発想があるが、この問題に対して人と森の共存共栄を構築する造園学等は理想的である反面、これもやはり難解な解析数値などを用いる手法の為、一般に理解や実践活動が浸透しづらいと言う欠点が有る事は否めない。

筆者を含む研究班は、難しい数式や公式を一切削除して、チーム-6%の環境活動行為を参考に、白熊やペンギン等のキャラクターと同様に「造園学としてのEcotourismCharacter」によるエコツーリズムを通じた森林の保護と利用を試みた。

つまりレクレーション活動から実践を通して森林の多様化を学び、活用出来る様にして、森林の保護や持続可能な環境計画といった側面から、地球環境に対する正の数値を構築して、社会貢献できるコミュニティーの形成を計画して行き、構築させる事を目的として研究を進めている。

 

2・造園学とは

我々の行ってきた造園学について述べれば分類上、環境学が有り、その中に森林科学(林学)が有り、更に深く進んだ部分に造園学(森林風致計画学)が位置している。(図-1)

先ず、造園学に於ける対象とは、自然環境と人文環境によるふたつの環境資源の融合するところにある。

次に、研究の手法とは対照とする環境に就いて、zoning・マクロ、メソ、ミクロの三視点からの考査(表-1・2)・物理的解析、心理的分析、造園史実的検証の三軸による考察にある。(表-3)

更には、実践の技法として上記対象の分類と考察結果を踏まえ、コミュニティー形成などを含めた地域計画、地域環境ポテンシャルを活用したランドスケープ、構築後の環境アセスメント(表-4)を行う。

最後にその成果をまとめ、行政や学会への報告や発表を行い、今後の社会に対して環境的貢献を遂げる(表-5)事をプロセスとしている。

この結果、京都議定書に沿った効果の構築、人と自然の共存共栄、各地域や社会の活性化、ヨーロッパ諸国との文化的環境交流を図れる事を願っている。(表-1....5参照)

 

表-1・ゾーニング手法の基本

種類

範囲指定

絶対保護地域

立ち入り、採集、等全てを禁止し保護する地域

特別保護地域

採集など禁止するが人の立ち入りは認める地域

保護地域

落ち葉等学習目的のみ採集可能な地域

準保護地域

積極的にレクレーション活動を行える地域

活用地域

キャンプなどを指定する場所のある地域

実用地域

地元活性の為の地元産業の活性地域

一般地域

工業、住宅等、市町村条例に基づく地域

 

表-2・視点についての基準

視点

基準

マクロ

風景・景観・パノラマ・仰伏角・展望台・等の眺め

メソ

神社の境内や森林内等の、実際に佇む事の出来るヒューマンスケールとしての空間

ミクロ

食べ物や工芸品から、虫や小鳥等の人の五感で感じる事の出来る対象物

  

 表-3・三軸手法に就いての一覧

手法

X

自然・文化・社会・等に対する物質に対する客観的な、物理的解析手法

Y

自然、文化・社会・等に対して物理的物質以外の存在に対する人の潜在的概念、論理的思考、感覚的意識等に対する、心理的分析手法

Z

本多静六博士から始まる現在までの林学者による造園学と、その実践形態の史実に基づいた合否の検証手法

 

表-4・行為によるプロセスの一覧

行為

技法

調査

環境資源に対するzoning、三視点による考査、三軸による考察、等の環境ポテンシャルのまとめ

計画

地域に対するコミュニティーとの融合から保護と利用、持続可能な環境計画、環境教育の構築

Landscape

調査結果から構築した計画に沿った先地形のポテンシャルを最大限に生かす活用計画図面の作成

Assessment

行為の起動後、人文環境や自然環境に関しての環境アセスメントの実施

 

表-5・社会貢献に於ける発表の分類

対象

行為

官庁

森林の多様化など白書とリンクした実践的行為の位置付けに対する報告書の作成

行政

地域コミュニティーを含め地域環境資源に対して、今後の展開におけるプロセスマニュアルの構築

学会

実践を通じ得た成果から再び造園学としての論文発表

 

日本の造園学の始まりは今から約130年前、本多清六によりドイツの経済学者P・V・ザーリッシュ博士の森林美学(美しい森は施業を育む)を日本に持ち帰った事から始まり日比谷公園を計画してから100年、造園学は森林科学の一分野として、森林や景勝地の保護と利用を目的として発展してきた。

筆者を含む研究班は、その流れの中で物理的解析軸のX軸、心理的分析軸のY軸、造園史的検証軸のZ軸をもって、自然環境や人文環境を数値で表す手法を開発している。

それと共に、視点としてマクロ、メソ、ミクロを用い、景観、植生、土壌などの観点を三つの点から観察している。

また、計画地のゾーンニングは、MAB計画をもとに行っている。

 

3・魔女(Witch)とは

魔女とは戦前から有る日本での造語であり、正しい訳とは言えない、正式にはWitch(英)・Sorcière(仏)・Hexe(独)と呼ばれているもので、直訳すれば「垣根の上に住む人」が正しい。

現在日本で認識される一般的な魔女の概念に就いて確認を行うと下記のような考え方が平均的な概念と考えられる。

下記は、研究班3名にてインターネット検索数約200件の検索結果から平均した意見と判断したものを一例として掲載している。

 

『昔から、魔女に特別な能力がある、と信じられてきたのには、ハーブ(薬草)と深い関わりがあったからと思われます。魔女は大鍋の前に立って、なにやらグツグツ煮ていて、鍋の中には、薬草がいっぱい入っているのです。魔女の原型をたどっていくと薬草使いの女性に行きつきます。魔女は、今でいう薬剤師みたいな存在だったのです。歴史的にも深い関わりがあるのは事実です。魔女は、森と村の境目に住んでいました。ドイツ語の魔女『ヘクセ』は “垣根の上の人”という意味があるそうです。魔女達は魔女の暦に従って、薬草を採りに森に入りその薬草を使って、村の人々の苦しみや病を癒してきたのです。森と村の境目はまた、あの世とこの世の境目でもあり、目に見えない向こうの世界へ、自由に行き来できると信じられていたのです。薬草に深い知識を持っていた彼女たちは、自然の声に耳を傾け注意深く観察し、自然の大きな力を感じ取り、自然と共鳴できる特別なエネルギーを持っていたのでしょう。境目に立つと言うことは、どちらの世界も理解できる自由な心を持つということです。

 

 “自然を見つめる繊細で厳しい目”これこそが魔女にとって必要不可欠な条件です。』

 

上記は魔女に対しての一般的概念として、現在の日本や欧米に於いて共通した概念であると考えられる。

次に、この一般的概念から一歩深く入り、哲学や宗教的な一般概念に就いて述べると下記の様な見解が見られる。

 

Witchcraftを単純に和訳し、魔女術(ウィッチクラフト)と呼ばれることがある。その場合は、単なる「術」、つまりおまじないや呪術の総称と言える。対して、ウィッカ (Wicca) と呼ばれる「キリスト教以前に存在したヨーロッパの多神教の復活である」という思想においては、ウィッカは宗教であるとし、ウィッカ宗と訳すのが望ましい。ウィッカ宗は、オカルト趣味とは異なり、欧米で認められている宗教の一つである。その信者の魔女はウィッチ (Witch) ではなくウイッカン (Wiccan) と呼ばれる。

魔女宗の魔女たちは、魔女を「キリスト教の悪意によって魔女とされた、自然の神々の崇拝者」であるとし、キリスト教以前の神々を崇拝する。現代の魔女宗の復興に大きな影響を与えたジェラルド・ガードナーが近代西洋儀式魔術の要素を導入したため、儀式魔術と同じようなものとして語られることがあるが、魔女宗は宗教であり魔術とは異なる。むしろシャーマニズム神道と同列に語られるべきものである。』

上記のような二つの事例から実際魔女という存在に対して客観性のある説明を行う為、敢えて5W4Hの手法を使い下記に示した。(-6参照)

 

表-6・5W4H方による客観的な魔女の評価

WHAT

 

「先ず万物の迷惑に成らないか確かめ、確認できたら如何なる事も進んで人の役に立て」と云う教えが基本

WHEN

 

紀元前より伝わる科学的技法と伝説的文化により現在に伝えられた実在の民

WHERE

 

ヨーロッパ大陸全域の森に生息、その習性はヨーロッパを東西南北と中央に分類して若干の違いがあるが基本的には同類

WHO

 

古より森に住み、自然と共存する知恵を持った、五感の発達した女性

WHY

 

人と自然の境に住み、自然界と人との共存共栄を助ける為、存在し続けた

HOW

 

シャーマン(古代の呼び方)、魔法(中世までの呼び方)、森林レンジャー・薬草医、ハーブセラピスト(現在社会の認識)forest Sciencespiritual Science、(現在の学術上の呼び方)

HOW MUCH

 

基本的に魔女は金銭概念がなく奉仕的で、ヨーロッパ各地の経済基準と日本に於ける社会貢献基準の貨幣価値を当てて基準とする。

HOW MANY

 

古代より中世までは何処の森にも多く生息していたが、魔女裁判以来激減し、19世紀にはヨーロッパ全土でも僅か100名程度の有名な魔女の存在記録が伝えられるのみであったが、現在は数も増え始めている

HOW LONG

 

通常15~6歳で五感、経験知、知識、体力など開花し、生涯現役のものが多いと伝えられている。

 つまり魔女は人と自然の共存共栄を助ける「懸け橋」の様な存在であり、現在地球の温暖化や森林破壊などの環境問題に対し長い歴史の中で構築した独自の実践的環境技術を持って、現代人に対して対処してくれる貴重な存在であると考えられる。

 又、魔女の持つ森と人の共存技術の90%は現代の森林科学で解明でき、残りの10%spiritual Scienceとして残るが、この現代科学では未だ解明できない部分に就いても神秘的な部分であり、造園学の観点からエコツーリズムや森林レクレーションとして大変魅力がある部分であると考えられる。

 こうした魔女たちの歴史的行為は今もヨーロッパの奥地で受け継がれており、森林による恵みを利用した、美容・健康・安らぎ・快適性、保全活動、等に対する価値観について欧米で見直されている。

 今までの結果からどうやら魔女はヨーロッパ産と言う事は、確実であり、風土や国柄、宗教感によっても、それぞれの発展経路は異なる様である。

 ここで我々が述べている魔女とは、呪術や悪事を働く一般的概念としての「黒魔女」ではなく、ハーブセラピーや、森との共存哲学や、人と自然の優しさを伝えてくれる一般的概念としての「白魔女」に限定している。

 又、本来魔女の大半はこの白魔女であり、これが事実上基本的な魔女の姿勢である事が調査結果から理解できた。

 ここで、魔女の行為に就いて造園学側の解釈を一例としてその特徴を示す。(表-78

 

 表-7魔女の行為と造園学の解釈による一例

魔女の行為

造園学の解釈

秘薬

ハーブなどの薬草に於ける調合薬学

ホウキ

殺菌や虫よけ効果のある自然素材材を使った道具

ヨーロッパ

 

緯度、標高、植生など日本に類似した自然環境の条件下にて発祥の為、日本古来の多神教に類似

屋根の上

 

つまり地上と空の垣根、化学が神秘とされた時代の人と天空(自然と人文・科学と迷信)の意味

占い

自然の摂理から統計学的な傾向の伝達

若がえり

地域独自の美顔、美白などのハーブエキスセラピーによる行為

不老長寿

 

体力増強、滋養強壮、予防医学などの薬草調合効果

動物の僕

環境に敏感な動物を飼育しセンサー情報を集める

アルピニズムに於けるピッケルの意味

帽子

アルピニズムに於けるアルペンハットの地域変形型

マント

アルピニズムに於ける防寒着

悪魔

当時科学で証明できない一部分に就いての解釈

森の生活

自然科学の宝庫からマテリアルの採集フィールドとして活用した地域とその地のロハスな生活

月夜の行為

季節と月齢による自然科学的を用いた独自な暦

(この部分に関してはspiritualな部分が多く、現在科学では解明できていない部分も有る)

ハーブの悪用や過剰な常習者による副作用や体質により起こる症状

呪文

即効効果に対する注意の伝達やハーブ調合に就いてのレシピの伝達方法

眠り

快眠の出来るアロマセラピー効果等

リンゴ

薬草の悪用例

魔力

自然科学の応用に於ける時代背景的な解釈結果

(極めて発達した五感に対する解釈、及び科学では解明できない第六感の存在)

 

 表-8魔女の特徴

分布

東欧・西欧・南欧・北欧・中欧のいずれかに分布する

歴史

古代より地域の森に住み都会人に施しをする歴史有り

風土

地形と文化は日本に類似した自然共存型の風土

Style

フォレストレンジャー・ハーブセラピスト・薬草医・等

Visual

白面、銀毛、碧眼、等の特徴が多くに見られる傾向

経済

社会貢献性の高い職種であるが経済的な優遇は無い

国交

大使館や親善大使を通じた、社会貢献や学術的交流

人格

質素、倹約、質実、剛健、勤勉、清廉潔白、穏かな人格

科学

日本に於ける森林科学や薬草学に類似した科学技術

哲学

万物の妨げを避けて、人の役に立つ思想

能力

自然と共存する中で得た優れた知識と五感を持つ女性

 

表-7に於いては、魔女の行う一般的行為と、これに伴う造園学の視点からの概念を述べているが、伝説や迷信などのほとんどが、その根拠に就いて、現在では科学的に解明できる事が読み取れる。

表-8に就いては、魔女の持つ特徴であるが、これらは古くよりヨーロッパ地方の森に住むナチュラリストであり、その経験から蓄積した薬草学を駆使し、自然環境共存型の社会貢献活動を提供していることが理解できる。

即ちヨーロッパの魔女は、その長い歴史の中で自然と共存し、共栄する方法を見つけだし、森と街を行き来しながら地域の暮らしに役立ってきた人たちだった。

しかし、まだ自然科学が発展していない中世ヨーロッパに於いては、ある意味でグローバル化が進む事により、本来の歴史や文化により構築されたセラピー科学は解明できない不思議な行為は都合の悪い事であり、魔女たちは弾圧をされてしまった。

しかし二十世紀に於いてはこの行為が非人道的な行為と反省され、二十一世紀には自然科学の確立として、環境学や医学の世界で再び魔女(森林セラピスト)を科学的側面から認知し直している。

今回、地球環境を守り、人と自然の共存共栄を行い、森林や林業における社会貢献として、魔女の歴史的哲学や自然科学、薬学などを用いつつ、造園学を通した形のエコツーリズムとして普及活動を行う環境計画を構築したいと考えている。

 

4・研究(計画)の手法

下記は実際に魔女が日本の森林にて具体的な活動を行った場合の造園学的な活動効果を現した一例である。

この結果、魔女の実践活動とは造園学に於ける実践行為と類似している事も読み取る事ができる。(表-91011

 

表-9魔女の定義

定義Ⅰ

古くよりヨーロッパ大陸に住む民族である事

定義Ⅱ

伝説のある地域に住む五感の優れたナチュラリストである事

定義Ⅲ

魔女のDNAを継承するか又はその系統の者から一定の技術習得を受けた者で、フィールド経験がある事

定義Ⅳ

造園学を前提としたエコツーリズムに協力できる人である事

定義Ⅴ

自国の文化を継承して自己の研究を進める志がある事

定義Ⅵ

両国間の文化的交流に寄与する志がある事

定義Ⅶ

spiritualScienceforestscienceの両立が出来る事

 

 表-10研究と計画の実践的融合予測の一例

魔女のspiritual Science

造園学のforest Science

森林と生きる共存共栄の概念と行為

エコツーリズムを通じたレクレーションの実施に於ける研究

森林探検

調査・計画・ランドスケープ・アセスメントの研究

ハーブ採集

持続可能な環境計画と森林資の保全源活用の研究

星座及び月の軌道研究

森からの星座観測による温暖化防森林に於ける気象影響の研究

月光浴

森林セラピーを題材にした人と森林の環境研究

魔女学の講義

森との共存共栄活動から、環境資源を題材にした地域活性化や健康管理の森林活用学の実践研究

交流

官庁、行政、学会に対する森林の多様化に対するセラピーや温暖化防止手法までの研究

 

表-11発想と行為に就いての実践的融合予測

造園学の発想

魔女の行為

保護と利用

魔女と共に森を歩きレクレーション的要素から学ぶエコツーリズムからの保全活動の実践

持続可能な環境計画

ハーブなどの森林資源から行う「魔女の森ファクトリー」を通じた村おこしの実践活動

環境学習

魔女の森を歩くエコツーリズムを通じた実践型環境教育

Zoning

ヨーロッパと日本の森林文化に於ける理念の考査から融合による合同ランドスケープの実施

マクロ・メソ・ミクロの視点

魔女の五感やヨーロッパ的発想を基本とした保全活用の実践活動

物理的解析

造園学のforest scienceに対する、魔女のspiritual scienceによる実践行為

心理的分析

ヨーロッパの自然科学や文化や哲学の概念に対する実践活動

造園史実的検証

森林美学に対す発展経路の実践確認

表-9に就いて、先ず研究(計画)を行う為の共有理念としてⅠ~Ⅶまでの定義を行った。

 つまり魔女とはヨーロッパ大陸に古代より住む民族であり、自然との共存共栄の理念を持ち、森と暮らす歴史の中で特異な能力や技術を身に付け、現在に於いても科学的観点から社会貢献に役立てる立場の者と定義出来、計画の実施を行う事を前提としている。

 表-10に就いて、実際に魔女が日本の森に来て行う行為に就いて、造園学の観点から説明を行ったものである。

 これによれば森林の多様化に伴う、保全活動や、安らぎの提供や、地球環境に対する貢献に就いて、造園学に於ける学術行為と魔女の実践行為が相乗効果を持ち発展できる事が理解できる。

 表-11に就いて、造園学が確立してきた学術的部分に対して、魔女の歴史的構築から確立された環境との共存共栄の技術が融合できる事を読み取れる。

 れにより造園学の観点から行いたい調査、計画、ランドスケープ、環境アセスメントの構築が可能になり、両国に於ける学術的な発表を通じ地球環境に対する文化交流と社会貢献を可能にすると考えられる。

 

5・予想される結果

魔女の行為の大よそ90%を占める、ハーブ効果や人と自然の暮らし方にスポットを当て、スピリチュアルなフォレストサイエンスをエコツーリズムからレクレーションを通じた森林の多様化として活用する事で、保護と利用、持続可能な環境計画、環境教育として、あえて狭義に確立させて行く事で、相乗効果を産み多方向へ発展出来る核となる事を目的としている。

・保護と利用に置き換えて考えると、自然を守りつつ、その恩恵により、森林科学を発展させ、共存共栄する考え方が、エコツーリズムから構築できる。

・持続可能な環境計画として、地域の森から季節のハーブを見付け、石鹸や香水、クッキー作りから、美容と健康に役立つ自然の恵みによる地域産業の広がりを構築できる。

・環境教育に就いて、そのサイエンスをエコツーリズムに参加して、楽しみながら学び、環境学を身に付ける事ができる。

・魔女と交流することは、エコツーリズムを通じ、魔女と森を歩き、知識を学び、森林の多様化を知りつつ環境活動を行っている事に繋がる。

・さらに、魔女キャラによるエコツーリズムは、造園学を通じ、森林科学を構築して、ネットワークづくりに発展して、環境活動に発展するであろうと考えられる。

 

6・根拠となる日本とヨーロッパの森の人文環境と自然環境

4枚の写真は東ヨーロッパ及び北ヨーロッパの森林景観に対してアトランダムに選出した四季の写真である。

山林を含む森林であるが、魔女のフィールドとして森林を主体とした人文環境及び自然環境の類似性が造園学を通じ確認できる。

これら森林の風景写真対して上部から順に述べると春、日本の里山等と同じように折々の花が咲く。

夏、森林限界近くでは急な天候で滝が現れる風景が日本の北アルプス等と類似している。

秋、多彩な樹種は紅葉期に入り日本と類似した風景を醸し出す。

冬、落葉樹と常緑樹の混成林は日本の植生形態に類似している為、日本の森林に近い景観となる。

つまり風景論一つを取り上げた場合に於いても、日本の森林(特に緯度が北緯に進む、あるいは亜高山帯以上の標高をもつ地域に於いて)はアジアの地域よりもヨーロッパの森林に近く、類似していることが解る。

その大きな理由のひとつは、1894年に志賀重昂(1863-1927)によって書かれた『日本風景論』にて述べられているが、山岳地帯を多く含んだ日本特有の地形にあると考えられる。

此処で筆者たち調査班は小規模であるが磯崎式環境解析手法を用いて日本とヨーロッパの森の人文環境と自然環境に対する類似性の検証を行う実験を試みた。

実験の方法は、①・物理的解析、(上記四枚の写真による林学者の判定)、2・心理的分析(20名の被験者によるアンケート調査)、③・造園史実的検証(先学者に於ける既往研究の実例からの比較考査)の三点から行った。

この結果を下記に示す。(表-12)

 

 表-12三軸からの類似性検証

手法

人文環境

自然環境

X軸・物理的解析

・国内林業に於ける利用形態に対するランドスケープ概念の可能性についての検証

・先地形に於ける類似性の検証

・起伏変化の激しさに於ける類似性の検証

・植生に対する多様性の検証

Y軸・心理的分析

・写真別利用概念意識のアンケート調査

・写真別四季式判定

・地域名記入テスト

Z軸・造園史実的検証

・pvザーリッシュによる『森林美学』の思想と本多清六によるその後の国内発展経路に於ける文化的検証

1志賀重昂(1863-1927)『日本風景論』による地形的類似性の考査

 上記表の結論から下記内容が理解された。

 X軸・我が国において林内や、その資源利用により、古来より行ってきた人文的行為と、地形、起伏、植生、等から見られる自然形態から人文環境、自然環境に就いて国内との類似性が読み取れる。

 Y軸・被験者に対する写真判定からレクレーションやリゾートとしての利用概念の類似性が確認され、四季に対する自然形態も国内の森林と比べて違和感の無い事や、すべてに日本国内の地名を回答した被験者から、人文環境と自然環境に就いて国内と同様の森林イメージがある事を理解する事が出来る。

Z軸・もともとヨーロッパ発祥の経済学が日本の文化に受け入れられ造園学として発展構築した経路から人文的史実と、諸外国との比較から我が国のアルピニズムが発祥し、定着した自然風景に対する基本論から史実的な発展経路の確認ができた。

 この結果、日本の森林とヨーロッパの森が、人文環境と自然環境の類似性が極めて高く、双方の融合による物理的な発達予測や、魔女の環境理念による文化形態の複合から、エコツーリズムやレクレーション活動を基に発達を行い、造園学の計画から森林科学への学習へ発展し、実践的環境への発展に就いて本研究の可能性を見出せた。

 

7・おわりに

本文の目的は人と森林の共存共栄に就いて魔女の哲学が如何に大切かという話である。

 この種の環境学とは、森林科学分野があり、更にその深い所に造園学といった専門分野が位置付けられている。

 即ち造園学は環境行為における人文と自然の関わりに就いて、共存共栄をさせる為の「保護と利用」「持続可能な環境計画」「環境教育」を構築し、推進させ、国の内外に対して社会的な国家貢献を行うことを目的としている学問である。

 又、造園学は地球の温暖化に伴い、地球規模の自然環境保護には無くては成らない物で有り、同時に森林の多様化等に伴い、人に安らぎを与える学問として位置付けられる。

 しかしながら、その学問形態は自然の摂理と、人の五感を扱う物であり、極めて複雑怪奇な構造ゆえ、「zoningによる分類」「macromesomicro」による視点からの考査、「物理的解析」「心理的分析」「歴史的史実検証」等、科学的定量評価の基に総合的な考察を行う構図が有る。

 更にはその後に、机上から実践へと繋げる為、地域に於ける「community計画」から「Landscape」まで実行し、同時に未来への「環境assessment」も行う事が求められている。

 従って一般的には理解し難い難解な物となり、論理が末端まで十分に到達しづらい事も事実である。

 実際問題として、現代社会の国民は質量的な安らぎを求める事と同時に、環境問題に就いて何かしなくてはいけないと考えている様ではあるが、その具体的な手順や手法等を見出せず、造園学に何かを求めている傾向を良く感じている。

 同時に造園学の方も何か役立ちたいが机上の論理を実践に、どの様に伝え、どの様に反映させるか、悩んでいる現状がある。

 要するに双方の懸け橋になるものを築く必要があると考えた結果、最も適しているものが現在でもヨーロッパに分布する魔女の血を引く現在の魔女達と云う事に行きついた。

 彼女達はNaturalistで、forest-scientistで、herb-therapistである。

 彼女たちの行為は極めて造園学や森林科学に近い位置付けに有り、森の摂理と調和した人々になる。

 更に彼女たちには、spiritual-scienceなる独特の文明を持ち、造園学を志す者にとって、極めて魅力的な領域となっている。

 この魔女を使った森林のecotourismから森林のrecreation計画が、一般賛同者に対して森林の理解と興味を深められると確信している。

 そこで科学者として非力ながら魔女達を用いた造園学の社会貢献性に就いて、できるだけ多くの、声の届かなかった人にも知ってもらいたいと考え、如何に魔女が造園学を通じて、森林科学を確立させ、環境活動に於ける実践に役立つかに就いて伝えることにより、理解して頂ければ幸いだと考えている次第である。

 この様な理由から、本文は魔女を通じ、「人と自然の関わりによる安らぎ」、「造園学による地球環境への貢献意義」「人間に求められる本当の質量的価値観」をテーマに、魔女によるecotourismの必要性を理解していただければ幸いと願っている。

 

補注

130年前、ヨーロッパの森林美学を本多清六が持ち帰り、造園学はこの国の進路を誤らなかった。今またヨーロッパの魔女の力をかり、次の100年先へ未来の構築を試みたい。今後我が国において、環境学全体としての協力態勢から、森林科学に於ける専門学の構築を経て、造園学による実践計画がますますの発展につながる為の懸け橋として、ヨーロッパの魔女達は地球環境の救世主になると考えている。

 

 

 

 

『東北大震災(仮名)に於ける災害緊急時の実体と対処に関する現地視点からの考査報告』

 

東北地方の皆様・被災された皆様・その間傾斜の方々・NPОジャパンフォレストフォーラム・任意団体東京大学庭師倶楽部・その他任意による賛同者の皆さん

 

1・はじめに(summaryabstract)

(注・本文に於いては緊急性を要する為、誤字脱字・各名称の不備・不適切なまま多少掲載されているが、敢て緊急性が有った事実の記録として報告書として異例では有るが、そのまま掲載している)平成23年3月11日、午後249分頃より東北及び関東地域を、最大マグニチュード9.2を記録する地震と、最大18メートルを記録する津波が襲った。

亡くなられた方々への御冥福を祈り、被害にあわれた方々への御見舞を申し上げ、合わせて一日も早い復興を心より願っている。

この『東北大震災』(同年3月14日現時点ではこの様な名で呼ぶ))に於いては、予想をはるかに超える天災による被害が生じて居り、同時に天災前後の人災に関する被害が否めない事も突出した形で見受けられる。その理由として、ある意味で天災は、その大部分が人力の及ばぬ処に存在しているが、人災に関しては有る程度の対応が可能であるにも関わらず、怠っていた部分が結果的に露出している。現地の意見や公平な視点から見ても現政権の対応には残念ながらアラが目立つ。人命に関わる有事の時に政権は派閥を超え、国内にいる適材適所の優れた人材や、諸外国からの有力な応援手法を導入すべきもので、同時に神戸・淡路に於ける震災時に問題視されてきた「天災の認識」「その後の対策に於ける問題点と反省点」或いは「緊急対応した成功事例」が提示されていたが、なぜかその反省点や改善点が活用されていない事も不思議でならない。その結果、場当たり的な対応が日々二転三転してしまい、事実これに対す地元住民の落胆の声を幾度となく聞いて来た。皮肉な事には、一部、議会の中心者・地域に於ける有力者・組織上層部が逃げてしまい、残った警察官や消防隊と地域の自警団が警備や災害復興をしている事実があった。又、医師が早々に避難してしまい地域に残った看護師だけで頑張って治療をしている姿も見受けた。更に地方行政に於いても主要なポジションが姿を隠してしまい、仕方なく役場に残った人達で専門外の範囲まで対策を講じていると言う現実もあった。もちろんこれは一部の人間で、確かに緊急避難は法の範囲であるが、現に多くの人はそれらを超え、人助けをしている者もいる為、最後は人間性だと痛切した。そして、専門家や有識者の数が災害地にしては異常に少ない事が現場から報告されてきた。本来、専門家や有識者とは現場で人の役に立って始めてその仕事を全うするものである。安全な場所でネクタイを締め机上の有識者や専門家であるより、今時に於いては泥だらけに成り、現場で活躍する有識者や専門家の数が必要だと痛切に感じた。環境全般に関して実践活動を行う立場からも、自己の反省を含め、今後深く考えなくてはいけない現実を痛感している。しかし逆に、地域の人々は黙々と復興に向けて努力を続けており、助け合い、復旧活動に従事し、頑張っている姿が各地域で見られ、最悪の事態の中に有る唯一の光りが灯され始めた事から、僅かながら安堵を感じた。

 

こうした非常事態の中でも、国際法の枠を乗り越え活躍してくれた米軍を始めとする欧米諸国の特殊部隊、政権と対立してまで命の重要性を大切に独自の活動を繰り広げてくれた自衛隊、規則を無視して直接中央行政と協働で活動を開始した地域行政や役場の人々と前例を超えて対応した中央行政の人々、更には、手順を無視し災害地の奥深くまで進んだ民間ボランティア等の医師達の活躍が、現実の問題として被災地の生命を救っている現実がそこにはあった。厳密にいえば、彼ら全員が、何かの法規制や規則概念を多少なりとも無視している事は否めない。しかし実際に現地ではこれら法や憲法を無視している者たちが、日々人の命を救っている。つまり現実の問題として有事に於いては平常時の法や規制等は全く通用しない無力な物であり、むしろ災害地域毎に緊急対応する形で作られて行くケース毎の独自ルールこそ、現実の災害対策であり、同時にそこには道徳理念や倫理観、そして自己犠牲と助け合いの精神が力を発揮して居り、通常災害地に起こる暴動や反乱が極めて少ない事が、この東北地域のスタイルにおける特徴で、これらに対しては国際的に東北人の質の高さが評価されている事実があった。しかし残念な事にこれらの活動は、今後何かの罰則や警告、或いは批判の対象や処罰を受ける可能性があるが、或いは逆に、現場での経験から作られて行く有事のルールに就いては、その実践的経験値と現実的な応用性を評価する形で、その後に検討され災害時の緊急対応として参考にされ、見直される事で、改善されてゆく可能性も秘めている。幸か不幸か、当然当団体もその中の一つである。実際の被災地に於いては、仮想の世界や過去の事例から作られた規律や法規自体が深く掘り下げられていなく、改善されることも無く、ブレーキに成るという現実問題があり、多くの犠牲がこの先、増える可能性が大いにあり、人災である事を改めて認識した。これは必ずしも現政権だけの責任ではなく、前政権にも大きな問題があった事は否めない。しいて言えば「天災は忘れたころにやってくる」というコトワザ通り、国民事態が淡路大震災以後、時が立つにつれて危機感を失って居たことや、皮肉にも経済や科学の発展する平和な時代において、危機管理がおろそかになっていた為、強いて言えば我々の団体にまで責任が有ると考えられる。いずれにしてもその結果、被害を受けた、或いは受けている地域に対しては気の毒な話である。

 

今回の災害に対して現地を体験した者として見解を述べれば、既に日本は国家全体の緊急事態に陥っている状態である。政府は救助最優先の非常事態発令を行い、人命優先で実践的で応用性の高い現場優先ルールに切り替え対応する必要性があると考えている。人命救助の障害となる全てのブレーキを解除しなくてはいけない現実が有ると考えられるが、何もされていない事自体が問題である。この様な異常事態に於いては平穏な時代を前提とした法律や経済が万能の物では無く、その非力さをさらけ出している事を、身を持って体験した。逆に道徳、正義感、自己犠牲の精神と言った物が、法や経済を超えたところに位置づけられている事を改めて教えられた様な気がする。解り易く例えれば「天然の池に落ちて溺れている子供Aが居るとする、たまたま車で通りかかった大人Bが、車を止め、柵を超え、池に飛び込み、Aを助けたとする。天然の池は天災で有り、そこまでAが入った事は人災である。結果Aの命は助かったが、Bは駐車禁止と不法侵入に成った。更に二次災害を起こす可能性に注意も受けた。もし、Bが見て見ぬ振りをして通り過ぎても特に罰せられないが、Aは確実に死ぬ。又、BはAを必ず助けられる保証はどこにもないし、場合によってはB自身も死ぬ可能性もある。この場合、黙って通り過ぎ通報だけする事が、現代社会に於いては最も優等生の回答と思われるが、Aが死にBは社会的責任も果たし法律も守った事に成り、何も起こらなく、平穏な日々を送ろうと思えば何時もの日常のままである。」どちらを選ぶかは個人の意思次第で有る。言い換えればどちらも正しく、どちらも間違っている。災害発生時からしばらくして実態が見えて来た時、当団体内でもこの議論は行われたが、現在においてもこの結論は出ていない。一人の仲間の意見が印象的だったのでここに記す。「我々は一万円を名前がのこる形で寄付すればいいのです、そして行きたいのはやまやまだが法や規制が有ると言えばいいのです」偽善と傍観に激しい憤りを覚えたが、冷静に成ればそれはそれで一つの正論であり、ばかな行為をしようとしている我々の命を気遣って、世間体も繕ってくれている。つまりもっとも賢い人間で、自分も無傷で、国民としての役目も果たし、しかも身も安全だ。しかし同時に、この行為は現実の状況を知りつつ、上手に背を向け、最善を尽くしていない事も隠蔽した事実にも成る。結局この行為の是非に就いて結論は最後まで出なかったが、前者は賢く優等生の回答で法律重視の守備型で有り、後者は馬鹿で劣等生の回答で人命重視の攻撃型だと位置づけられた。あるいは今時の日本人と昔の日本人として認識された。これは一つの議論の姿であるが、自然の脅威に対して日頃よりこの様な議論がなされていなかった事にも反省した。現地に入り後者が多く活躍していた事に著者自身、日本の復興を感じていたが、この様な事実から当団体に於いては、今回の活動に対しては団体全体ではなく、複合団体有志という前提の基に行われた。只、推進派と否定派に共通する意見として、今後の災害対策に就いて人々に考える機会を与える礎に成ると言う共通認識は得られた。又否定派の中で少数意見ではあったが、「災害時の直ぐ後の現状把握は、行為に就いては否定するが、史実及び実態資料となるのでぜひほしい」「個人的に行きたいのだが、被曝と二次災害における死傷が怖いので嫌だ」という意見もあり、それぞれ事情があり、これも正論だと受け止めている。従って今後、本報告書は第二版、第三版、と議論されつつ発展する可能性も秘められている。実際に災害から一週間後の現実として今後講演する事で、それぞれが現実を認識できる事から、様々な意見が得られ、災害と災害後のあり方に就いて各自が考えてくれる事で、今後起こる悲劇を最小限に食い止められる様な方向性に発展することを望んで実行した。楽しい話ではないが、日本に住む以上、直視しなくてはいけない部分であり、災害後の現実から目をそむけず、それぞれの考えを述べて発展してくれる題材に成る事を期待している。

 

 

キーワード:地震・津波・東北・天災・人災・原発・政権・行政・欧米・地形・自治体・ボランティア・災害ハード・災害ソフト・災害史実

 

2・背景と目的

 上記「1・はじめに」の中で述べてきた理由からも今回は複合団体の中で有志を募り行う事で、計画の実行に当たる事に成った。

団体内の実行組織に就いては、知恵を出すもの、裏方を行うもの、物質的な提供をするもの、現地に出向く者(中継地と前線)の4チームに分かれ活動を行った。

本計画は災害後1週間目にその対応と手法の遅さに驚き、始められたが3月18日より開始されたが、20日には準備が整い現地に向け、出発した。

又、今回の計画に対しては以下3項目を目的とした。

Ⅰ・現地が最も必要としつつ、届いていない物資を、最も必要としていて、最も届かない奥地まで運ぶ事。

Ⅱ・救援が入れないと言う見解に対して、小人数、低予算、短期計画でも、本気を出せば工夫と手法次第では十分可能な事を、身を持って示す事。

Ⅲ・出来る限り災害直後の現実を、造園学を含む環境学的の視点から調査を行い、そのデータを今後の対策や、未来に想定される災害の役立てる事。

以上の3項目が計画の趣旨として挙げられた。

 

「Ⅰ」に就いては、具体的に抗生物質系の医療品、感染防止のマスク、消毒材、目薬、聴診器、血圧計、ガソリン入りのオートバイ、できれば食料が即して居てほしいという情報が現地より事前に連絡があった。

この情報自体も通常のルートでは入手できないものであり、現地の自警団を通じ、専門家からの要望として情報入手が出来たものである。

抗生物質系の医療品は災害地で必要とされつつも、現在正規のルートでは入手しづらく、関西の医師より、東京を中継して現地の医師に渡す形でルート開拓をしたが、関西からの配送が休日と災害で遅れるとの事で有り、東京方面に於いても休日の為、手続きが出来ないと、実に危機感のない回答しか返ってこなかった。

やむを得ず、街の個人病院、大学の医療関係に手当たり次第確認し、現地自警団内にいる医師と相談の上、医療品の廃棄物として下げて貰い、それを現地に運び医師または看護士に渡し、判断の上で廃棄、または使用を決めて貰うことにした。

これは一つの賭けであり、自警団内にいる医師は自分の周りで手いっぱいで、連絡の取れない現地では一度会えなければあきらめ自分らが運ぶしかない事に成る。

更に最も医療品を必要とする災害の奥地に関しては、医師不在のまま看護士が治療をしており、その看護師ともしばらく連絡が取れていないと言う。

つまり、約束の時間と場所で医師に会えなければ、勝手に現地で看護士を探さなければいけない事に成り、その看護師にも会えなければ、抗生物質は本当の廃棄物に成ってしまい、再び東京に持ち帰り、今度こそ本当の廃棄物に成るという実に不利な賭けの様なものだが、実際日々人が死んでいる以上1%でも可能性が有れば届ける試みを行うことにした。

結果、現地に於いて偶然にも神戸から指示を待たず、勝手に現地入りをしていた医師にあう事が出来、無事医療品等を渡すことが叶い、町役場の人と看護師もそこにいて立ち会ってくれ、オートバイと徒歩で他の場所にも配ってくれた。

医師の話では時間が勝負なので、正規ルートを待った分だけ、人が死ぬことが解っていたので、友人と勝手に来て二手に分かれていると言っていたが、双方医療品が底をつき、困っていたと言っていた。

又意外な事に、目薬、マスク、消毒剤を持ちこんでくれたことも感謝された。

医療の不足する寒冷の災害地に於いて、できるだけ患者を出さない事が、有事における最先端医療だと説明された。

「Ⅱ」に就いては、当初正規ルートを求めたが、「許可できない」「無理だ」としか言わず、人の命にかかわる事だと言うと「今、最善を尽くしている」と返ってくるが、方法や理由を聞けば何一つ答えられないマニュアル回答しか出来ない状態であった。

もちろんこれに就いては、担当者自身の責任ではない、むしろそこのポジションに素人に権限を与え、配備した者に責任が有る。

現実の問題として我々は造園学を行う以上、山岳に於いて1・2度は死と隣り合わせに成り、無事生還している。

又、共産圏やゲリラの潜む森に入り、銃撃戦に巻き込まれつつも生還した者もいる。

その為、自ら自衛隊の演習に民間人として参加する者もあり、一定の成果を上げている。

この為、ある程度は正規ルートの担当者より、危険地帯における手法と生還率は高いと考えているが、これは造園学という学問の方が特異な位置づけだと考える方が自然である。

実際今回の災害に於いては、事前の地形図と蓄積した地域研究の構築から、車両、オフロードバイク、徒歩とザイルワーク技術により、ほとんどの場所に行ける事は解っている。

要するに林学系の人間を緊急多用する事で、有る程度の成果は出せるはずであるが、この概念も専門分野であり浸透していない。

しかし窓口となる彼らの本心の一部には、許可をして自分のポジションを危険にさらしたくないし、もし成功してスタイルが確立されたら次は自分たちが行かなくてはいけないので、被曝や二次災害を受けたくないと言う本心も見え隠れしている。

そして何よりも彼ら担当者が上から押さえつけられていると言う現実も、彼ら自身が気の毒だと思う。

当然平和な世の中に育ってきた物として、そう思うのは当たり前で、打破する事を強制するつもりも無く、責める気はもちろん無いが、お互い国家予算で活動している同類として、少し辛口な評価をすれば、現地で危険にさらされながらも、規則の枠を超えて頑張っている同類もいる訳で、成果を出している事を考えて、有事の時くらいは、多少の犠牲と奉仕の心はほしい。

更には何時も税金を払って貢献してくれている人々の生命が危険にさらされている以上、出来れば少しは頑張ってもらいたいと願っているが、身勝手な考えである事も心得ている。

彼らは努力や工夫をする前にあきらめる事を学んだようだ。

そこで不利な条件下の中でも、工夫とやる気次第では被災地の最も激しく、被害の有る奥地まで、短時間で、比較的安全に、目的を達成し、生還出来る事を実践的に証明した上で、マニュアルを作る試みを行った。

具体的には、国道を通り、県道の一部まで車両を使い、その後オフロードバイクを使い林道や名も無き道まで向かい、その先は徒歩とザイルワークで目的地まで行き、目的を達成した後には同じルートで戻ってくる事が出来る。

つまり徒歩なら災害地でも大凡の場所には行けると言う事に成り、車両を中継地として、バイクは時間短縮と情報収集として使えば成果が出せる事が解った。

「Ⅲ」に就いては、環境学の実践に就いて農学の中の林学に於ける守備範囲として、砂防工学・自然災害学・砂防学・等も含み、これらの活用から災害の復興や、今後の災害対策に対する学術的な貢献を果たさなくてはいけない。

主な手法は目視による、地形・人物・動物・植物・建造物・等の確認、差し障りのない範囲での聞き取り調査、サンプルの採集と簡単な計測、動画・写真による撮影(但し被災者に配慮し、人のいない夜間と明け方を主体に、出来る限り人物撮影は避ける事を条件として行った)を主に行った。

その成果に就いては、後に各地域の歴史的変遷と照らし合わせ、考査した結果を今後、災害対策と復興に役立てて行く事を目的としている。

この作業の中で地域に於いてすぐに、便利に役立った事は、余震に於ける傾斜地の地崩れの可能性と、植生からの地崩れの可能性に於いて、現地の人に予備知識を求められ、現地内に於いては可能性に就いてすぐに回答できる地帯もあった為、危険地域の情報として活用された。

驚く事にこの部分の対策を行う有識者が、地域には全く居なかった事から、二次災害の可能性も十分考えられる。

一応、自衛隊の手順や危険な地帯にすむ人は説得に応じ、快く非難してくれたので助かった。

 

3・天災に関しての考査報告

東北大震災に就いて天災は主に地震と津波の二つが有る。

地震に就いては最大マグニチュード9.2を記録して居り、関東大震災や淡路大震災よりもはるかに大きい地震エネルギーが発生している。

 詳しい事は言えないが、近年起こった世界の地震に於ける記録では、最大エネルギーが発生されたものと思われる。

 此処で驚く事は、日本の土木建築技術の向上であり、実際現地に於いて国道4号線は段差が有る物の、気を付けていれば通常の走行が可能であり、橋やトンネルも正常に機能を維持している。

 又、建物の崩壊はマグニチュードの数値に対して、過去の事例から比べると被害が比較的少ない事に驚いた。

 原子力発電の設置された建物と、その周辺に関する建築技術や土木技術に就いては公表されないので理解出来ない。

 例外も有るが、その他の部分に就いては日本の建築土木が高い事を感じた。

 して特出すべきことは日本の古民家やきわめて古いビルが震災に強く、確りと原型を保っている事に驚かされた。

 寧ろ怖い事は地形及び地質と土木建築の関係にあると考えられる。

 海水がまだ引いていない街

 ともと日本は地震と火山と海との関係で国土が出来ている事から「先地形にしたがひて」と言う昔の言葉をもう一度考える時期が来ていることを痛感した。

専門外であるが、日本は火山国であり、今回の地震が火山活動に対して何かの影響を与えないか心配している。

次にもう一つの大きな災害である、津波であるが、この被害に就いて、現地では言葉を失った。

その実情に就いては、まず地域内すべてが海の匂いがして居り一度海底に成った場所が隆起した様な感じになっている。

次に海の底から持ち込まれた泥や砂があたり一面に敷き詰められている。

そして、船・ヒトデ・海藻・ウキ、テトラポットの一部等、本来海に有るべきものが街の中のいたるところで発見される。

又、本来は建築物の強度を増すために考案されたH鋼が傾き、転がり、破壊されている事に津波の恐ろしいパワーを垣間見た。

更に、形の有るまま流され転がっているビルや4階部分までが水浸しになっている町迄有り、そこの地面は海と同じ高さに成り、波が足もとにまで打ち寄せていた。

高台の方では収容できない御遺体がいまだ毛布にくるまれ野外に置かれていた。

これら二つの災害は、沿岸は元より、河川、トライアングル状の湾に大きな被害をもたらせ、明治以前の地図と照らし合わせる事で、大凡が地形図に従って被害を受けている事を知った。

 

4・人災に関しての考査報告

人災に於いても天災と同様に大きく分けて二つの要素が有ると考えられる。

ひとつはハードとしての部分と、もうひとつはソフトとしての部分が有ると考えられる。

先ずハードとしての部分に就いて言えば、地震や津波に対する土木建築の基準地である。

具体的な数値としては近年諸外国においてマグニチュード9.0を記録した地震があったにもかかわらず大凡マグニチュード6.0に対応する様に造られている現在の堤防や湾岸工事の大部分が見直しをされていない事が大きい。

又、海に囲まれたわが国では地震と津波はセットで有るという認識に対して、津波に対する対策部分が極めて弱かったと言える。

ある地域の話では「昔は海岸と呼ばれる部分が広く、漁に出る為の小屋が数件あるだけで、人は山の方の高台に住んでいた、もしも津波が来ても、小屋は皆で二、三日あれば治せるし、だれも死なない」という事で有る。

当然昔の話しを現在社会に当てはめる事は難しいだろうが、あまりにも先を急ぎ過ぎた様な気がする。

同時に原発のあり方や、都市計画のあり方があまりにも経済重視であり、自然の猛威に対しては無防備な発展をしてきたと反省している。

その一例としてあげられる事は、ネオンサインなど異常なほどの電力消費・地形が変わるほどの強引な土地開発・物質に対する異常な消費分化・等、先進国や経済発展を遂げようとする諸外国にも少ない特異例が日本には「豊か・安全・平和」という言葉の文化の裏に挙げられる。

次にソフトに就いて述べれば、上記の「ハード」として述べてきた内容も、突き詰めて行くと全てソフトの部分に辿り着く。

更に言えば今回の災害に対して今迄ハード部分で述べて来た、災害前の対策より、災害後の動きの悪さが、異常なほどに目立っている。

これに就いては後に述べるが、先ずやるべき事や、今出来る事、次々と行ってゆかなくてはいけない手順に対して、適材適所に手を打たず、必要な支援技術や人材を派遣しない体制が露骨に出て居り、更に重要部分に対しての報道規制が現場とのギャップを大きくしている。

結果として日々被害が拡大し、死傷者を増やし続けているが、政権に対して業を煮やした地元住民・自治体・消防・警察など残った人々が独自のルールを作り、復興作業を始め、便乗した中央の一部行政や、有志のボランティアが事実上の災害対策本部となっている事は否めない。

この問題について諸外国では「通常このような事態に於いては暴動や略奪が頻繁にあるが、日本にはそれらが無く、実によい品格」と絶賛されている反面政権への批判が強いが、あまり報道はされていない。

又、諸外国と自衛隊による規則の枠を超えた活動に大きな成果が有る事も事実である。

つまり国土と国民を守るはずの法律やシステムが事実上ブレーキになってしまい、臨機応変に枠を超えた者が成果を出しているという事実を現地で垣間見たことになる。

しかし、これらに就いては、常に後手を取り、場当たりに成ってしまう現政権にたいして全ての責任を求める事は少し酷な話である。

事実これらの災害に対して専門家もなく、ルートも無く、更にしがらみが有り、その為、付け焼刃に成ってしまっていると現場も冷静に見ている。

むしろそれ以前の政権の体質や、更には戦後危機管理を忘れた我々にも放置してきた反省点は多々あると考えられる。

環境系の科学を実践する筆者らにも当然今迄にやらなくてはいけない事は沢山あったはずであり、今後もやるべき事が多くあると考えている。

調査を進めて行く中で、かなり大きな被害を受けながら死者0という数値を出した町が有った。

 日々、危機管理や避難手法、そして手順など意識を高めていたそうだ。

 彼らが言うには「防波堤などハードの部分は大事な物で必要です、でもそれは完全なものではないと思う様にして、ソフト部分としての対応を重視しなくてはいけないと思っています」

 勿論被害が有った市町村に危機感が無かったわけではない、しかし人間日々緊張感を持続する事はとても難しい事であり、日々忙しく暮らす中でも、如何に地域全体が緊急時の避難手法や手順などの危機感を持ち続けられるかが、地震と津波の国である事実ら逃げられない以上は、国家単位で直視する事から始め、避難通路、手順、情報網、災害規模等の認識等、ソフトの構築に就いて改めて重要性を感じた。

 早朝、被災地の中心部にようやく食料も届き、配られていた。

 おにぎり一つと何か飲みものだった。

 皆行儀良く並び、順番を待っている中、某国の人々が集団で駆け寄ってきて割り込み、多くの食料を自分のものにしようとしてトラブルに成っている。

 当然日本人がそれを注意し、我々も加勢したが、彼らの我の強さは異常なほどだった。

 見かねた白人(おそらく米軍の人)の男が、かなり乱暴な口調で彼らに詰め寄り食料を奪い返すと、規定量を与え、彼らをさっさと解散させた。

 彼らが立ち去った後、元の場所に食料を戻し、子供たちを優先に並ばせて立ち去っていった。

 又、夜に成ると町は静まり返り無防備に成る、当然店のレジも品物も放置される形に成る。

 被災発生以来も或る地域の自警団が検挙した盗難事件18件中、17件が某国の外国人だった。

 しかしこれらに就いて一概に某国の国民を責める事は出来ない。

 日本人の感覚では、泥棒ですら被災者から物は取らないと言った礼儀が有る様だか、某国の人たちは楽な仕事で稼げる賢いやり方と思っている様で、これは国民性や文化の違いであり、日本の物差しを押し付ける事は出来ない。

 もちろん外国人が日本に来る場合は、この国の価値観や文化を事前に学び、従うのは当然の礼儀だが、だいぶ前から経済重視で生産力を上げる為、彼らを呼びいれたのは日本人である。

 そして、この国の礼節を教える事を怠った結果起こった被災時のトラブルであり、これ自体、人災のソフト部分であると暗い気持ちに成った。

 

 5・まとめ

先にも述べた様に今回の調査は性質上、緊急を伴っている。

同時に被災地という条件下に行った行為であり、完成度に就いては今後、各方面からの意見も参考に精度を高めて行く方向性で、お許し頂きたい。

しかしながら被災直後の生々しい現状と、生きた意見も多い事を特筆し、まとめとして以下に記したい。

 ・「先地形にしたがひて」は造園学の言葉であるが「来海沢」「クジラ沢」「塩沢」等、海に因んだ地名に就いて被害が多い事が解った。

そこに何かの事情で住む場合には、近代化する前の地形図、昔から付いている地名の由来を参考に、ハード・ソフト共に十分な対策が必要と感じた。

・当然の事ながら、災害とは緊急に起こる物で、自警団などを作り活躍する東北人の迅速さには驚く反面政権の対応の遅さが露出している。

 神戸から自主ボランティアとして勝手に入って来た医師に声をかけられたが正直な処、災害者だと思うほど、ボロボロの服装に無精ヒゲの男だった、気がつくと自衛官、消防隊、警察など、本気でやっている人間こそヨレヨレな格好で、報道で送られてくる被災地とは違っていた。

・バーチャルとマニュアルの世界での常識人と実践と現実の中での常識人の二種が有るようだが、ここで大切な事は決して対立する事では無く、双方の意見交換による協力と発展性に有る。

・激しい天災ではあったが、死傷者0に等しい地域と数多くの被害を出してしまった地域が実際に会った。

この事から考えて、災害に対してハードを整える事は当然必要なことであるが、その上でこれが完ぺきという事では無く、避難手順や危機管理などソフト面の重要性を複合する事を強く感じた。

・法や規制のブレーキに対して、ある陸将が「任務と個人目標を持って活動を行っている」として、個人目標に於いて生命に対する多大な成果を上げている事が理解できた。

・現地に於いてはマスメディアの報道を超えた現実の世界があったが、風評被害とは規制や飾られた言葉にもあると強く感じた。

・一部に於いて、組織等の上層部が逃げてしまい、下層部のものが自主的に活躍し、多大なる成果を出している事は事実であり、これこそが本来国家の国力そのものと強く感じている。

・原発に対して専門知識はないが、ある地域に於いては災害発生直後に被曝の危険性を感知した東電職員が下請けの人に防護服をつけないまま緊急電工事をやらせた為、被曝させたという情報が他方面から同時期に入ってきた。

・合わせて、フランス、ドイツ、アメリカ等は世界的にかなり高度な技術を持っており、提供すると申し出でいるが、現政権が付き合いやすい国を重視している為、この事を知っている救済者と被災者の両方に憤りがうかがえる。

人の命にかかわる事では、国境は越えるべきである、すでに諸外国に於いては国境を超えた支援体制が整っているので、各大使館では、あきれているといった情報が入ってきた。

・災害に関する対策費(緊急時の予算)は先の仕訳で底をついた状態に成っている様子で、今後の活動に不安が多い。

非常食や医療品の備蓄も倉庫経費の無駄と仕分けされた矢先である為に放射能汚染が広がった場合も今後食利用供給に不安を感じる。

全てが裏目に出た形だが、しかしこれらは地震国日本の歴史的変遷を見る事で100年に一度の災害に対するスーパー堤防の廃止案等を含み、反対意見を述べなかった我ら日本人と研究者側に問題が有り、現に筆者らも、ある程度納得してしまい問題定義をしていない事に深い反省点が有る。

・政治主導型という考えはきれいな言葉の様に解釈されがちであるが、主導型の人間には当然の事ながら有事に於いて知識と行動力が必要であるが、事実手も足も出ない状態で、逆に暴力装置と呼ばれた者たちと末端にいる人間が、泥まみれになり黙々と人の命を救う姿に世論の矛盾を感じた。

・直感として感じた事は我国の地形・地理、・地質に於いては地震より津波が怖いと感じ、更に津波の破壊力の凄まじさには驚いた。

・危険地帯に於いて、余震は常にあるが、津波の再来はない事が常に水鳥等の状況から判断でき、結果100%正解だった、生物センサーを教えてくれたポーランドの魔女達に感謝する。

上記は現地に於ける見聞を主体としているが、合わせて諸外国に於ける報道なども参考にした上で専門家の意見を取り入れた形で記している。

 

6・結論

今回の被災に就いて言えば、人災8、天災2という概念で我々は捉えている。

中には9対1、7対3という意見もあったが、平均的に8対2とした結論でまとめられた。

つまり、地震と津波による天災部分は20%と考えられ、その前後に有る人災に於けるハード部分とソフト部分に80%の比率が有ると考えている。

我々の立場からは環境学、造園学、建築学、都市工学、砂防学、地域コミュニティー等の視点から、現時点で現場に於ける現状を把握した結果として述べている。

この数値に関しては業種、生活環境、個人により様々な比率が有る事が自然で、我々の数値が絶対ではない事を理解して頂きたい。

しかしこの数値に就いて逆に極端な話、災害の前後に人的ソフトとハードを極度に充実させる事で20%の被害で済むことに成る。

これらは理論上の計算であり、現実にうまく行くか分からないが、大災害の中でも死者0という町も有る事から、実現するか、し無いかは別にして、諦めず努力をする必要は十分にある。

先ず、災害前のハード設備に就いて記す。

実際にマグニチュード9.2を記録している為、マグニチュード15程度を想定した対策が、ハードには必要だと考える。

勿論経済面での負担が大きくなるが、わが日本国は地震と津波による自然の脅威に対して、生活する以上受け入れなくてはいけない現実が有る。

又、自然地形や昔から付いている沢の名前の由来等、決して侮らない姿勢で都市開発は行う必要がある。

日本全体として、エネルギー、経済、生産、消費に就いても世界基準から今の速度が本当に文化的なのか、もう一度文化と自然を伴う緩やかだが確実な発展を考える時期が来ていると思われる。

次に災害後のハードに就いて記す。

ロナルドレーガンという空母が有るが、海に浮かぶ大病院として使える、フランスの被曝用防護服最も安全であり、即座に専門家を配備して貸し出す姿勢が出来ている、ドイツの科学的放射能沈静システムなど日本には無い物を外国が持っている。

又、災害初期に於いては陸路、滑走路、港の全てが破壊されている以上、ヘリコプターの数が多ければ、人、食料、医療をそれだけ自由に何処へでも運べる。

これらに就いて緊急時には数時間以内で自由に出し入れできる備蓄庫と緊急時に各ハードが配備できる場所の確保を予め準備しておく事も大切である。

今回の問題は災害後ほとんどの流通・救済・情報経路が立たれ、孤立状態に成った事に有り、早期の対応がこれらを左右する事が解った。

続いて災害前のソフトに就いて記す。

先ず住民の意識として、日本国は常に地震活動にさらされている事実と、地震と津波がセットになっている事から、自力で如何に非難できるかを常に想定して行う事が大切だと理解している。

実際災害の初期に於いては地震と津波が順に訪れる為、安全な場所に速やかに非難するまでの工程が完全に出来る事に重点が置かれる。

実際災害時に一度避難したが、再び様子を見にゆき、家に戻り被害にあったという事例も聞いている。

又、地形上どの地域が安全で、どの地域が危険か、幅広く行う事よりも、災害発生時から最短の安全地帯へ向けた非難までのプロセスを深く行う事が大切だと感じている。

最後に災害後のソフトに就いて記す。

今回の経験から現場に残った者が、自衛隊や諸外国の特殊部隊と共に直接指揮をとり、中央は指示に従うシステムが成果を上げている。

この事から日本人の性質が緊急時に於いて暴動や略奪をおこなわないで、調和性を持った活動が出来る事からも、市町村に残る各組織の長が指揮をとり、次の長に伝達して行くシステムが有効である事に気付いた。

現に100年ほど前の日本では、災害時には連絡網の不備から緊急時には地域独自のルールと活動に中央政権が加勢する形で成果を上げている。

逆に現在は情報網が発達している事で、それに頼りがちに成り、更には組織を維持する為の組織となってしまったシステムがブレーキに成った。

自衛隊も同様であり、災害のプロである以上、全て現場に派遣した自衛隊の長に権限をゆだね、地域の要望を直接聞きながら諸外国の部隊と協力し適材適所に専門家を派遣出来る様にしてほしい。

今回の結論を簡潔にまとめると、次のプロセスとなる。

先ず、ハードは出来る限り、歴史的災害の変遷を参考にして、過去の全ての災害を吸収できるように整える。

次に、災害時に於いて即座に非難するまでの最短プロセス迄をしっかりと住民が身に付ける。

そして、地域に残った長が指揮をとり、自衛隊が独自の判断で現地に入り、地域長の意見を参考に独自判断で必要に応じ諸外国の特殊部隊を要請して、人・食糧・医療を運ぶ事と同時に救助活動及び通信網の整備を行う。

更に、翌日には病院や二次災害に対応すべく特殊部隊の動員を行った上で設備を起動させ、各都道府県にいる知事または準じる人材が市町村の実情を把握し、中央行政や他県に必要事項を求める事と、陸路の応急整備を開始する。

 同時にこれは災害時に諸外国による不当な占拠や侵略への防衛も兼ねている。

翌々日には、都道府県知事が各地域の把握状態から志願した各地の協力団体や協力者が指示に従い自己責任で活躍できるシステムにする事で、災害発生後約48時間でおおよその救援体制と復興体制が整う事に成る。

以上がプロセスの一例であるが、今後議論の必要性は十分にある。

 

7・おわりに

本書を読んだ方々は、自然災害に関して現実の恐ろしさを改めて知る事で、自然界の脅威として共通認識に成ると思われる。

通常人と自然のかかわりに関しては快適な部分がクローズアップされるが、その反面自然の猛威は手加減が無い事も理解して頂きたい。

又、今回の活動や人災等に対しては賛否両論あると思われるが、それは当然の事で、どちらの意見も今後大切な発展に成ることを期待している。

短い期間であったが、災害時に於ける実態と、その行為と結果に就いてケーススタディーとして述べて来た。

実際の災害地は街の中まで磯の腐った様な匂いがしており、瓦礫となった町には夜の月が異常に明るく、野外に亡くなった方が毛布にくるまれている状態であり、その中で活躍する人々は無精ヒゲにドロの付いた顔、ヨレヨレの服に成っている為、報道されたものとは、別の世界に来ているようだった。

今回は、何時もの造園学を題材とした楽しい話では決して無いが、大切な負の遺産として受け止めてほしい。

誰しもがこの様な惨劇を受ける可能性が有り、最小限に抑えたいという願いは、共通の題材である。

 

 

 

 

『東日本大震災発生時より半年後の実態調査と復興計画に就いての考査報告』

 

NPОジャパンフォレストフォーラム・任意団体東京大学庭師倶楽部

 

1・はじめに

先ず、本文を記す前に時間軸を災害当時の3月11日に戻し、これと比較した半年後の911日現在の調査から実態の把握を行い、合わせて各協力者と共に今後の計画案を述べる事とする。

平成23311日当時、著者は林野庁舎内にて東日本大震災を体験したが、その翌日、各方面からの情報でその凄まじさと悲惨さを知らされた。我国は無数の火山と国土全体が海に囲まれた国であり、地震も然る事ながらその影響による津波の脅威に驚かされた。その後、研究パートナーであるポーランド人から連絡が入り、しきりに天候と他国の侵略を懸念していた事を記憶している。他国の侵略に就いては空母ロナルドレーガンの出航により治まると言っていたが、天候に就いては最大の二次災害に成る可能性を指摘され、お年寄り、子供、女性の順で日本国民を失って行くと危惧していた。この時点で被災地は既に事実上の緊急事態であり、現地の知人からの連絡で、自警団、抗生物質、ガソリン、水、食料の順で応援の依頼が入っていた。三日目の朝、ついに天気が傾き、ポーランド人の言葉の意味を実感した。当時被災地では意味不明の規制が数多く乱立されていたが、法と規制のシステムがアダと成り、被害を拡大した事は否めない。人命を最も優先させ、被災地の最も救援を必要としつつ手の届いていない奥地に対して、我々は敢えて強硬突破を決断した。そこで初めて津波の脅威と、死体と、人のパーツを垣間見たが、現実は報道されているものとは多くの点で別の世界だった。極端な話、そこは法律も貨幣も全く通用しない世界であり、現場での体力と知力が生死をつかさどり、更に先人の残した知恵と日本人の道徳心が最後の砦となっていた。しかしこの非常事態に於いても救世主は存在する。それは、自衛官と米軍と、地元の自警団達で有り、中央政権は有事に於いては手も足も出ない存在でしかなかった。現に地元の子供達からお年寄りまで、名も無き自衛官達の事を今でも覚えているが、彼らを暴力装置と罵った有名な政治家のことなど、その存在すら人々から忘れられている。事実筆者らも自衛官の顔は思い出せても、その政治家の名前すら覚えていない。つまり有事に於いて、理想論を語る偽善者や傍観者より、最前線に立ち知力と体力を駆使する者にしか価値が無い事を知った。この時点で筆者らは、先地形や生態系と共存する先人の知恵に従うべきとして、天災2割・人災8割と結論付けたが、この判断は今も変わっていない。その後、東京に戻ると直ぐに造園学の見地から自然力が人に与える恐ろしさと、人が自然と共存共栄する事の大切さを伝えたが、この呼びかけに先ず日本環境財団が協力をしてくれ、続いて東京大学本体が名乗りを上げてくれた事に感謝する。(細部に就いては第1回報告資料参照)

その後、何度となく現地に赴き、試行錯誤を繰り返し、地元の人達と交流を行い、日本環境財団のお力添えでフォーラムを開催させて頂き、半年がたった。この度丁度半年目の区切りとして99日から913日に掛けて再び東北三県に対して、物理・心理・史実の側面から調査を行った結果、災害廃棄物が何ヶ所かに整理整頓されてはいるが、他は何も解決出来ていないという印象が正直な見解である。それは物理的に言えば各地の沿岸から4キロ内の被災地は草が生え草原の様に見えるが、その下には津波に攫われた家の基礎が隠れたままで有り、信号機の復旧率も全体の8割に留まり、陸地には未だ処理の出来ない船が4キロ四方に横たわっている。そして心理的な側面としては、地元の声が届かない、政権のパフォーマンスに振り回される、マスメディアにより負のブランドイメージを作られた辛さが強く感じられる。最後に史実的な検証からは、自然力との共存共栄先地形、生態系を味方につけて生活した先人の知恵を忘れてしまった事は否めない。都知事選の1週間前、ある候補者が「我欲の果ての天罰」と云った。その時筆者は、人が死んでいるのになんてひどい事を云うのかと悲観したが翌日、候補者の発言にも一理あると考える様に成り、結果的には投票日にその候補者を支持していた。現地に入って初めて知った事ではあるが、接してくれた人々の殆どが、何かしらの形で「我欲の果ての天罰」を認め、反省し、そしてこれを弾み車として前進しようとしている事が解った。彼らは東京の人間より、はるかに強く、逞しく、冷静に物事を見極め、客観性のある判断と行動が出来る事を知った。その結果、中央が足踏みとパフォーマンスを続ける事より被災地が頭脳となり、被災地の指示に従い中央が活動する方が遙かに効率は良いと考える。実際現地では長期戦を覚悟しており、試行錯誤でも積極的な活動を試み、その中から光を見出そうとしている。即ち基本的な概念として主人公は被災地で有り、地域主体で有り、その他はサポーターで有り、日本国民全体が何かしらの協力とリスクの分担する事は当然の話であり、無傷の偽善者や傍観者は被災地には必要ない。これらが半年後、あらためて被災地を見た結果であるが、その細部に就いては下記「2」~「5」に示す。

 

キーワード:東日本大震災先地形先人の知恵自然力との共存共栄地域主体国民全体

 

 

2・調査における物理解析

被災から半年後の状況に於いて、定量的な観点から調査を試みた。以下は3県別に災害時と比較して、特質すべき点を記している。

     福島地域

この地に就いては他の地域と違い、残念ながら「放射能」と云う負のイメージが付きまとう事は否めない。現地に於いては半径20/30キロの規定とガイガーカウンターの記す数値が実際一致せず疑問を持った。実数を出す為には当然地形や風などの影響も有り、それぞれのレベルが存在して当然であり、20/30キロ以内でも安全な場所も有り、20/30キロ以上でも危険な場所は有ると考えるべきだ。本来は米軍の指摘する150キロ半径を即座に避難の対象として、その後、直ぐに住民を主体として被害状況を等高線の様な形で明確に示し、それは日々変わるものと認識すべきものである。そして大切な事は安全な物は安全と明記し、危険な物は即座に対処し、その報告を住民らに公表すべきであり、地域の安全性を守る事と風評被害を避けるべきである。当然一企業や一政権の組織維持の為では無く、地域住民主体の復興計画である事は言うまでも無い。

     宮城地 

瓦礫の処理された跡地を改め調査する事で、災害のメカニズムを見る事が出来た。この結果、人工的な科学建造物は被害に対して、その領域を超えた時無力であり、自然地形は如何なる場合に於いても被害を減少させている事に気付いた。これらに就いて言えばコンクリート等の人工物が自然災害影響を受けた場合、一定の数値を超えると完全に防御機能を奪われる傾向が有る事に対して、逆に自然地形の場合、石、砂、土、草、木等の自然系マテリアルと地形の関係から、全ての場所で災害の猛威を減少している事が解った。

③ 岩手地域

②で述べた事は福島、岩手の両県にも言える事だが、今回記録された津波の最大時速は約130㎞、陸地での最大の高さは約19mに達したと地元で言われているが、被害は人工物による対策より、地形の理に左右されて居り、各地に有る古い石碑には津波の到達した高さ等が記録されている物も有り、鳥居の前等でピタリと津波が止まっている処も有る。沿岸沿いの起伏が激しい岩手県では特に、災害の形状が一キロ毎に先地形に左右されて違うと言っても過言では無い。そしてその警告と先人の言い伝えを実際の石碑や鳥居と云う形で確認する事が出来た。

④ 交通

3県に共通した特徴として幹線道路より、鉄道に打撃が有る事が解る。道路に関しては主に河口や河川が人工物により整備された所に被害のウエートが高いと言える。又、信号機の作動しない街で都市機能を果たしている風景を見ると、過剰文明とエネルギーに依存しただけの文化に非力さを感じる。

    インフラ

海側に行くほど普及が遅れているが、被災当初から通常通りに起動している地域と、半年後の今でも起動出来ていない地域比率が変わっていなかった為、未だ経営できない店も多く目立ち、ある地域では約70%が未だ起動していない。これらもやはり先地形に左右されている。

 

3・調査に於ける心理分析

今回の調査に於いても被災者のメンタル的な部分に配慮していたが、被災から半年後の東北地域では語りたがる人々が次々と現れた。遠慮がちに写真を撮っていると「私の家はあそこだ」「家に上がっていけ」「俺が案内してやる」と大変親切にしてくれた。よくよく話を聞いてみると、地元の声が全国に届いていない事実や、今後他の地域の人が被災しない為にも、是非伝えたい真実が有る様だ。こうした理由から多くの人が協力してくれた今回の調査では有るが、全て紹介できない為、代表的な物を下記に記す。

   廃炉

実際に原発で働いている人が声を掛けてきた。これから原発に連れて行ってやると言われ、社員書と許可書を提示されたので、お願いした。すると君達が本気かどうか試したと言われ、顔と名前を出さない約束で、色々と語ってくれた。原発一号機はもともと老朽化していたので、東電は止めていたが、無理やり稼働を命じられた矢先に津波が有った事や、環境も大切だが経済を失う事の実情も話してくれた。また悲惨な話であるが福島出身の若い人達から、他県の人と結婚できないのではという相談を多く受けて来たそうだ。(注・決して誤解をしないで頂きたい事だが、相談者の若者はレントゲンを1回とった程度以下の被曝でり、日常の他県の人と全く変わらない数値であった事を強く強調する)そして彼はこれから27人目の葬式に行くという。

   コミュニティー

 撮影をしていると地域づくり協議会会長の木村氏を街の人が紹介してくれた。氏は出掛ける処だったが家の中まで上げて貰い、お茶を御馳走に成った。会長の話では現在地域は市と合同で復興計画を行っているが、主体は森づくりと自然素材による築山づくりに有り、地域と市の意見も合致しているが、その後、全国に散った全員が戻ってきてくれるかとても心配しているといっていた。

    私の家

佐藤さんと名乗る女性が「私の家はここだった」と元気に笑って教えてくれた。私達がつらそうな顔をしたら「笑おう」と言われた。そして彼女は「私達が暗い顔をしたら日本中暗くなる、今頑張っている事を伝えてほしい、そして津波の恐ろしさを知ってもらい、今後起こりうる被害を回避してほしい」と説明された。本当は悲しくて、助けて貰いたいと願っていると思うが、彼女は終始笑顔で最後まで一言も泣き言を言わなかった。東北人は悲しい事や辛い事を全て笑顔の中に隠してしまう。故に筆者らが声を大にして伝えなくてはいけない事も有る。実際東北地域では、人力、経済、心、等、全て必要としている。もし大丈夫だと言われても、相手を気遣っている東北人の心で有り、日本人の美徳で有る。本当はとても困っているので率先して是非応援してほしい。

     福島の青年団

久しぶりに会った木幡氏は疲れている様であり、元気が無かった様に感じたが、積極的に復興に向けた話をしてくれた。氏の話では、負の数値が多い福島に対して、逆転の発想からバイオマスエネルギーからの新たな発電等行う研究計画都市として、再興のキーワードがあると力説してくれた。リアルな具体策であり、正論だと感じた。

    宮城の青年団

南北に長い今回の災害地域に於いて、中心地となる宮城地域では東北最大の都市が有る事から、人の出入りも多く、対応を求められる機会も多い。震災直後からご一緒していた古積氏も本業、救援、各方面への対応と、苦労が絶えない様だ。その様な状況下で氏が災害より半年間の経過から、人々の暮らしや今後の展望などに就いて、客観的な観点から適切なコメントをしてくれた。要点をまとめると、時系列で必要な物事が変わって行く事。先ず地元の声に耳を傾けてほしいという事。東京では誰がいけない、対応が悪いという話しより、具体的な対応策を積極的に提案して来てほしいとの事で有る。筆者らが思うには地域の意見により東京方面から具体策を講じ、地域主体で必要な物が選択され、東京方面は従う形で発展する事が、現実的であり、具体的であり、そして大切だと考えている。

 

    岩手の青年団

「私達生き残った者は元気に頑張っている、とにかく仕事が欲しい」これが久しぶりに会った佐々木氏の第一声だった。海側の直接的被災地に対して間接的被災地である事からボランティア活動に力を入れているが、近隣の街が壊滅した影響は目視上で被害が少なくても周辺地域全体の被災が一体となり、問題となっている。

    コンビニエンスストア

 コンビニに立ち寄った時、オーナーの新妻氏の話では、被災バブルに成ったケースも有り、逆に全てを失った人もいると言っていた。人が戻ってくるか、元の生活に戻れるかが大変心配だと言っている。つまり復旧後の復興にはそれぞれの生活が有り、不幸な出来事には十人十色の事情が付きまとうという事だ。

    東京に対する見解

東日本大震災の影響は半年間で様々な状況を作って来た。数々の支援や応援は本当に助かったと地元の人たちは感謝している。しかし同時に風評被害や被災ビジネス、そしてパフォーマンスを行う人々に対して戸惑い、対応出来ない住民もおり、大変困っている事も確かである。場所、時間、立場等により被災地が何を必要とし、何を不要としているか、現地に於いて肌でスケールを感じないと理解できない部分も多い。一例を挙げれば、当初我々の行為は人命と道徳を重視し、法と規制を無視した行為であり、当然一部の者から批判を受けたが、その事に関して率直な意見を現地に求めた結果。回答はいたって簡単だった。「活動行為に対して批判する一部の者はどうせ此処には来てくれないのだから無用であり、無視すれば良い」である。つまり中央でパフォーマンスをする政治家より、現地に立つ自衛官を英雄視する論理である。これはまさに地元の正論であり、実際現地で活躍してくれるNPОの方と話が出来たが「今日はフランス料理のサポートですが、昨日は瓦礫の処理でした」と話してくれた。つまり偽善や傍観では無く、小さな事でも出来る事からサポートを行い、地域の判断にゆだね、必要とされたならば継続する、不要で有れば次の試みを発案して、行動して、再び地域の評価を確認して、継続して行く事が東京方面にとって今出来る事と考えられる。

 

4・調査に於ける史実検証

今回の災害に於いて学んだ事は、先地形が有り、生態系が生れ、文化が育まれるものとして、先人の知恵に学ぶ事が大切であり、同時に現存資源である農林水産物の可能性を基に自然力との共栄や、遺伝子の多様化による人と自然の関わりが、見直されている。今回、被災地では幾つかの史実検証を行って来たが、その事例を下記に記す。

① 松島の事例

驚く事に取り立てて人工的な堤防やテトラポットが無く、自然形のままを維持した街で、風光明美な観光地としているが、最も被害が少なく、復興の兆しも早かった。その理由としては先に述べた様に自然の岩礁や地形による災害の吸収力に有り、先人たちの言い伝えに従った街づくりと資源活用が幸いしている。

② 住田町の事例

越前高田の北に位置する街で、林業日本一を目指している。林業を中心に先地形に暮らし、先人の知恵を守っている為に直接的な被害が少なかった。現在近隣の被災地へ救援活動を行っているが、間接的打撃として近隣に努める人が職を失ったケースも多くある。此処では平地以外でも住宅をつくれるし、良質な材料も有り、活用してほしいと力説している。2011910日の岩手日報によれば高台の移転を53%の人が希望していると掲示されていた。又プレハブの仮設住宅に於けるストレスの問題も多様化している、この様な実情の中だからこそ、あえて木の家作りから人々に安らぎを与え、建築や林業などの地域雇用を構築できると考えられる。コスト的にも永い目で見て損失は無い為、先人の知恵を活用する事も一つの方法論として考えられる。

    女川の事例

街の主要部分は大打撃を受けているが、海岸沿いに幾つかの集落が有り、鳥居や石碑の位置で全て津波が止まっている事に驚かされた。地元の人の話では「海神と山神の結界」「または山の神と海の神が出会う場所」と説明を受けた。我々はこれらをただの迷信とは考えていない。むしろ立派な測定記録の史実として認識している。

 

5・具体的な復興計画の考査

今回、被災から半年後の東北地を訪れ、物理・心理・史実から各地域や夫々の人々と意見を交え、調査結果を述べて来たが、地域の人達とも話した結果、①客観面で最も大切な事をいくつか挙げ、②具体論で、その具体的計画案を述べて行く。

   客観論

・先地形や先人の知恵にしたがった都市計画を行う。

・地元主体として復興計画は行う。

・東京方面は机上の論に留まらず、他への批判に留まらず、先ず具体案を提示し、その中で地元が受け入れ推進するものだけを育む。

・観光や産業なとの資源が流された今、復興までは農林水産や未利用資源に発展経路を求める。

・現在が負の数値だからこそ、その負の数値の中から正の数値を見出して構築する。

上記記述は、地域の人々への聞き取り調査やディスカッションにより、その意見や計画案等を最大限活用する形で今後の復興を試みる為に記している。

   具体論

・先人の知恵を生かす項目として、被災地に於いて森林資源に対するダメージが少ない事から、他県との協働事業として地域単位で日本型フォレスターの活用を行い、プロトモデルを構築する計画。

・新たな試みとして、現状の災害木質廃棄物の整理を行い、バイオマスエネルギーのモデル都市としての構築から、その後の未利用間伐材の利用を含めて、持続可能な環境計画となる復興を行う計画。

・被災地の中には、今回の災害後の経過全てを言い当てたポーランドの先住民文化を導入し、観光から地域資源開発による産業構築までを熱望する地域が有り、このプロトモデルの構築から各地域に対して提供、供給する計画。

上記記述は、①を基に、②の具体案を選択肢の一部として試み、東京方面での展開や協力フィールドとの協働計画により被災地に寄与貢献できる計画の構築を願っている。

 

6・おわりに

被災直後、身動きが出来ないほどの瓦礫の中、災害廃棄物に就いて秋田、山形、新潟が直ぐに受け入れの名乗りを上げてくれた。

その中の一つに姫川港が有り、当地は東京大学庭師倶楽部が以前からジオパーク活性の活動を行っていた糸魚川市である。この糸魚川地域全体に就いて今回、災害を想定しての史実検証とシュミュレーションを行ってみた。結果は、先ず先人の知恵にしたがい集落が点在して居り、地震に於ける地滑りを避ける位置傾向にある。次に海の中は宮城県松島地区の様な起伏が水面下の中に複雑に入り組んでおり、津波の猛威を減少出来る地形で有り、それに従った漁村の位置関係が点在する。更に砂利と石の海岸は昔から、人の住まない浜辺として確り残って居り、河川は複雑かつ全て原始のままである為、津波や逆流も阻止出来る。この地は日本有数の複雑地形から成り立って居るが、生活の中で自然力との共存共栄を果たして居り、土木や建築の高度な技術が独自の発展を遂げて、当たり前に活用されている。

今回の旅の終わりに、この地域まで足を伸ばし、今迄のジオポークに於ける正の数値に対して、新たなポテンシャルとして、負の数値が起こった場合の対応手法と復興技法のポテンシャルを持っている街として協力を願い出た処、快くフィールド提供してくれるという事に成った。これに基づき東北地域を主体に、関東都心部をセンターとして三極構造による復興の計画が構築できる事を願っている。

 

 

 

 

 

 

Q&A・過去に皆様質問と、当倶楽部員の回答です。

 

Q・「東京大学庭師倶楽部」ってなんですか?

 A・東京大学林学科卒業生・在学生が学んできた造園学の実践を行い、社会に寄与貢献する、個人的有志による集まりです。

 

・どうして株式会社とか、法人にしないのですか?

 A・私たちの目的は学問の実践と社会貢献です。先ず環境ビジネスによる営利目的では無い事をご理解下さい。次に研究者としてのスタンスを持って、「良い物は良い」「悪い物は悪い」とハッキリと言える、常に拘束されないニュートラルな立場でいたいと考えています。最後に研究者は、物量(お金、時間、人、等)に支配されることを嫌い、質量(道徳、情、哲学、等)を重視した、自由なスタンスを取りたいと願っているからです。

 

Q・「林学科」とはどんな所ですか?

 A・聞きなれない言葉かも知れませんが、英語で言えばForest-Scienceに成ります。動物・植物・風致・経済・技術等、つまり森林のあらゆる事を物理・心理・歴史等から科学する東京大学農学部の中に位置する、学問の科です。現在この課は「農学生命科学・・・・・・・・科」と大変長い名前に代わり、私達は長年親しんだ「林学科」と今でも呼んで済ましているが、正式には「旧林学科」又は「元林学科」と表現する事が正しいでしよう。一般的には造園学を含んだ森林科学と考えて良いでしよう。

 

Q・「造園学」ってどんな学問ですか?

 A・「美しい森は人を育む」というドイツの「森林美学」から発生した学問で130年の歴史(日本の造園思想を入れれば1300)が有ります。面積範囲で言えば、坪庭から国立公園まで。哲学理念で言えば、保護と利用、持続可能な環境計画、森林教育等。科学的手法で言えば、物理解析、心理分析、造園史実検証、等、人と環境の関係を科学する幅広い学問分野です。

 

Q・一般の人の入会はできますか?

 A・基本的には出来ません。

条件としては東京大学に入学して林学を学ぶ事と、実践的な造園作業に参加して一定の成果を上げた上での入部になります。

 

 Q・はっきり言って「右翼」ですか?

 A・「右翼」では有りません。又、同時に「左翼」でも有りません。「右翼、左翼」の語源はフランス、ルイ王朝に於ける議会の席が体制側は右、反体制側は左、に陣取った事が語源です。又、現在の一般論から考えても私たちは常にニュートラルな立場でいるつもりです。従ってどちらにも属さない自由思想という答えが適切です。私達は古き良き時代に科学が哲学や道徳と友達だった頃の学者として、自然や立場の弱いものに対して清く、正しく、優しく有りたいと願っています。この辺に就いては新渡戸稲造先生の「武士道」、藤原正彦先生の「国家の品格」等参考にして下さい。

 

Q・国家貢献とはどう言った事ですか?

 A・国家とは、地域であり、団体であり、個人であると考えています。歴史と季節の国で培った文化はとても深い世界的財産だと考えています。これを広義の意味で現代社会や地球規模の道徳的共存繁栄に役立つ願いで言っています。もちろん他国の留学生達も当倶楽部に、国々の国家貢献を担って歴史や文化を生かした自国のオリジナリティー有る造園学として参加してくれています。

 

Q・一般企業とは取引(ビジネス)しないのですか?

 A・基本的には行いません。悲しい話ですが我が国には、私利私欲の為に私たちを悪用しようとする人が絶えません(勿論例外は有ります)。こんな人には絶対協力しません(極少数ですが、私たちの理念やスタイルを理解してくれる企業も最近増えています)。私たちの理念は、決して営利を目的とした環境マネージメントでは無く、運営は研究理念と活用を目的とした継続的社会貢献の維持に対するマネージメントのみです。

 

Q・NPOJapan forest forumとの関係は?

A・当倶楽部か愈一提携する内閣府認定のNPOです。医学・造園学・建築学・メディアプレス・ナチュラリスト・等の集まりによる、森林や広義で言う景観を題材に幅広い活動を行うNPOです。ここで私たちはシンクタンクとしての役目を果たしています。NPOは私たちに対して、実践活動の場を与えてくれます。私たちはNPOにたいして、造園学を提供します。結果的にgive-and-takeの形で幅広い社会活動をさせて貰っています。

 

Q・メンバーの目的は?

 A・狭義で言えば、学問を究める、机上の論理を実戦で試したい、何時までも緑と親しみたい、論文をライフワークにしたい、等、倶楽部員ごとの熱い思いが様々有ります。しかし広義で言えば、実践を含めて生涯現役でありたいという事でしょう。

 

Q・国際社会についての貢献はどのように考えますか?

 A・国際人である一番大切な事は、自国の文化や歴史を把握し、個人の意見をしっかりと持っている事です。そのうえ初めて他国の文化を尊重する事が出来ます。最近欧米諸国では「今の日本人は亮兆な英語を話すが内容は無い」「昔の日本人は下手な英語だけれどスピリットが有った」と昔の日本人の道徳と文化を懐かしんでいます。欧米人と親しくなった時、必ず越えなくてはいけないものです。まず自国を愛し、他国を尊重する。ここから国際貢献は始まります。又、私たちの議論は論破する事が目的ではなく、互いに繁栄する事を前提としています。すなわち自国の文化を確り身につけ、相手に思いやりを持てる事が国際社会貢献の基本だと考えています。自らを含め最近の日本人の抒情の薄さ、学問の浅さ、国語力の低下には嘆いている次第です。

 

 Q・企業や政治家がお金で非道徳的な事を望んだら?

 A・「断る」ただこの一言に尽きます。昔「untouchable」という番組がありました。直訳すれば「触るな、もう少しで手が届く」等になります。しかし最近、友人のアメリカ人から聞いた話ですが、番組の中で主人公エリオット・ネスの言ったuntouchableの本当の意味は「俺に賄賂は通用しない」です。私達も常に日本のエリオット・ネスでありたいと願っています。

 

 Q・お金の無い個人や企業が社会性のあるお願いをしたら?

 A・NPOを通して頂き、ぜひ応援できる方向性で検討して行きたいと考えています。社会貢献は一人では大変なことです、小さな歯車は、中間の歯車を経て、やがて大きな歯車を回せると信じています。今すぐに実現しなくても是非あきらめずに少しずつでも前に進んで頂きたいと思っています。皆さんも私達も同じ方向性にいると信じています。

 

 Q・「帝大イズム」について教えてください?

 A・かつて、東京大学を東京帝国大学と呼んでいた遠い昔、帝大生、帝大出身者はその心得として、世の為、人の為、その身を国家に捧げることを誓います。それは、不合理に立ち向かい、弱きものを助け、己は常に文に親しみ、知力を蓄え、人格の形成をなし、質素・倹約・質実・剛堅に生きる、この理念はJapanese-dandyismの一角として長老たちより今日に受け継がれて来た物です。不器用な生き方ですが、不誠実な時代だからこそ、今私達が次世代に繋げて行く必要があると考えています。

 

 Q・少し時代遅れではないですか?

 A・はい、正直そう思います。決して否定しません。物量主義の世知辛い世の中です。時代遅れも良い物です。清く正しく、清廉潔白に、貧乏学者である事に胸を張って生きています。おそらく私達は手の付け様の無いほどのロマンチスト達で、不器用な自分たちの生き方を知っていて満足している様な気がします。

 

 Q・皆さんのやっている事は完全正義ですか?

 A・決して完全とは思っていません、しかしそうでありたいと日々心がけております。まだまだ未熟な所が有り、常に接して頂く人々に学ばせて頂く事が沢山有ります。生涯学習だと考え、一つのプロジェクトの度に反省も多々有ります。常に科学の裏には哲学が必要と思い謙虚な姿勢で臨む様心がけております。どうぞ皆様の温かいご指導ご鞭撻を、今後ともお願い申し上げます。

 

 Q・本多静六ってだれ?東京大学庭師倶楽部との関係は?

 A・今から130年前ドイツの森林美学を日本に持ち帰り、現在の森林環境学の礎を築いた人です。代表作には日比谷公園などが有り、その弟子たちは国立公園などの構築や、造園学としての科学的アプローチの確立を築いてきました。私たちはその直系の弟子に当たるのですが、先学者の様に偉人ではないので日々努力して、少しでも先学者に近づけるよう頑張っている毎日です。

 

 Q・森林美学とは何?

A・もともとはドイツ人V・ザーリッシュ博士による人と森の関わりに関する共存共栄の経済学です。しかしその哲学は優れている物であり日本においては、明治以降造園学として構築され、現在も環境科学として進化し続けている森林思想の様なものです。

 

 Q・魔女と森林環境はどうして関わりが有るのですか?

 A・答えは簡単です、魔女(Witch)は紀元前の昔からセラピストであり、薬草医であり森林レンジャーの様なヨーロッパの森のナチュラリストだったのです。彼女たちの実践的な自然との共存共栄生活の知恵を実践しながら、日本の造園学によりエコツーリズムを通じレクレーション活動の中から森林の保全活動や、森のファクトリーによる地域活性や、環境教育に発展させる計画を研究しています。

 

 Q・なぜ造園学なのに庭師倶楽部というのですか?

A・簡単にいえば環境学者がダイバーやアルピニストであるように、最先端(最前線での実践学)で活躍したいという意味です。元々学術的な研究は理論上成立する形や実際の社会貢献に繋がるまでに長い年月をかける傾向は否めません。そこで現場の最前線にいると言う意味と、メイドインジャパンのスピリットから常に学術的実践の現場主義として庭師でありたいと言う姿勢から庭師倶楽部を名乗っています。


左・代表最高顧問・磯崎 邦夫(1942~2011)

右・代表研究員・宮 江介(1960~)

以下倶楽部員・役職・氏名・非公開